PS: ちなみにまだ拙書「YouTube時代の大統領選挙-米国在住マーケターが見た、700日のオバマキャンペーン・ドキュメント」を読んでいない方は、ぜひ読んでみてください。
市民の声を社会に反映させるチャネル「CitizenTube」は、現在、大統領の一般教書演説へのヴィデオ質問にフォーカスしています。オバマ大統領は昨日ホワイトハウスのライブラリで40分間を使って、1万1000以上の質問の中からユーザの投票で選ばれた10以上の質問に答えています。大統領は質問の事前のスクリーニングもなく、台本なしの回答です。ヘルスケアのリフォーム、税金、スモールビジネスなど、今国民が疑問に思っている質問が直接大統領にぶつけられています。先週の共和党との直接の質疑応答も迫力がありましたが、こうした市民との直接的なインタラクションは、非常に重要です。まさに大統領はキャンペーンモードです。 PS: ちなみにまだ拙書「YouTube時代の大統領選挙-米国在住マーケターが見た、700日のオバマキャンペーン・ドキュメント」を読んでいない方は、ぜひ読んでみてください。 「The YouTube Interview with President Obama」が昨日公開されました。先週のObama(オバマ)大統領の一般教書演説に関する、YouTubeを使った市民からのヴィデオ質問です。大統領選挙キャンペーン中で、大いに活用されたインタラクティブなYouTubeをプラットフォームとして、直接国民の疑問に答えるヴィデオです。
C-Spanは、ワシントンの政治家たちのリアリティを、淡々とTVカメラで映していますが、ヒートアップした政治家の言動は、単なるリアリティTV番組より面白く、最近最もホットな「政治劇場」と言われています。今日の台本なしのとの質疑応答は「飛んで火にいる夏の虫と」思っていたはずですが、この夏の虫は火の中で、嬉しそうに飛び回り、周囲を大いにかき回した、という感じです。
また少なくとも、大統領が共和党の言い分に聴く耳を持って、彼らの陣地に出かけたことはポイントで、さらにホワイトハウスがかなりプッシュして、TVカメラが入ったことが成功の要因です。このC-Spanの放送の良さは、そこには政治評論家やTVレポーターといったバイヤスがかかる人たちが存在しない点です。最近のケーブルTVが「ゴングショウ」的で、極端な政治志向に走りやすい中で、ありのままの政治家の姿が映し出されるC-Spanは、視聴者が自分で目で見たことを、自分のアタマで考えることができます。 「密室の中の政治」とは古臭い言葉ですが、民主党が「ヘルスケアのリフォームの論議」で共和党を締め出して、密室で話し合ったことは多くの批判を呼びました。オバマ政権が打ち出す「政治の透明性」を強化する上でも、このC-Span的な作りこみのないカメラを入れて、国民にありのままを見せのは、信頼の獲得の上でも好ましいと思います。 スピーチのキーワードは以下です。 Job(雇用) 24, Economy (経済)14, Goverment(政府) 12, Deflicit(赤字予算) 11, Green energy(グリーンなエネルギー)10, Reform (再建)10, Banks(銀行) 8, Change(変革) 7, Taxes(税金) 7, Small business (スモールビジネス)7, Health Care(ヘルスケア) 6, Gay(ゲイ) 1 このキーワードを見れば、大統領がこのスピーチで米国民に語りたかった問題の優先順位が良くわかります。「雇用創出」、これが2010年の最も重要な解決すべき課題で、そのための具体策の1つとして、7000億ドルのTARPから300億ドルの資金をコミュニティの銀行に移し、スモールビジネスがローンを借りられるようにすると発表しています。上院・下院の民主党および共和党には、耳の痛い言い方で、「ワシントンは毎日が選挙」という態度を改めて、問題を解決する責任を果たすように、訴えました。 大統領はいつも非常にクリアに言葉を発音します。このスピーチも、平易な表現で、米国が抱えるさまざまな問題をユーモアを交えて、わかりやすく説明しているので、ぜひじっくり腰をすえて聞いてみてください。米国の抱える問題や考え方が、自然に頭に入ってきます。私も驚きましたが、レポーターもここまでカジュアルでユーモアを交えた一般教書演説は、過去の大統領には例がないと、その印象を語っています。 「Dr. No(すべての大統領の政策に反対する)」と化した共和党も、大統領が「米国はNo2のポジションを受け入れることはできない」と訴えると、両党から「We're number one! We're number one! We're number one!(我々はNo1)」というチャントとスタンディングオベーションが生まれました。他の国からは見ると、傲慢な米国的な態度と思われるかもしれませんが、私から見ると「若者のOptimsmの反映」といった印象で、世界の中で誰かがこのナイーブとも言うべきエネルギーを持ち続けることが必要だと感じました。 CBSの演説直後のクイック調査では以下のような数字が挙がってきています。
マサチューセッツ州の上院議員選挙での民主党の敗退は、米国に広がる政党への不信感を強く持つ人たち(無党派層)の怒りの増大を示唆して、オバマ政権とワシントンの民主党議員の間には「戦慄」が走り抜けました。この「坑道のカナリア」ともいうべき警鐘が、今、1月の時点で起きたことは、オバマ政権にとってラッキーだと思います過去1週間のオバマ大統領のトーンは完全に選挙期間中に戻り、「We & You」という言葉を連発しています。オバマ政権のグラスルーツキャンペーンを成功させたキャンペーンマネージャーのDavid Plouffeも先週オバマ政権に復帰しており、オバマ政権は就任1年目で早くも戦闘態勢に入りました。これも「Instant Grafitication(瞬間的な満足)」に慣れている米国民にとって、「モット時間が必要」と待つことが依頼するのが、実に困難であるかを象徴している出来事です。 「攻撃は最大の防御」という鉄則はさまざまな分野で活用できます。守りに入ったビジネスや政権は、弱体化します。ヘルスケアのリフォームという政治課題のために、守りに入っていたオバマ政権にとって、昨日は「ボタンをリセット」した重要な日です。スピーチの最後に大統領は「We don't quite. I don't quite.」という言葉で、決意を強く表明しています。3億人の人口を抱える米国は、ホモジーニアスな日本とは異なり、さまざまな人種や民族、政治的主張、価値観の異なる人間たちの集合体です。3億人分の異なる期待にどこまで応えていくのか、私のような常人は、想像しただけでもをアタマをハンマーで殴られたような痛みが走ります。あきらめないといっている大統領に、私は期待して、もう少し時間をあげたいと思います。 昨日は2人の超優秀なマーケターの登場で米国は盛り上がっていました。最初は地元サンフランシスコで新製品を発表したAppleのCEOのSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)です。私も、Yerba Buena Center of Artsから招待されたレポーターによって、どんどんライブでアップデイトされる彼らのTweetを読みながら、私のアカウントで笑いながらTweetしていました。Twitterの面白さは、Tweetererの感情的なリアクションが見られる点で、140文字で表された感情表現は、製品への批判でありながらも非常に面白く、コピーライターも中々こうは書けないという名コピーが多く、エンジョイしました。これはまたあとで、エントリします。
夕方から登場したのは、Obama(オバマ)大統領で、支持率が下降する中で、「State of the Union Adress(一般教書演説)」を行いました。米国民に、直接大統領の言葉で、2010年の米国の向かう道筋を説明する大事な演説です。スピーチの全文はここで読めます。ヴィデオは以下です。1時間11分のスピーチの中で、大統領は91回のアプローズ(拍手喝采)、58回のスタンディングオベーション(立ち上がって拍手喝采)を得て、その中に共和党の40回も含まれています。 昨日のBlack Fridayは、朝から快晴と思いきや途中から物凄い雨が降ってきて、いろんなニュースが飛び交って話題の多い日でした。米国の年中行事であるホリディショッピングの幕開けで、深夜12時から店を開けたToys R Usに始まって午前2時3時4時と早朝からオープンした店に並んだショッパーたちの熱気で、盛り上がったみたいです。ソーシャルメディアを駆使した小売店は、Facebookのファンになると獲得できる特別なディスカウントやTwitterからのTweetでフォロワーズに昨日の特別なディールをリークするなど、ソーシャルメディア活用によるホリディショッピングは盛り上がっています。
そんなBlack Fridayの早朝ショッピングに出かけるために、午前2時25分にTiger Woods(タイガー・ウッズ)は自宅を出たとは思えませんが、彼はこの深夜自宅前でクルマの事故を起こして、病院に運ばれています。最初はシリアスな怪我という報道もでていましたが、その後、軽症で自宅に戻ったということで、ファンおよびゴルフ関係者はホッと一息ついたようです。ただし、その後はこの事件は様々な噂を伴って迷走し始めています。当初警察の発表では、アルコールは絡んでおらず、タイガーは自宅そばで衝突した際に、妻がゴルフクラブでクルマの窓を叩き壊して、彼を救出したと報道されていました。ところ、すぐにゴシップサイトがタイガーの浮気による夫婦喧嘩が原因で、ウッズの妻は彼を助けるためにゴルフクラブを持ち出したのではなく、彼が口論の末にクルマで外出する後を追って、クラブでクルマを叩き始めたために、タイガーが運転を誤ったという報道がでています。すでに妻は警察への事情説明の話を変えているということなので、まだ真相は良くわかりませんが、深夜2時にクルマで出かけるということ自体、何か尋常ではないことが起きたのは推察できます。 昨日はまたホワイトハウスのシークレットサービスは、Sate Dinnerの「招かれざる客」であったMichaele SalahiとTareq Salahiの2人のカップルが警備をかいくぐって晩餐会に出席して、大統領夫妻に挨拶までしたことを確認し、職務上恥ずべきコトとして失敗を認めています。2人はオバマ政権の初の重要なパーティの「Party Crashers(招待されていない人が何食わぬ顔でパーティに参加して飲食する)」となり、MichaeleはすでにFacebookにSate Dinnerの写真まで載せています。今のところ、犯罪になる可能性は低いということですが、 オバマ政権およびシークレットサービスにとってはとんでもない汚点で、インド首相夫妻との友好を深めて成功した晩餐会という評価を落とす結果となっています。特に米国の要人が集ったホワイトハウスに、Party Crasherが入れるということは、その警備に大きな問題があるということで、大統領の生命の危険も含めて、非常にまずい事態です。 さらにこの2人は、ケーブルTVのBravoの新しいリアリティTV番組「The Real Housewives of D.C.」の出演準備をしていて、カメラを回していたと報道されており、またしてもメディアカバレッジやPRのための演出ということにもなり、ますます低下する米国のモラルの酷さを実感します。「Balloon Boy(バルーンボーイ)」と呼ばれて、息子が気球に乗ったと警察に虚偽の通報してパブリティ効果を狙ったリアリティTV関係者の事件も含めて、最近の「15分間の名声」を求める人たちが巻き起こす事件はちょっと度を越えています。 しかし、Black Fridayは、まずまずの滑り出して、小売業にとっては、幸先の良いホリディショッピングの幕開けです。消費者もちょっとの間は厳しい経済環境を忘れて、買い物を楽しむ余裕が出てきたようです。 金曜日、私はこの出馬断念のニュースをクルマの中のラジオで聞いて、すぐにTwitterでそれを確認しましたが、ニューサムの最後のTweetは10月28日までで、出馬断念に触れることもなく、「ぶっち」とTweetが途切れていました。もちろん、Facebookにはこの断念の事は触れられていましたが、このTwitterの一件は、ニューサムが本当にソーシャルメディアのエコシステムを理解して、戦略的に活用できたのかという、疑問が生まれます。以下はニューサムのFacebookとTwitterのサポーターとフォロワーズの数です(11月3日現在)。
ニューサムが出馬を断念した理由は、まだ出馬表明もしていないカリフォルニア州の司法長官Jerry Brown(元カリフォルニア州知事)の集金力の凄さと支持率の高さが、原因です。10月の半ばの支持率の調査では、ブラウンは47%で、ニューサムは26%と大きく水を開けられており、6月の時点ではブラウンは740万ドル(7億4000万円)、ニューサムは120万ドル(1億2000万円)の政治献金を集め、直近の金額でもニューサムはわずか300万ドル(3億円)を少し超えた金額しか集められなかったということです。 また、ニューサムへの批判としては、彼は以下の4つの役割をハンドルできないとい指摘があります。
また、彼は1対1の会話によって人とコネクトするというのがあまり上手ではなく、彼が話し始めると、「レクチャー(講演)になってしまう」という批判もあります。さらに、彼には過去に様々な個人的な問題が山積みしていて(最初の妻との離婚、自分の親友でキャンペーンの重要なメンバーの妻との浮気、アルコール中毒のリハビリテーション治療を受けるなど)、多くの人たちはそれをきちんと覚えているという点です。 こうした彼の様々な問題が出馬を断念した理由ですが、ここベイエリアの住む住人として、注意深く彼を見ていましたが、彼のソーシャルメディアを通じて、若い世代を中心としたボトムアップのキャンペーンは、どう考えてもきちんと展開できたとは思えません。私が実感として感じるのは、彼の発言や態度は、いつも「自分がそれを行った」という、自分優先のメッセージが見え隠れするという点です。彼の州知事出馬理由には、「あなたたち(州民)のため」という真摯な想いが見えず、うがった見方をすると、これはあくまでも、自分が将来米国大統領を目指す最初の大きなステップストーンだという、印象が見えてしまう点です(これはあくまでも私の個人的な印象です)。 もちろん、今の時点で断念したという政治的判断と勇気は、特筆すべきものです。さらに、彼がこれを契機に大きく成長して、SF市長として猛烈に働いて、市民のために貢献すれば、それが実績となって、次の大きな政治的なステップが見えてくると思います。ただし、その際にまたソーシャルメディアを使うのであれば、長期的なコミットメントと戦略的な活用の立案を事前に十分行って、実施展開すべきだと思います。今回、彼はソーシャルメディアによる「ユーザとのエンゲージメント」が十分果たせず、キャンペーンのMomentum(モメンタム:勢い)を創出できず、結果オンラインによる個人献金もあまり集まらなかったという、負の循環が生まれたと思います。 「やる時にTweetした以上、やめる時も真っ先にTweetする」、こうしたコミュニティへの姿勢は非常に重要で、彼らへの感謝を忘れてはいけません。 日本出張の際に、何人かの方たちから、「米国の景気後退はいつ頃終わると思いますか?」と質問されましたが、「人員解雇という労働市場の出血が止まること、個人の住宅市場下落に歯止めがかかるまで、景気の回復は望めないと思います」と答えました。 米国経済は良く悪くも個人消費におよそ70%と大きく依存しています。これはたぶん米国経済と深く関わるグローバル市場にも大きく影響する要因です。過去半年間、米国の個人の消費行動で、最も大きく変化したことは、「個人の負債額」が減ったという点です。Federal Reserve(連邦準備制度理事会)の発表によれば、米国の6月の個人負債額は、130億ドル(5月は54億ドル減っています)も減って、2兆5000万ドル(1ドル=100円で計算すると、250兆円)となり、5ヶ月連続で負債が減少しています。これは、米国人が「自宅の価格が毎年大幅に上昇すると信じて、リファイナンスで得たキャッシュやクレジットカードからの借入金を安易に活用して、イケイケドンドンで、消費生活をエンジョイしていたマインドセット」が、大きくシフトしたことを意味します。つまり、自分たちにはそんな贅沢な消費生活を維持するためのお金がないということに気がついたということです。 当たり前といえば、当たり前の話で、いつまでも中国が米国に無尽蔵にお金を貸してくれるわけがなく、そんなファンタジーを信じてはいけないと自覚したアメリカ人は、財布の紐をうーんと引きしてめているのが、今の現状です。ただ、そうは言いながらも、ポジティブな思考で、モノゴトを良い方向に考えるアメリカ人は、「先に光が見えてきた」、そんなことを実感していると思います。 昨日は、議会で68対31の投票で、Sonia Sotomayor(ソニア・ソトマイヤー)が、最初のラテン系女性最高裁判事として承認され、火曜日はBill Clinton(ビル・クリントン)元大統領は、2人の女性ジャーナリストを北朝鮮から救出したし、ヘルスケアのリフォームという大きな問題は残っていますが、とにかく米国の夏に、ちょっと笑顔が戻ってきたのは事実です。 私がブログのエントリする時は、「何かを感じた」瞬間です。実感レベルで、「うん、そうだ!」と思えることをブログしています。昨日は、お金の動きに鈍い私が(だから儲からないんですが…)、「うん、そうだ!」と思い、何と1年ぶりにオンライントレードしました。 私は、4ヶ月間も放置されていた2008年分の自分のIRA(Individual Retirement Account)のコントリビューションのキャッシュを、やっと動かす気持ちになって、ある企業の株式を購入しました。IRAは、自分の老後資産のための非課税なアカウントで、なるべく経済の変動に左右されにくい安定したポートフォリオにすべきものです。昨年9月の金融危機以来、価値の落ち込みは酷く、IRAのパフォーマンスを見ること自体をやめていた私は、完全にフリーズド状態でした。私は経済評論家でもなく、株式投資の専門家でもないので、株式やミューチュアル・ファンドの動きを見ながら、何が今最も自分のIRAのポートフォリオに必要かを考えるのが、面倒くさいと思ってしまいますが、そんな私でも、最近の米国の経済動向には光が見えてきたことを感じて、お金を動かしました。実感したのは、以下のようなことが目についたからです。
昨日のObama(オバマ)のベルリンのスピーチは、20万人以上人々が参加する、大きな政治的なシーンとなりました。ドイツでは本当に珍しい「USA」のチャント(掛け声)や星条旗が振られ、オバマキャンペーンのテーマ「Yes, We Can!」が叫ばれるなど、ベルリンの熱狂は、ブランデンブルク門の近くの戦勝記念公園にこだましたようです。 昨日のエントリのヴィジュアルインパクトではありませんが、このマケインのドイツレストラン訪問とオバマのベルリンスピーチの差は歴然としています。マケインには、オバマが予備選の候補者として勝利した6月3日に、「Green Monster(ライムグリーンのバックグランドのステージでさえないスピーチをして多くの失望を買った)」と呼ばれる舞台設定をミスったスピーチもあります。マケインキャンペーンは、真剣に彼の良さを演出するやり方を考えないと、こうしたミスはボディブローのように、彼のイメージを弱体化させます。共和党には、まともにマーケティングの見地からものを考えられる人はいないのか?と、私は大いに驚いています。 ただし、この「ベルリンの熱狂」と、米国の反応は、微妙な温度差があり、米国内では賛否両論の受け止められ方をしています。
このスピーチの時に、対するMcCain(マケイン)は、オハイオ州のドイツビレッジにあるドイツレストランで、「マケイン流のドイツ経験」を行っています。彼は、「自分は大統領になってからドイツでスピーチを行なう。今は、石油価格と物価の上昇など国内で山積している問題に取り組むことが重要」と、オバマのベルリン・スピーチを強烈に皮肉っています。もちろん、彼のコメントは、多くの米国民が確かに感じていることで、彼のアプローチは決して間違っていません。ただし、ここでわざわざ同じ日にドイツレストランに足を運んで、オバマを批判することによって、メディアや一般の関心を買おうとする態度が、大統領候補として何とも情けない、そんな反応が聞こえてきます。YouTubeのマケインのヴィデオを見て、「即座にマケインのキャンペーン戦略家を首にすべきだ」というコメントもありましたが、私も同感です。 ドイツのDer Spiegelは、論説記事のヘッドラインに「No. 44 has spoken(44代目の大統領が話した)」と題して、まだ大統領として選ばれていないオバマを44代目の大統領として、大きく報道しています。記事では、米国とヨーロッパの意見や政策の違いを認めながら、連帯と協調を主張するオバマを、「彼は米国のみならず、世界の大統領を目指すほど野心的である。傲慢で世界を力で圧倒しようとするテキサススタイルのブッシュは昨日、誰もが世界を救うためにブラザーでありたいと思う"ユートピア"を目指すオバマは今日。」と語り、「25歳年上のマケインが勝つことは想像できない」と言い切り、「オバマの今後をヨーロッパは注意深く見つめていく」と結んでいます。
7月22日に発表されたThe Telegraphの調査によれば、ドイツ人の間では、オバマは67%、マケインは6%と、オバマは圧倒的な支持を取り付けています。
Obama(オバマ)の海外視察はどんどん進行しています。 アフガニスタン、クウェート、イラク、ヨルダン、イスラエルと、彼の行く先々での写真やヴィデオは、かなり大きなヴィジュアルインパクトを与えています。もちろん、彼が米軍兵士とバスケットボールをしてシュートを決めたシーンだけではありません。アフガニスタン大統領、イラク大統領、イラク首相、ヨルダン国王、イスラエル大統領、パレスチナ自治政府大統領、さらにおのおの国の国家安全保障担当者たちや米軍の最高司令官や指揮官、という各国の要職の人たちとの会見、またイスラエルのホロコーストミュージアムでの献花と、最新の映像は連続技で送られてきます。会見内容もしかりですが、そのヴュジュアルインパクトは、かなり大きく、米国民は、改めて、彼が米国大統領に選ばれた時のイメージをそこに投影しています。 今回の視察では、セキュリティの関係で、メディアの自由な取材が許可されておらず、オバマ陣営および米軍関係者が提供する映像やインタビューだけが、パブリックがアクセスできるものです。メディアには、こうした取材の不自由さもさることながら、ジャーナリストたちに、取材時のドレスコードまで通達されています。アラブ世界における服装に関する常識は誰でも当然心得ているものですが、今回は、女性ジャーナリストには、タンクトップとマニキュアはダメ(女性たちはタンクトップはわかるが、なぜマニキュアまでダメなのか理解に苦しむと発言しています)、男女に関わらず「グリーン」の服の着用を避けて欲しいとアドバイスしています。この「グリーン」に関しては、「Hamasの関係したもの」とみなされる色であるという釈明に、「グリーン」はイスラムの色でもあるので、オバマ陣営は神経質すぎると反発するジャーナリストやブロガーの声も聞こえます。 オバマ陣営は、この中近東訪問のために、300人近い軍事専門家・国家安全保障の有識者たちをアドバイザーとして迎えて、おのおのの国を最も熟知している人たちの助言をもとに、綿密に計画して、実施しています。5カ国の軍事や国家安全保障の高官たちとの会見でも、そうした有識者たちが必ず会見に参加して、オバマがこの視察で「ミスステップ」を踏まないように、「直接現地の人たちと会話が出来る」舞台を作り上げています。 出発前に、メディアや有識者からこの視察に関して、「一つの発言が命取りになる可能性があるので、危険すぎる」、「経済問題で苦しむ国民の反発を買う」など、多くの批判を耳にしました。ただし、結果、20日のエントリのように、イラク首相からのオバマの撤退プランの支持表明、ブッシュ政権の「将来のイラク撤退の具体性をにおわす発言」や「アフガニスタンに目を向けることを示唆する発言」などが矢継ぎ早に出て、オバマの中東政策や軍事安全保障の考えへの追い風となっています。 この間、McCain(マケイン)は、このオバマへのメディアの熱狂に対して、何とかその目を自分に向けさせようとして、数々の発言を繰り返していますが、相次ぐ「失言」とお門違いなオバマへの攻撃的な発言で、メディアはかなり「あきれ果てている」といった感じです。彼はさまざまな失言を繰り返していますが、以下のような地理的な間違いが目立ち、メディアだけでなく、一般も、「思わず、彼の年齢による記憶違いか?」という、疑問もでてきています。
一昨日は、TimeのコメンテーターJoe Kleinが、マケインの「オバマは選挙に勝つためならば、戦争に負けても構わないと思っている」という発言に対して、大統領選に出馬する人間でこんな下劣な発言は過去自分が取材していて、聴いたことがないと、強烈な怒りを見せています。 マケインは、メディアのオバマへのカバレッジの多さと好感度に不満を漏らして、「メディアがオバマに好意的すぎる」と批判しています。ただし、彼は過去の大統領選、および今回の共和党の大統領予備選までは、「Mavericks(マヴェリクス:一匹狼)」と呼ばれて、「メディアが自分の基盤だ」と発言するくらいメディアと良い関係を構築していました。今回のマケインの不満に対して、メディア側は、「マケインには注目するネタやエキサイトメントがないからだ」とシンプルに反論してます。すでにマケインが展開してるタウンホールミーティングの注目度は極端に低下しており、1昨日も2社しかメディアが参加しないというほどのひどさです。 「オバマ現象・オバマ革命」といわれるほど、アイコン化したオバマ相手に、マケインが何とかメディアカバレッジを勝ち取ろうと必死です。このあせりがさまざまな失言や失敗を招いて、ますますマケインの「Desperate(必死)な状態」が逆に目立っています。マケインは、イラクが安定してきたのはマケインが支持したブッシュ政権の「米軍増強策」によるもので、これをオバマが反対していたと、オバマを猛烈に批判しています。メディアおよび一般の反応は、「過去のことばかり言及するよりは、未来の撤退を論議することがより大切だ。その実施の可能性の有無は別にして、オバマの16ヶ月以内の米軍撤退案をイラク首相が支持したことのほうが重要だ」という風に流れています。マケインは、「スンニ派が、アルカイダに対して戦いを開始した(Anbar Awakening)のは、米軍増強策によってである(実際は増強策の発表の4ヶ月間前から始まっていた)」という、「米軍増強策」の時系列の理解も間違えており、ますます、彼に対する「信頼性」が低下しています。 ヴィジュアル面でも、マケインの最新映像は、「84歳のブッシュ元大統領と、彼の別荘で、元大統領が運転するゴルフカートに乗って、マケインが登場する」というもので、若くフレッシュなオバマの海外視察と好対照で、72歳(8月29日誕生日)のマケインの年齢を際立たされる映像でした。特にアメリカでは、通常ゴルフをする場合は、自分でカートを引っ張ります。またゴルフカートは、歩行困難なシニアが、コミュニティの中の移動に使用しており、この映像は、マケインの年齢を痛烈にメッセージとして送っています。ヴィジュアルインパクトは、文字とは異なり、視聴した時のみならず、意識化に「イメージ」として組み込まれて、長く残ります。その意味でも、私がマケインキャンペーンのマーケティング担当者であるならば、思わず「これは痛い」とつぶやいたと思います。 Obama(オバマ)のアフガニスタン視察=「ハイスコアなHoop(フリースローシュート)」
48時間しか経っていないオバマの海外視察は、共和党が本当に恐れるほどの、「ホームラン級」のトリップになりそうです。すでに、昨日のエントリで触れましたが、イラクの首相が、「オバマの米軍のイラク撤退16ヶ月プラン」を、「正しいタイムテーブル」と支持して、共和党がパニクるほどの大きなスコアを稼いでいます。さらに彼が当初から主張したアフガン中心のテロ対策に、ブッシュ政権もいやおうなしに認める風向きが見え始めてきている中、彼は、アフガニスタン大統領Hamid Karzai に会って、アフガンの国境沿いの危険性をインタビューで語っています。また、実際に前線の米軍兵士たちに会って、直接会話を交わして、大歓迎を受けています。特に、彼が兵士たちと一緒にバスケットボールをした時、彼がすかさず放ったシュート「Hoop」は、見事に決まり、大歓声を浴びています。 オバマがエクササイズやバスケットボールに費やす時間は、かなりのものらしく、ジムでのトレーニングは毎日欠かさず、時には日に2回、さらにそれに加えてバスケットボールもプレイするというハードなエクササイザーです。彼はパブリックに公開されるシュートシーンでは、必ず見事な「Hoop」を決めますが、やはりこれは練習の賜物のようです。オバマの不思議さは、バスケットボールで、激しく動いても、汗をかかないという点で、MSNBCは、やはり彼は「Cool」だと表現しています。 米国の大統領選の関心は、大統領候補者として初めて海外視察に出発したObama(オバマ)に注がれています。メディアは、まるでロックスターの追っかけのごとく、オバマの一挙一動*を追っています。セキュリティの問題から、オバマの今回の海外視察のスケジュールは公表されていませんが、彼が3時間前にアフガニスタンに入ったことが、映像とともにリリースされました。McCain(マケイン)陣営の「政治的アクションに過ぎない」という非難もどこ吹く風で、メディアは良く悪くもオバマの初の海外視察のリスクとアドバンテージを、行く前から記事ネタとして大いに書き立てて、追っかけ状態を継続しています。
*ちなみに、6月以来、オバマとマケインのネットワークTV局のカバレッジは、オバマ114分、マケイン48分と圧倒的にオバマに偏っています。マケインのメディアのカバレッジは、彼がオバマについて発言した時や失言・失敗の際に取り上げられるという始末で、彼が常にオバマについて話さなければならないのは、ある種のメディア対策でもあります。 そんな状況下で今朝のトップニュースは、Nuri al-Malikiイ ラク首相が、ドイツの雑誌のインタビューで、オバマの16ヶ月以内にイラクから米国軍を撤退させるというプランは、「多少の変更はあっても、妥当なタイムラインだ」と支持する初のコメントを出したことです。イラク首相は、「米軍の撤退は可能な限り早く行うのが望ましいし、イラク軍の自立のためにも米軍の増強策は歓迎できない」と答えており、ブッシュ政権、およびマケインにとっては、かなり痛いコメントです。 クリントンを破って民主党の候補者となって以来、オバマは、予備選挙の時に掲げた政策の中で、公的資金の不採用に始まって、銃規制、最高裁の死刑判決、FISA、NAFTA、中絶問題などへの意見を変化させて、「Center(中道)寄りにシフトした」として、リベラル勢力から猛反発を食らっています。また、メディアやブログ圏からも、マケインもそうですが、オバマの中道寄りに見える態度の変化は、「Flip-Flop(突然の政策変換)」として大きく非難されています。リベラルでオバマ支持であった政治ブログ「Huffington Post」は、本選挙向けに、無党派層、民主党寄りの共和党支持者、意思決定をしていない有権者を取り込むために、中道路線に傾くことは、「オバマ・ブランドのAuthenticity(オーセンティシティ:本物であること)」を傷つけることで、今まで彼を支えていた多くの若年層やリベラル勢力の期待を裏切ったとして大きく非難しています。 オバマは、彼の最も強いStrength(強み)である「イラク戦争に最初から反対した」というスタンスに基づいて、「16ヶ月以内に米軍撤退」というプランを、予備選挙中に発言して、有権者から大きな支持を集めました。その後候補者となって、そのプランを非現実的だとして疑問視する意見が出始めると、「実際に米国軍の幹部から話を聴いて、改めてプランを見直す可能性がある」と発言してしまい、それ以来、オバマへの非難は大きく高まっていました。そんな中で、このイラク首相のオバマプランへの支持は、彼にとっては追い風といえます。 6月26日から29日に実施されたCNNの調査によれば、「イラク戦争」に賛成する人は30%、反対する人は68%と、イラク戦争への疑問と不満は増大しています。マケインは、当初、第2次世界大戦後の日本への米軍駐留、朝鮮戦争後の韓国への米軍駐留を例にひいて、イラクへの米軍駐留は100年かかっても、勝利のためならば厭わないと発言して大きな反発を招きました。彼はその後、その発言を無視するかのように、自分の大統領任期終了までには撤退すると大きく方向転換していることを考えると、このイラク首相のオバマプランの支持は、政治的インパクトが大きい発言といえます。 オバマのテロ対策の大きな柱は、予備選挙の時から「アフガニスタンに潜むアルカイダ勢力」へのフォーカスにありました。イラク戦争はブッシュ政権によるミスリード・ミスガイドで、米国は本来アフガニスタンに注力すべき軍事力(人員と費用)を無駄にしたという彼の主張は、今回の最初の海外視察をアフガニスタンに選んだことでも明解です。賛否両論を招き、危険な賭けとも言われている「大統領候補としての初の海外視察」は、意外にもイラクからの風で、まずは順風満帆に滑り出したようです。 |
大柴ひさみ日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」 Categories
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