我が家のバックヤードのグリルで、チキンとシュリンプ、アスパラガスを焼いている間に、ゲームは始まりましたが、ゲームよりパーティ気分を楽しみたい私たちは、どこ吹く風とのんびりおしゃべりをしながら、クッキングを楽しんでいました。スペイン産のスパークリングワインを手にして、リビングのTVの前に座ったのが、セカンドクォーターの開始というタイミングでした。座って食べ始めた時に、Pittsburgh SteelersのJames Harrisonが100ヤードのタッチダウンを決めて、思わず、2人ともシャンペングラスを片手に「Wow!」と叫んでしまいました。スーパーボウル史上最長のタッチダウンとなったハリソンは、ボールを手にした瞬間からノンストップで、巨体を揺らしながら走り去っていきました。彼の走りの前に、夫がちょうどスティーラーズは、1970年代に「Steel Curtain(鋼鉄のカーテン)」と呼ばれる、鉄壁の守備を誇ったと説明してくれたばかりで、ハリソンの走りを守るためのスティーラーズの守備はまさに「鋼鉄のカーテン」となりました。夫は盛んに「カーテンが始まった」と叫んで、大喜びでした。TVCMばかり話題になるスーパーボウルですが、今回はゲーム内容が面白く、結果27-23でスティーラーズが勝った興奮したゲームでした。
今回のスーパーボウルの広告は、この深刻な経済危機の中でも、30秒間のTVCMに300万ドル(3億円)という価格で販売されて(去年は270万ドル)、50以上のCMがオンエアされました。放映ネットワークTV局のNBCは、2億6100万ドル(264億円)稼いだと報道されており、年に1回のCMフェスティバルは健在です。広告内容に関しては、ほとんどのクライアントが、ユーモアやノスタルジアといった「安全なアプローチ」で、厳しい社会環境の中にいる視聴者の不興を買わないように配慮していることが感じられます。メディアは事前と事後で、広告批評の特集を組んでいますが、その中でこれはと思ったのは、NYTimesの記事の中に埋め込まれた過去25年間のスーパーボウルのTVCMの歴史が見られるインタラクティブな「スライド」です。1984年のTVCMの古典ともいえるApple(アップル)の「1984」に始まって、昨日のCMまで見られるので、過去の広告を比較できて楽しめます。YouTubeでは現在広告評価の投票の最中で、多くのメディアも読者に投票を呼びかけています。
個人的には、Pepsicoの「Refresh Anthem」が気に入っています。Bob DylanとWill.i.amの2人によって米国のユースカルチャーの歴史を振り返るというノスタルジアな広告です。ペプシは、ロゴマークも含めて、「Generation Obama(GO:ジェネレーションオバマ)」と呼ばれる、ユース層にアプローチするために、かなりオバマキャンペーンを利用していますが、これもその一例です。ただし、皮肉なことに、このCMが描写するヒッピーやベトナム反戦時代は、ペプシのCEOのDonald Kendallがニクソン大統領の友人だったこともあり、当時ペプシは共和党のドリンクとして有名だったということです。
もう一つ、ぜひ取り上げたいのが、スーパーボウルにオンエアせずに、この広告の話題をネタにして、バズをクリエイトするMiller Beerの広告です。今回の30秒のTVCMをネットワークTV局でオンエアするためには300万ドル(3億円)がかかります。これは広告主が1秒間に10万ドル(1000万円)支払うという計算になり、これを皮肉って、Miller High Lifeは、「1秒CM」のオンラインキャンペーンを展開しています。事前にこれに関するバズがかなり出回っていましたが、ミラービールのスポークスマンとなったビールの配達マンWindell Middlebrooksによる一言CM「High Life!」は、納得ものです。
Middlebrooksは、YouTubeに「HighLifeCommonSence」というヴィデオをチャネルで、一般市民として感じたことを率直に語っています。彼は、ヴィデオで政治に関しても、いろいろ語っており、メインストリームのバドワイザーに、チャンレンジするミラービールのポジショニングが良く現されています。ネットワークTV局や広告代理店は、多分必死に「300万ドルの広告効果(ROI)」を、広告主にピッチしたと思いますが、プロスポーツビジネスにも陰りが見えてきている中で、この「スーパーサンディ」をモット上手に利用して、賢くROIを獲得する手法はあるはずですし、マーケティング手法そのものに、モット革新的な「クリエイティビティ」を発揮して欲しいと思います。