SFのベイから南に太平洋岸を下ったところに、とてつもない巨大な波が起こるPIllar Pointがあります。1999年から正式にコンテストとしてスタートした「Mavericks Surf Contest (マーベリックス・サーフ・コンテンスト)は、1975年当時17歳だったマーヴェリックス・サーフィンのパイオニアで伝説的なJeff Clakが、最初に挑戦して以来、世界中のサーファーが畏敬の念でみつめる大会です。毎年12月から3月までの冬の間のみ、数十メートルに及ぶ伝説な巨大な波マーヴェリックスが起こるために、いつ競技会を始めるかは確定できず、マーヴェリックスが起こりそうになると、24時間以内に世界中に散らばる参加者に知らせが入り、全員がPillar Pointにはせ参じて、挑戦するというユニークな大会です。この知らせは、オンラインで登録すると、メールや携帯電話のTextingで知らせてくれますが、今年はSF Giantsのホーム球場のAT&T ParkのハイディフィニションTVスクリーンで、ライブでWebcastingするということで、チケットを購入した人は、マーヴェリックスが起こって大会が始まると、球場でみんなと視聴可能です。
全世界から著名なサーファー24名が招待されており、彼らは、PW (Perosnal Watercraft)で沖合いに運ばれ、ホワイトシャークが出没する危険な水域で、この神々しいまでの巨大な波に臨みます。1994年にはハワイのスーパーサーファーであるMark Fooが溺死しており、競技会の前に、参加者たちは海に入り、手をつないで円陣を組んで、神に祈ります。今年は、すでにマーヴェリックスに挑んだMontereyのサーファーで45歳のPeter DaviがGhost Trees(幽霊の木)と呼ばれるポイントで亡くなっており、マーヴェリックスに挑むサーファーたちの気持ちは、さらに引き締まっています。
私は、夫と、サンフランシスコのベイからHalf Moon Bayに向かうセーリングの途中で、よくこのPillar Pointの沖合いを通過しますが、確かに遠目で見ても、凄まじい波のエネルギーを感じて、絶対にセールボートでは近づきたくない場所です。80フィートに立ち上がる巨大な波に挑むサーファーのマインドは、多分余人がうかがい知れぬぐらいの非常にスピリチュアルな高みに気持ちが達している、そんな感じがします。
「神々(自然)との対話のために海に向かう」、マーヴェリックスには、今のデジタルな時代がどんどん失っているそんなロマンが感じられ、ひたすら参加者の無事と成功を祈りたい気持ちです。
PS: マーヴェリックスには程遠い話ですが、母が東京の伊豆大島の出身で、オムツをしている頃から、太平洋で泳いだり潜っていたりしていた私は、波に何度も身体を叩きつけられたりして、身体で海の怖さを体験しています。また、2年前にサンフランシスコからハワイまで、太平洋半分セーリングの航海をした時も、背後に迫り来る大きな波は脅威で、ヘルム(舵)を取っている時には絶対に振り向かないようにしていました。実際に振りむくと、波が巨大な壁となって襲ってくるようで、ゴーゴンの伝説のように振り返った途端に、石像と化するような気持ちになりました。個人の小さな体験を基に考えても、マーヴェリックスに挑むサーファーの勇気には、ただ頭をたれるばかりです。