今朝のAP報道によれば、、ケイマン諸島の「Tax Haven*(租税回避地)」には、1万8857の企業があり、そのうちの半分は、米国所有、米国が請求先住所、あるいはそれ以外の米国関連企業です。ここで米国は、なんと年間1000億ドルの税収を、失っているというリアリティです。これは、GAO(Government Accountability Office)が、Senate Finance Committeeに、調査報告した数字ですが、これは上院議員たちに、何とかしてもらわなければならない大事な税収です。
過去にも、何度もこの問題は、様々な人たちが問題視して、俎上にあげていますが、政府がこの問題にシリアスに、メスを入れた話はきいたことがありません。ずいぶん昔になりますが、私が2002年に書いた「エンロン問題」のコラムでも、以下のようにエンロンはケイマン諸島881の子会社を設立して5年間収益なしとして無税申告して、米国政府から還付金として3億8300万ドルを受け取るという凄さです。
「エンロンの企業体質を表す例としてわかりやすいのが、その税金対策です。アメリカの多くの企業が行っている税金逃れの古典的な手法で、租税回避地(外国の島々)に子会社を持ち所得税をゼロにするやり方です。2000年10月フォーチュン500の半数の企業を対象に調べた「市民による公正な税金のための調査」によると、1996年16社、1997年17社、1998年24社が、子会社を税金天国に設立して無税申告をしています。エンロンの場合は、その数の多さが尋常ではなく881の子会社をつくり、過去5年間4回を収益なしとして報告して無税扱いとなり、さらに政府から還付金として3億8,200万ドルが返還されています。ケイマン諸島に692、トルコとカイコスに119、マルティネスに48、バミューダに8と、まるで乱開発されたリゾートホテルのように税金逃れのパートナー企業を各島々に設立しています。仕組みは意外とシンプルで、利益を米国法律下にないパートナー企業へ送り、パートナーが手数料をとった後おカネがエンロンに戻されるというもので、この場合は米国の所得税申告の対象外になります。」
今朝のこの数字を見ながら、いかに政府が企業の税金逃れに甘いかを痛感しています。米国は、今、以下のような問題を抱えています。
- 底なしの不安を抱えながら解決を模索するサブプライム問題、
- 輸入石油依存の泥沼から脱出できずにドンドン上がるガソリン価格
- 石油価格上昇がトリガーになって上昇する物価・失業率
- ダウの平均工業指数低下と平行して低下する消費者自信指数
NBC/WSJの調査では、アメリカ人の74%は「米国は悪い方向に向かっている」と回答しています。こうした経済的にかなりダメージを受けているアメリカにおいて、「この企業の税金天国」にみられる「税金の不平等」は、許せないものがあります。マイクロビジネスですが、ビジネスオーナーとして、税金を払うことに苦労している私は、これには怒りを感じます。
アップデイト:「Tax Haven」の日本語訳の「税金天国」が間違っているという指摘を受けて、「租税回避地」と表現を訂正しました。