昨年の10月、ダウ工業平均株価は、新記録をつくりましたが、その後の米国経済はサブプライムローン問題解決の糸口もないまま低迷を続け、オイル価格の上昇と反比例するように株価は落ち始めて、結果昨日の時点で1万1346.51ポイントと8ヶ月間で20%落ち込んでしまいました。頼みの「Blue chip(ブルーチップ」と呼ばれる米国を支えるエスタブリッシュメントの企業の株価も昨日は落ち込んでおり、ウォールストリートはアタマを抱えています。この8ヶ月間で最も深刻な影響を受けたのは、General Motors (GM)で、およそ70%も落ち込んだということで、これはしんどい数字です。またBlue chipの落ち込みは、米国のみならず、フランス、ドイツなどのヨーロッパも20%以上の落ち込み、新興勢力の中国とベトナムは、半分以下の株価となっており、世界中に影響が及んでいます。
そんな中で、今日目に留まったのは、「Oracle of Omaha( オマハのオラクル=預言者)」と呼ばれる世界第1位の金持ちの投資家Warren Buffet(ウォーレン・バフェット)とのチャリティランチの記事です。eBayのオークションで、中国人投資家が、これを211万ドルで競り落としたということです。これは、バフェットが、サンフランシスコのNPO、Glide Foundationのチャリティのために、すでに8年間実施しているオークションで、今年で9回目となります。ホームレスや貧困の人たちに、食料・シェルター・ヘルスケア・職業訓練などを提供するGlide Foundationのために、バフェットは、ボランティアとして、彼の話を聴きたい人たちとランチをしており、年間1400万ドルを必要とする財団のために、過去9年間で440万ドル近いお金を集めています。オークションのスタート金額は2万5000ドルですが、昨年の落札価格は65万ドル、今年が211万ドルと落札価格は、急上昇しています。
バフェットは、「投資のオラクル(預言者)」以上に、「投資の神様」といっても過言ではないくらい影響力のある存在です。彼が「米国は精神的にすでに景気後退に入った」と言えば、大統領やFRB議長のBernankeが認めなくても、その言葉に従って株価は動きます。前述のダウの落ち込みと反比例するように、バフェットの資産のネットは、昨年の100億ドルから620億ドルに跳ね上がっています(今年の3月のForbesの試算)。こうしたバフェットを仰ぎ見る投資家たちは、彼と直に3時間近くランチを共にしながら話せる機会は、お金では買えない価値のあるもので、それがさらにチャリティとして貧困救済に活かされるという、2重の価値をもたらしています。
バフェットは、彼の資産の85%を、Bill and Melinda Gates Foundationと、バフェットの家族のチャリティ財団に寄付すると約束しており、世界第1位の金持ちとしての彼の生き方は、確かに「Inspire」されるものがあります。彼は、多くの金持ちがおかしやすい間違いは、「いざチャリティ活動をしたいと思った時に年をとりすぎている」ことであると指摘しています。その点から考えても、昨日MSのフルタイムジョブを引退して、アフリカの貧困・エイズ・マラリアと戦う自身の財団活動にフォーカスするビル・ゲイツに大きな期待を寄せている、彼の気持ちは理解できます。彼は、「自分は得意なこと(=投資活動)に注力して、それで稼いだ資産を有効に使える人たちに渡す、これが自分のやり方」と言っています。この発言にはとてつもない重みがあります。世界には、こういう人がもっと必要です。