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ひさみをめぐる冒険
サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



「責任」について:日本語にはない"RESPONSIBILITY"と"ACCOUNTABILITY"の違いとは?

9/26/2020

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5年前に私が書いたブログを、加筆修正して再掲載する。いつもこの言葉が気になっており、多くの人達は、これが今一つクリアになっていないような気がするので。

日本語では「責任」という言葉で1つにまとめしまう

なぜか、英語の“Responsibility” と “Accountability”という言葉がアタマをぐるぐる回っている。辞書ではともに「責任」と訳されて、"Accountability"は「 説明責任」といった注釈がついているが、英語本来の意味からすると時制とその用法に違いがあり、時制に関してはAccoutabilityは過去に起きたコトに使われる。
  • •  "Responsibility":すでに起きた(過去)或いはこれから起こる(=未来)事柄や決定に対する責任の所在を示す。
  • •  "Accountability":すでに起きた(=過去)決定や行為の結果に対する責任、またそれを説明する責任を表す。
また、用法においては、以下のような違いも大きい。
  • • "Responsibility":「誰の責任であるのか?」。担当或いは責任を負うコト、タスクやイベントの所有者。
  • • "Accountability":「誰が責任を取るのか?」。倫理やガバナンスにおいて、起きたコトに対する説明や回答することができて、非難を受けて責務を取ることが可能。

以下の英語の説明は的を得ていて、"Responsibility"は他の人と共有することは可能だけど、"Accountability"は他の人と共有できないという点が大きな違いだという指摘は納得できる。
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The main difference between responsibility and accountability is that responsibility can be shared while accountability cannot. Being accountable not only means being responsible for something but also ultimately being answerable for your actions. Also, accountability is something you hold a person to only after a task is done or not done. Responsibility can be before and/or after a task.


「担当者」は「責任者」ではない


日米間のビジネスで、この「責任」という言葉に関して、かなり大きな温度差を感じる。米国ではまず真っ先に、「このプロジェクトあるいはタスクは誰々が責任者である(役職に関係なく)」ということを全員に明示して、彼あるいは彼女を中心にプロジェクトがスタートする。

日本ではそれとは異なり、「まず担当者(=責任者とは決して言わない)」を紹介されて、部署のチームメンバーの構成と紹介が始まる。もちろん、プロジェクトは「担当者」が「窓口」となり進行していくが、「責任を取る」という表現で"Accountability"を背負う人が不明のままに推移するパターンがかなり多い。

私が突っ込んで「責任者(=意思決定者)は誰ですか?」と質問すると、「あえて言うならば部長(=上司)になります」という答えが返ってくる。ただし、長い間プロジェクトを一緒にしてきても、「その部長」が意思決定をした様子はなく、また滅多に会うチャンスもなく、契約書の「部長のサインあるいは印鑑」のみしか、私たちは知らない場合がよくある。
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「責任所在が曖昧な組織」で動く場合、コトが悪い方に転ぶと原因究明がしにくく同様の失敗を繰り返す可能性が高い

日本のビジネスのやり方は、「責任」を決して個人に落とし込まず、「部門、部署、チーム」といった人格を持たず「責任所在が曖昧な組織」に紐付けて、実践することが特徴といえる。「個人のがんばりの総和」ともいうべきものが、この不思議なビジネスエクササイズを支えている。またあえて"Job description"も明解にしない理由も、部門を越えてお互いが支援できる融通さ(フレキシビリティ)につながっていると思う。

私は別にこうした日本的なビジネスの仕方を否定している訳ではなく、日本の企業の間では十分通用するやり方で、それで成功しているときは問題はないと思う。ただし、コトが悪いほうに転んだ際には、このやり方では、「なぜ、こういうことが起きたのか?これは誰が責任を取るのか?」という「accountability」が不明のまま、原因究明が行われず、同様な失敗を繰り返す可能性が高いという点は指摘したい。
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責任者を隠すための「傘連判状」という署名形式

日本には、「傘連判状」という特殊な署名形式がある。
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出典)生駒谷に残る傘型連判状:江戸時代の慶応4年(1868)「矢野騒動」或いは「生駒一揆」と呼ばれる一揆の折に作成された連判状で生駒市指定文化財。

江戸時代に農民たちが一揆を起こす際に、誰がリーダーであるかをわかにくくするために、傘が開いたように円形状に順不同に署名するもので、真ん中は「空(何も書かれていない)」状態になっていた。当時一揆のリーダーは打ち首獄門や磔刑など厳罰が処せられたため、「責任者を隠す」ために利用されていたもの。「Accountability」という「誰が責任を取るんだ?」という部分を、最初から不明確にし、尚且つ署名した人の上下関係まで曖昧とするものだった。

日本での企業の不祥事をつらつら眺めていると、ずいぶん多くの人達は"Accountability"と"Responsibility"の違いを認識していないということを実感し、さらにこうした企業文化の中には、この「傘連判状」の遺伝子が無意識のうちに埋め込まれているのではないのか? という疑問すらわいた

。あまりにも「空」な状態で「責任を説明されても」、誰も納得できないし、「傘の中」に署名した以上は、「すべての人に責任がある」という自覚が必要だと思う。
ビジネスにおいては、往々にして英語的なアプローチの方が、物事がクリアになる場合が多い。

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私個人としては、"Accountability"と"Responsibility"を使い分けて、「責任」の意味を考えながら行動したいと思う、しんどいけれども。
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コロナ禍でのアメリカ生活㉘「無駄な時こそが最も必要な時間」

9/18/2020

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私の毎日の夢物語私は毎晩夢を見て、毎朝殆どどんな夢を見たかを記憶している。夢の中の色や匂いも克明に覚えており、また夜中に夢の途中で目が覚めてもう一度続きが見たくて戻るという離れ業も、何回か成功している。
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夫は毎朝豆を挽いてコーヒーを淹れてくれるが、私はそのコーヒーを飲みながら、夫にそんな夢の話をする。勿論、夫と全く関係のない夢は話さないが、クライアントとのオンラインミーティングの結果とか、セミナーで作成したPPTをなくし落語家のように身振り手振りのみでセミナーを終えたとか、家の前が何故か海でうちのセールボートのKaiyo(海洋)が接岸してあり、大嵐となってボートに乗って逃げだしたとか、色んな話を毎日話す。
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彼は、25年間も毎朝私の夢物語に付き合っているので、通常はふんふんと聞いているだけ。ただ、仕事関連の話が多いせいか「君は昼も夜も24時間働きづめで休みなし。まあ君はそれが好きだからいいけど、君の脳はいつ休暇を取っているんだろう?」と言われた時には、流石にはっとした。

不眠不休の脳にとって睡眠時は己を最適化するための清掃時間

今日読んだ記事のタイトルが、「Why Neuroscientists Say, ‘Boredom Is Good For Your Brain’s Health.’(神経科学者が「退屈は脳の健康に良い」と言う理由)」だった。私は、思わず「おっと、私が最も苦手なことだ(私は退屈な時間を持つことがまずできない)」と思ったが、読んでみた。

脳は24時間365日休暇や休憩を取ることなし「常にOn状態の器官」として、我々が生きるために不眠不休で働いている。脳科学者のJill Bolte Taylorは、脳と睡眠の関係を以下のように説明している。
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「私たちが持つ全ての能力において、脳細胞は情報をやり取りしている。歩いている時、脳細胞は筋肉に動くよう伝えている。脳細胞は常に働いている。脳細胞は食事をして老廃物を出す。そのため、細胞の間の老廃物をきれいにする最適な時間が睡眠中であり、そうすることで細胞がきちんと機能できるようになる。私はこれを、ごみ収集業者がストライキを行うことに例えている。そうなれば、道がどれほど混雑するかを私たちは知っている。これこそ、脳細胞に起きていることとまさに同じ。体が起きる準備ができる前にアラームで目を覚ませば、脳が求める睡眠サイクルの一部をカットしたことになる。睡眠は脳を活性化させるもの」
Iowa State University の医学誌『Sleep』による調査では、睡眠を制限することで怒りが増幅することが示されており、不眠不休の脳にとって、睡眠時は己を最適化するための清掃時間で、その重要性を指摘する。

何もしないでただ時間を過ごすこと


多くの人達は「何もしないでボーっとしていること」に罪悪感を感じる。これは、社会全体が「仕事(労働)の生産性を重視する」ように作られた現在ならではの、悲しき宿命である。この何もしないで時間を過ごすことを考える時に、面白いのは言葉の語源である。
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フランス語の「Vacances(ヴァカンス)」の原義は「空っぽ」という意味で、英語でいうと「Vacant」となる。これは元々「有閑階級(働く必要のない金持ち)」がすることもなくボーッとしていることの形容だった。それに反して「Travail(トラヴァーユ)」は「仕事」を意味し、語源は「足かせ(ローマ人がガリア征服の際に捕虜につけた内側にトゲがある拷問具を兼ねた足環)」である。

「仕事(労働)の生産性」を考える上で、この語源は、社会が内包する本質的な階級制度を象徴していて、非常に興味深い。

私自身は、マグロのように「泳ぐことを止めた瞬間に死んでしまう」性質なため、「何もしないでボーっとしていること」が最も苦手である。自分がどの階級に属するかを、このことからもよく分かる。自分は生涯「有閑階級」には到達できず、1人の労働者で終わると痛感する。

上述の記事によると、「退屈さにより、実は、創造性や業務に取り組むやる気、仕事での生産性が向上する可能性がある」という。
「何かをすることをガソリンとすると、何もしないことは生産性のブレーキ。ブレーキがない車はエンジンが燃え尽きてしまうが、キャリアの成功を収める上でエンジンを燃やす必要はない。神経科学者によると、退屈さはこれまで不当に非難されてきた。退屈さにより実は、創造性や業務に取り組むやる気、仕事での生産性が向上する可能性がある。脳の健康のためには時々自分を退屈させることが重要だ。」

​無駄な時こそが創造的なアイディアの大切な場
また脳には、私たちが何かをすることから解放された状態でオンになる既定のネットワークモードがあることを、社会神経学者らは発見している。退屈さは創造的なアイデアを育てることができ、低下しているエネルギーや仕事におけるあなたの魅力を回復させるとともに、まだ初期段階にある仕事のアイデアを発展させるためのインキュベーション(ふ化)期間を与えてくれる。
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脳は、酷使し過ぎない時に、本当に必要な休憩を得ることができるらしい。何かをしなければならない時には、脳は休めないが、何も考えずにただ海辺を歩いたり、草花を愛でたり、遠くの夕陽が沈むのを眺めるといった、To do listに入っていない不必要な時に休みが取れる。
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コロナ禍で多く人達の気持ちがささくれ立ち、大なり小なり様々な不安が常にどこかに入り込んで、みんな「こうしなければならない状態」なっている。これでは、脳は最適化のための休暇が取れない。
足かせを外してぼーっと時間が過ぎるのを眺めようよ

「足かせ(ローマ人がガリア征服の際に捕虜につけた内側にトゲがある拷問具を兼ねた足環)」を語源とする「Travail(トラヴァーユ=仕事)から、自分を解放するのは、並大抵のことではない。但し、人間としてよりはっぴいに生きるためには、大切な脳を休ませる必要がある。
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私自身に関しては毎日の自分の夢を結構エンジョイしており、睡眠不足だと思うことは殆どない。夕食後にカウチで「Pre-sleep」を1-2時間取るのが習慣化しており、ベッドでの眠りは浅いのと深いのが交互に来ているようで、夜明け前に自然と目が覚める。このスタイルは一定しており、願わくば、私の脳は、睡眠時にしっかりお掃除をしながら、休んでくれることを期待している。

ぼーっと時間が過ぎるのを眺めようよ
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ひさみが選んだ&考えた言葉達㉕

9/12/2020

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誰かに言われた「ひさみ語録をまとめてください」と。毎日様々な言葉がアタマをよぎるので、ここに記録していきたい。注意:今回も2週間分で言葉満載なので長い。
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"ひさみっと・ダイアログ"第2回の告知-日本時間9月5日の午前9時から開催

9/4/2020

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“日本のマーケティングをPivotする”をステートメントに、朝のラジオ番組的な語り場としてスタートした“ひさみっと・ダイアログ”。
第2回はゲストをお招きして「ジェンダー・ニュートラル」をテーマにディスカッションをおこないます。ちょっと難しいテーマではありますが、オープンに、フラットに、無意識下に醸成されたステレオタイプなラベルや常識に捉われない在り方について、話し合ってみたいと思います。
土曜日朝のアタマのラジオ体操、ぜひ、ご参加ください!
開催日時:9月5日(土) 9:00 am 〜
配信場所

・Facebookでのライブ配信
・Youtubeでのライブ配信

※配信動画はアーカイブでもご覧いただけます。
ゲストスピーカー:ビンガム 綾子 さん(Spotify)&伊藤 美希子 さん(株式会社ベストインクラスプロデューサーズ BICP)
パーソナリティ:大柴ひさみ(JaM Japan Marketing LLC)、原裕さん(株式会社メンバーズ)、菅恭一さん(株式会社ベストインクラスプロデューサーズ BICP)
第1回の"ひさみっと・ダイアログ"は、ここで見られます。
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"ひさみっと"とは?“日本のマーケティングをPivotする”をステートメントに、有志メンバーの運営による、パーパスドリブンなマーケティングを思考する会議、“ひさみっと”を今秋より開催します。”ひさみっと”は、ユタ州セントジョージ在住の大柴ひさみさん(JaM Japan Marketing LLC)を中心に、日本的な固定概念に捉われずに、俯瞰で見たサステイナブルな企業活動、マーケティング・パーソンのあり方、を思考する場です。
・New Normal時代を迎えるにあたり欧米は大きく変化しようとしている。その原動力はパーパス。
・特に若年層は自身の時代を見据え、パーパス不在の企業やブランドは購入しなくなり、リーダー企業は大きく変革し始めた。
・一方、日本の企業はどうだろう?変革が進む欧米企業の現実を直視せず、内向きに日本の独自性を強調して変化を拒む?いま、日本のマーケティング・パーソンが身につけるべきメンタリティやアクションて何だろう?
“ひさみっと”は、このような問題意識を背景に、パーパスあるマーケティングの現場が増えれば、世の中はもっとハッピーになる、そんな思いで運営をしていきます。
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アメリカの現実⑩「サステイナブル&エシカルっていう観点から卵を考える」

9/4/2020

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『Cool Hand Luke』のように卵50個は無理だけど、1日3個は食べている私

私は卵が大好きで、毎朝4個の卵をゆでて、朝食兼昼食にお味噌汁とゆで卵を2個食べる。後の2個のうち1個は夫が、もう1個は私の夕食までのつなぎで、すぐに栄養補給する必要に迫られた時のためのもの。卵といえばPaul  Newman主演の1967年映画『Cool Hand Luke』で、刑務所の中でLukeはゆで卵50個を食べられると豪語した賭けのシーンを思い出す。
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この映画は卵に限らず非常に面白くPaul  Newmanの良さが、全編で活かされており、まだ観ていない人は是非ご覧いただきたい。
卵好きの私が勧めるVital Farms

2020年7月31日にテキサス州のオースティンにある、Vital FarmsがNasdaqでIPOを果たした。私はこの企業の上場云々以前に、近所のマーケットでこの卵を目にして以来、その鶏の育て方と卵そのものの味で大ファンとなり、買い続けていた。この卵は、Pasture-Raised Eggsなので、殺菌処理されておらず、Pasture(牧草)にアクセス可能なフィールドで育てられた鶏から生まれた卵である。
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Vital Farmsは、小さな農家(すでに200を超えた)と契約して、エシカルに育てられた「はっぴいな鶏」が生む放牧卵を、全米の1万4,000店舗のマーケットに卸している。Vital Farmsは、契約している小さな農家と共に、丁寧にビジネスを育て上げ、パンデミックも含めて、近年の消費者のサステイナブルな食への関心と自宅で料理するトレンドは、投資家にも注目されて、彼等のビジネスモデルは大きく押し上げられた。
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以下の図にあるように、この公式がこの企業を支えている。
"Pasture-Raised"+"Family Farms"+"Purpose Before Profit"=Vital Farms
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消費者は「放牧卵」的なイメージを作る用語を正しく理解していない

誰でも、身動き1つ出来ないケージの中で、工場生産のベルトコンベアともいうべき仕組みで、卵を産み続けるためだけに生かされている鶏の卵より、放牧卵のほうがいいに決まっている。

企業は、3つの言い方で、卵を産む鶏の育て方を表記しているが、以下の3つの表現は、鶏を1羽を育てるスペースが大きく異なる。つまり一見放牧されているイメージを持たせる「Cage-Free」や「Free Range」といった言葉は、実は消費者を惑わす要素があり、Pasture-Raisedとは、エシカルな観点からも大きく異なる。
  • Cage-Free:1羽あたり、約1平方フィート(0.09平方m)
  • Free Range:1羽あたり、約2平方フィート(0.19平方m)
  • Pasture-Raised:1羽あたり、少なくとも108平方フィート(10.03平方m)
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またPasture-Raised Eggsのためには、気候や土壌も適切なモノでなければならない。Vital Farmsは、以下のグリーンで示された「The Pasture Belt」というエリアにある小さな農家と契約している。
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当初は10ドル以上した卵が今は6ドル以下まで下がった!

我が家もそうだが、毎日食べる卵の価格は、やはりかなり気になる。幾らエシカルで素晴らしい味でも、1ダースが12ドルすると、流石に毎日何個も気前よく食べることに躊躇してしまう。しかし、らっきいなコトに、上場前からVital Farmsは徐々にスケールアップしており、価格が6ドル以下に落ちてきたので、今はいつでも、安心して購入できる(普通市場に出回っている最も廉価の卵は2-3ドルで買えるので、今でも6ドル以下は高い印象があるが)。

Vital Farmsは、2018年時点で累計で2,500万ドルを調達して、市場価値は1億3,600万ドルとされていたが、上場直後、22ドルのIPO価格は60%も急騰し、時価総額は13億ドルに達した。

​私は、闇雲にいろんなスタートアップのIPOを手放しに誉めるほど、ナイーブではない。但し、Vital Farmsの卵の販売価格がより求めやすくなったのは、上場による資金調達と市場価値の上昇がもたらしたものとして、珍しく喜んでいる。

​Vital Farmsの
創業ストーリー

13歳になる前に、既に近所の人たちに卵を売っていたという創業者のMatt O’Hayerにとって、今回は2回目のIPOである。彼は1998年に旅行予約企業を上場させたが、911テロ後の需要減少で廃業した。彼は2007年に友人であるWhole Foodsの共同創業者のJohn Mackeyの住むオースティンに移住し、彼からオーガニックでエシカルな食品需要の高まりを聞いて、この分野での起業を思い立った。
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彼はまず20羽の鶏を購入しオースティンで育て、地元のファーマーズマーケットやレストラン向けの販売を開始した。しかし、当時は彼が希望した価格(10ドル以上)で卵を買う顧客は存在せず、売れ残った卵をフードバンクに寄付する日々が続いたという。

因みにこの時、卵の販売に使っていた彼の車は2005 SUBARUだった(13年後の2018年の時点でも彼はそのSUBARUを所有していた)。SUBARUは我が家の大切な車ブランドで、尚且つSUBARUは私の会社JaMの主要クライアントでもあり、この点だけでも、思わず彼を応援したくなる。2018年のForbesのインタビューで、彼は「それでも私は、サステイナブルなビジネスにふさわしい価格を消費者に理解させようとしていた」と話している。

その結果、WalmartやAlbertsonsといった米国のメインのマーケットの顧客にもその価値が認識されて、価格は1カートンが5.59ドルとなった。現時点ではVital Farmsの卵を購入する消費者の割合はわずか2%だが、上場により、その比率を急速に拡大できると見込んでいる。
O’Hayerは以下のように明言する。
“I was always looking for the exit. Instead of looking to get rich, I realized I could build a company where I was focused on employees, customers, shareholders, and the environment,” “It’s so much more fun than focusing on profit.”

​Purpose before profit


O’Hayerの言葉からも示唆されるように、上場によって得られるものは、それによって、自分が求める価値観を具現化するビジネスにフォーカスすることが可能になるという点である。

彼は「金儲けよりもっと面白いことがある」と言う。そして、彼のサイトにある言葉、"Purpose before profit" まさにこれが今のビジネスで最も重要なポイントだと思う。

「金儲けをする人」は世の中に多く存在するが、「お金の使い方を知っている人」は意外と少ない。Purposeがないビジネスは、サステイナブルに事業が継続していかない。サステイナブルな企業は、全てのステークホルダー(社員、顧客、パートナー企業、株主、コミュニティ)に価値を与える。

私は1人の消費者として、自分の消費行動を通じて、少しでもサステイナブルな社会活動に貢献していると思うと、嬉しい。これからも、はっぴいな鶏が生んだ美味しい卵をエンジョイしながら、毎日食べられる喜びをしっかり噛みしめる。
​

PS: 私は、自分の価値観を共有できる企業を応援する一つのやり方として、その企業の株を購入すべきだと思っている。私は既にVital Farmsの株を購入しているので、現在私は顧客&株主という2つの面からVital Farmsのステークホルダーでもある。
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    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

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