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サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



コロナ禍でのアメリカ生活㉒「ロックダウンはまた起こりえる。UBIのように社会の基盤を支えている人達をサポートする仕組みを考えるべきでは?」

5/26/2020

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米国では4月に2,250万人が職を失った

米国の4月の失業率は第2次世界大戦後では史上最悪の14.7%となり、2,250万人が職を失った。州ごとに格差があり、失業率トップ3は、ネヴァダ州の28.2%、ミシガン州の22.7%、ハワイ州の22.3%。最も失業率が低い州はコネチカット州の7.9%で、それに続くのがミネソタ州の8.1%とネブラスカ州の8.3%である。驚くべきことは、ネヴァダの3月の失業率は7.9%で当時最も高い失業率であったという点で、ロックダウンによって、それが一気に20.3ポイントも増加するという異常さである。 以下の表は、3月と4月の各州ごとの失業率の推移であるが、一目瞭然で一気に失業率が急増した。
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雇用を重視する日本と違って、米国では企業の四半期ごとの収益如何で、真っ先に行われる経費削減は「人員解雇」である。皮肉なコトに、こうした解雇の対象となるのは、莫大な金額のサラリーをもらっている役員クラスではなく、低賃金の最前線で勤務する社員の場合が多い。現場の社員を1,000人解雇するより、役員を1人解雇したほうがよほど効率よく経費削減が可能なのに、犠牲になるのは常に簡単に削られる一般社員達である。更に皮肉なコトは、例え経営に失敗したトップ(CEOや他のCクラス)でも退職時には高額な「Golden parachute(退職する際に払われる割増退職金、ストックオプションなどで払われる場合が多い)」が用意されているので、彼ら自身は逆に焼け太り(ビジネスは傾くが、退職者は大金を手にする)をする場合もある。

在宅勤務可能な職種はまだまだ少なく70%以上はロックダウンの度に同様の境遇に陥る

米国では、制限付きでも在宅勤務可能な職業は、まだまだ非常に少ない。2016年の調査では米国の職場の僅か3.6%が「半分あるいはそれ以上の在宅勤務」を実施している。机上の上では、56%はリモートワークが可能であると推定されているが、現実にはそう簡単に許されていない。但し、今回のパンデミックでロックダウンとなり、米国では2021年末までに25-30%は、「1週間のうちに何回かは在宅勤務が可能」となると予測されている。

仮にこの予測が実現したとしても、それでも70%以上は、在宅勤務可能なラグジュアリな仕事に就ける訳ではないので、次回またこうしたパンデミックが起きた場合は、今回同様に職を瞬時に失う。こういう状況を考えると、まず社会を下支えしている、この莫大な人達をサポートする仕組みが必要だと思う。

「UBI(Universal Basic Income)」を真剣に考える必要がある

私は、民主党大統領選挙候補だったAndrew Yangのキャンペーンの中心メッセージ「UBI(Universal Basic Income)」の考え方に関心がある。この考えは、、利益や収益性の追求一辺倒の20世紀型資本主義がもたらした富の格差の是正、貧困や差別の解消、さらに将来AIや自動化によって消失する人間の職などへの影響を和らげる効果がある。また今回のロックダウンのような経済停止の際に職を失う或いは倒産をする人達へのサポートともなる。

以下に記した内容は、UBIに関しては素人の私が、NRIの上級研究員の柏木 亮二氏のAnnie Lowreyの『みんなにお金を配ったら(GIVE PEOPLE MONEY)』の書評コラム、Brianna ProvenzanoによるViceの記事(日本語訳)、World Economic Forumの記事などを参考にして、まとめたものである。

UBIとは、生活保護や各種の助成金や補助金、年金や医療保険などの現在の社会福祉制度を大幅に簡素化し(もしくはすべて廃止し)、その代わりに住民全員(世帯ごとではなく家族全員)に無条件に毎月一定の現金を支給する制度である。この考えは16世紀に英国の思想家Thomas More(トマス・モア)が、社会政治を風刺した1516年の著作『Utopia(ユートピアはモアの造語で、どこでもない即ちどこにもない場所)』で最低生活保障について触れているように、決して新しい考え方ではなく、現在世界中で様々な実験が試みられている。

Andrewは、全ての国民に月間$1,000の“Freedom Dividend”を提供すべきだと主張した。これだけではとても生活は賄えないが、少なくとも低所得者層の生活を支える糧にはなる。パンデミックによって最も大きな被害を受けるのは、これらの人達である。貧困はメンタルを破壊し、ドラッグや銃撃事件やDVや様々な犯罪を創出する。

UBIは既に始まっている?

今回のパンデミックによる倒産や失業を最小限に留めるために、イギリスは3月から全休業者の給与の80%を国が支給する措置を(上限は月2,500ポンド)始めて最低3ヶ月は継続するとしている。シアトル市は市内の大企業の法人税を引き上げ、その財源を元に市内の10万世帯に毎月$500を無条件で支給する法案を審議している(当面は4ヶ月間の予定)。スペインでも4月5日「可能な限り迅速にUBI(最低所得保障制度)」制度を導入すると発表している。これら一連の動きは、UBIの発想に近く、UBIが必ずしも実現不可能な政策ではなくなってきたことの証明でもある。

​また以下の表が示すように欧州では2017年すでに68%の人達がUBIの導入を求めている。
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UBIの効用

1) 貧困の消滅:世界中の貧困層(1日あたり$2以下で暮らす人達)撲滅のために様々なプログラムが提供されているが、最も効果的な方法は、モノではなく、直接現金を支給することである。もし彼らに毎月$500の現金を支給できたら、世界の貧困問題は直ちに消滅するという。現金は食糧や日用品、更に学費や貯金にも変えられる。現金こそが貧困からの脱出のために最も効果的な支援となる。

2) 広がる富の格差における、社会を下支えする人達へのサステイナブルなサポート:これは言わずもがなで、米国の富の格差は史上例を見ないほど大きい。米国の現実は、もし緊急事態が起きて医療費$400がかかってしまった場合、支払えないと答えたアメリカ人が40%に及ぶという事実がそれを証明している。仮に1人当たり$1000の支給が実現すれば、例え緊急の医療費が必要、あるいは失業といった危機に直面しても、金銭的に多少の余裕が生まれる。UBIは人々の労働意欲を失わせるという議論はあるが、労働市場経済学の研究で、UBIは人間の働く意欲にほぼ、或いはまったく影響を及ぼさないと報告している。なぜならば、人間の社会的価値の多くが仕事に根ざしており、人間は労働をしたがるからである。

3) 女性の家事労働といった無償労働の可視化など、男女格差が緩まり、女性の経済的な自立への道ができる:「無償労働」の経済的価値は少なく見積もっても全世界で10兆ドルと言われており、UBIはそうした目に見えない労働を可視化させる。さらに女性が毎月定額の現金を入手することで、男尊女卑が強い社会における女性(配偶者、娘など)は、経済的・社会的な自由を持つことが可能となる。

4) 都市の人口集中緩和や地方都市の評価増などで家族が暮らしやすくなる(人口増加):現在は雇用創出が大都市中心で行われているが、在宅勤務の浸透及び人口が集中する都市への不安は、今回のパンデミックで、多くの人達が再認識した。UBIが導入されると、こうした傾向を促進するように、住宅価格や生活費が安い地方の評価が高まる。また1人当たりの支給となるので、家族が4人の場合は4倍の支給が得られることとなり、教育費の高騰なので子供を持つことへの不安があった家族もよりゆとりが生まれて、人口が増える可能性も出てくる。

5) AIや自動化による雇用喪失と低賃金労働の増加:かつでは、ロボットは人間のために単純で退屈な労働を代替えしてくれると思われていたが、現実は逆な方向性を示している。高度な技能を習得したAIや自動化によって、今後20年の間に多くの人達の職が奪われてしまうという予測は、リアリティを増している。UBIの導入は、そうした人達にある程度の金銭的な安心感を与えて、低賃金の単純な仕事のみを強いられずに、職業選択の自由がもてる。さらに、家族や愛する人達との時間を割いてやっていた副業、兼業をしなくて済むようになる。

財源はどうするのか?

現在の複雑な社会福祉政策を撤廃し、その予算をUBIに充当すれば十分に財源は確保できるという試算がある。さらにこれに付随して、現在の富裕層(世界の富裕層の10%が世界の富の85%を所有)により累進的な所得税を課す、キャピタルゲイン課税を強化するといった税制改正によって、必要な財源は確保できるという意見もある。

さらに世界を支配するような多国籍企業(FAAAM=Facebook、Apple、Amazon、Alphabet、Microsoftなど)も、莫大な利益を上げながらも、税制の抜け穴をうまく利用して納税額を抑えている。世界のトップ企業1,000社が公平に納税していれば、UBIの額としてはささやかでも、世界全体に分配することは可能ともいえる。

20世紀に確立された社会の仕組みの制度疲労は酷い

米国でもロックダウンは解除されて、ビジネス再開が徐々に始まっているが、過去2-3か月間の経済的打撃を回復させるような動きは、どんな業界にもない。米国では、5/26現在感染者数170万人以上、死者10万人以上と、とても収束には程遠い状況である。ましてブラジルの例を挙げるまでもなく、南米を中心して衛生状態の悪い南半球の国々では、今まさに感染者及び死者数が拡大している。北半球が夏場を何とか乗り切ったとしても、秋口の第2波が襲い掛かってくる可能性もある。その際に、またしても大きな影響を被るのは、ギリギリで生活している人達である。こういう状況を鑑みると、20世紀に出来上がった社会の仕組みを大幅に変革する必要があると思う。
​

私は経済に関しては素人だが、このUnfairな社会を少しでも、Betterにするために、もしかしたらUBIは有効ではないかと思い、自分の備忘録として、このブログでまとめてみた。
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    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

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