
「結果、得たことは何?」
「この太平洋半分横断の航海を経て得たことは?」と聞かれて、私の答えは「Lots of water!(想像を絶する巨大な海)」と「Be patient(忍耐)」です。太平洋の真ん中では「風を待つ」、「風をつかまえる」、これしか陸(おか)に到着するための方法はありません。人間がコン トロールできることは、本当にたかがしれています。しょっちゅう日米間を飛行機で往復し、長距離通勤などとうそぶいていた私は、その自然のスケールと凄さ を完全に忘れていたようです。太平洋の海が教えてくれたことは、月並みな言い方ですが、「自然への畏怖と感謝」を実感できたこと。さらに以下のような素晴 らしい「自然の美しさ」を眺め、感じて、一体化できたことにつきます。
「シャンデリアのように輝く、満月の凄まじいほどの明るさ」
「打ち上げ花火のように、私の目の前を走っていった緑色の流星」
「数えきれない満天の星々」
「オレンジ色に輝き、目玉焼きのようにおいしそうな夕陽」
「月も星もない、夜の底知れぬ暗さ」
夜中に舵を取っている時は、「夜の底知れぬ暗さ」に身を置いて、羅針盤が指し示す方向だけを見ながら、過去の出来事が走馬燈のように浮かんできました。米 国移住以来10年、いつも走り続けていた私は、この太平洋の真ん中で、初めて立ち止まり、自分の過去を振り返り、その不思議な感覚に身を任せることができ ました。
13日にSFに戻って以来、またひたすら走り始めた私は、あの太平洋の真ん中の「夜の底知れぬ暗さ」の中で、立ち止まった奇妙な浮遊感と、「ボート自体がサーフボードと化して、波に乗り続けた感覚」が、得た結果として、とても大事だったような気がします。
航海の位置情報を以下のURLで見られます。
http://www.pangolin.co.nz/yotreps/tracker.php?ident=WDC5112
最初の3日間は、SSB(Single Side Band)のRadio(無線)によるEmail
(www.sailmail.com/)にアクセスすることができず、位置情報も、サンフランシスコから西海岸を南下している、最初の部分がトラックダウンされていません。