ひさみをめぐる冒険
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ひさみをめぐる冒険
サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



マケインのオバマ攻撃の広告:「オバマは、リーダーではなく、パリス・ヒルトンやブリットニー・スピアーズと同じ単なるセレブレティである」

7/31/2008

 
海外視察から戻ったObama(オバマ)を、政治アナリストや批評家は、「オバマは大統領になったような態度をしている」、「生意気だ」、「自信過剰だ」という、なかなか辛らつな言い方で論評しています。これには、毎日発表される各社の候補者の支持率調査の数字が関係していると思います。各社の支持率調査を取りまとめて平均値を出するPollster.comによれば、以下のグラフが示すように、7月30日現在では、全米レベルの支持率は、オバマが46.9%、マケインが42%です。

これは、以下のように各社の調査を毎日トラックダウンして平均値を割り出したものです。

  • Gallup(7/28-30):オバマ45、マケイン44
  • Economist/YouGov(7/28-29):オバマ44、マケイン37
  • CNN(7/27-29):オバマ51、マケイン44
  • Rasmussen(7/26-28):オバマ47、マケイン46
  • Research 2000(7/25-27):オバマ51、マケイン39
  • Gallup(7/25-27):オバマ48、マケイン40
  • USA Today/Gallup(7/25-27):オバマ45、マケイン49
  • Rasmussen(7/23-25):オバマ49、マケイン43

USA Today/Gallupだけが、マケインが4ポイントリードとなっていますが、それ以外はどの調査もオバマが最小1ポイント、最大12ポイントまでリードしています。この数字を見て、メディアやアナリストが指摘するのは、「なぜオバマは、マケインを大きくリードできないのか?」という点です。この調査は、時期的にはオバマの海外視察中あるいは終了後です。その間、米国内で失言を繰り返していたマケインを、ベルリンで20万人の観衆を熱狂させて、世界中のメディアの注目を集めて派手なパフォーマンスを行なったオバマが、なぜ大きく引き離せないのか?

マスメディアは、この点をオバマの問題点と指摘しており、メディアが騒ぐほど、オバマはまだ米国民一般にリーチアウトできていないと分析しています。ただし、今の時点での支持率調査を、11月の本選挙の結果と関連付けるのは時期尚早です。特に、今は夏のバケーションシーズンで人々の関心が選挙に薄い時期ですし、両候補者は副大統領候補をまだ選んでおらず、さらに党大会前の数字なので、まだまだ当てになりません。これは、言ってみれば、あくまでも2人の候補者の日々のパフォーマンスを採点する成績表のようなものです。

そんな中で、昨日大いに話題となったのが、マケインの広告です。「オバマは、Britney Spears(ブリットニー・スピアーズ)やParis Hilton(パリス・ヒルトン)のようなセレブレティと同じで、話すだけでアクションを起さない。彼は世界のセレブかもしれないが、アメリカをリードする人間ではない」として、さらに、「オバマは、米国沿岸の石油採掘に反対、新しい税金を提案、税金を上げる、輸入石油を奨励」と、事実とは異なる内容を列挙して締めくくっています。

私が感心したのは、この広告の応酬が、数時間のうちに行なわれたという、そのスピードです。候補者自身もそうですが、制作スタッフやストラテジスト(戦略担当者)も含めて、キャンペーン全体の意思統一がきちんとなされていなければできないことで、オバマキャンペーンの底力を感じます。かつて、私は日本の広告代理店の在籍時に、15秒や30秒のCM制作にかなりの時間とお金を費やしたかを考えると、隔世の感があります。もちろん「YouTube時代」ですので、このスピードがなければ、キャンペーンを成功させることは出来ませんが、一度制作した広告は、高い媒体費を払わなくても、すぐにYouTubeにあげて、それをネットワークTVやケーブルTV局がニュースとして放送するので、非常に安価で効率的であることも大きなポイントです。

マスメディアもブログ圏でも、マケインキャンペーンのこうしたネガティブな攻撃の開始が、いくらなんでも早すぎると論評しています。この「マケインのあせり」については、じっくりまたエントリします。


メディア、ブログ圏、一般も含めて、このネガティブな広告には、疑問と反発が生まれています。マケインキャンペーンは、オバマ攻撃によって、関心を惹くことに注力しており、攻撃内容は事実とかけ離れても、お構いなしで、ひたすらオバマのイメージを壊す、あるいはミスガイドしようとするスタンスです。彼のキャンペーンメッセージは、端的に言えば「Don't vote Obama(オバマに投票するな)」ということで、マケイン自身の強みや政策に言及していません。この広告を見たオバマ自身の反応も、「マケインは、どうやら自分自身に対するポジティブなことを何も言わずに、私のことばかりを話している。あなたたちは、マケインに、彼自身が何をしようとしているのかを聞く必要がある」と、語っています。

このマケインの広告へのオバマ陣営のカウンター広告は、昨日のNY Timesの論説コラムのタイトルからとった「Low Road Express」です。マスメディアも指摘するマケインのネガティブなオバマ攻撃を例に出して、基本的にマケインは政策も政治キャンペーンもブッシュ政権と同じで典型的な従来の政治家であると結論付ける広告です。

「オバマのスピーチ」:ベルリンの熱狂と米国の反応

7/25/2008

 
昨日のObama(オバマ)のベルリンのスピーチは、20万人以上人々が参加する、大きな政治的なシーンとなりました。ドイツでは本当に珍しい「USA」のチャント(掛け声)や星条旗が振られ、オバマキャンペーンのテーマ「Yes, We Can!」が叫ばれるなど、ベルリンの熱狂は、ブランデンブルク門の近くの戦勝記念公園にこだましたようです。
昨日のエントリのヴィジュアルインパクトではありませんが、このマケインのドイツレストラン訪問とオバマのベルリンスピーチの差は歴然としています。マケインには、オバマが予備選の候補者として勝利した6月3日に、「Green Monster(ライムグリーンのバックグランドのステージでさえないスピーチをして多くの失望を買った)」と呼ばれる舞台設定をミスったスピーチもあります。マケインキャンペーンは、真剣に彼の良さを演出するやり方を考えないと、こうしたミスはボディブローのように、彼のイメージを弱体化させます。共和党には、まともにマーケティングの見地からものを考えられる人はいないのか?と、私は大いに驚いています。
ただし、この「ベルリンの熱狂」と、米国の反応は、微妙な温度差があり、米国内では賛否両論の受け止められ方をしています。

  • 多くのコメンテータは、これは、オバマの愛国心と人道主義のバランスがうまく取れたスピーチで、彼の最大の武器である「雄弁」を最大限に活かして、観衆を飽きさせる漠然としたテーマ(世界平和への連帯と協調、人種・宗教・民族による分離された壁の撤去など)を、真摯に受け止めさせて、成功を収めたと評価しています。
  • ただし、「オバマの大統領候補ではなく市民としての発言」は、「オバマ個人の視点」であり、政治的パフォーマンスとして、シニカルに見る有識者もいます。
  • NY Timesは、「オバマのイラクとアフガンの政策に関して、ドイツ政府とパブリックは、ポジティブ過ぎるリアクションだ」という指摘して、オバマがドイツで人気があるのは、「オバマがブッシュではないから」だと「アンチブッシュとしてのドイツ」を説明しています。


このスピーチの時に、対するMcCain(マケイン)は、オハイオ州のドイツビレッジにあるドイツレストランで、「マケイン流のドイツ経験」を行っています。彼は、「自分は大統領になってからドイツでスピーチを行なう。今は、石油価格と物価の上昇など国内で山積している問題に取り組むことが重要」と、オバマのベルリン・スピーチを強烈に皮肉っています。もちろん、彼のコメントは、多くの米国民が確かに感じていることで、彼のアプローチは決して間違っていません。ただし、ここでわざわざ同じ日にドイツレストランに足を運んで、オバマを批判することによって、メディアや一般の関心を買おうとする態度が、大統領候補として何とも情けない、そんな反応が聞こえてきます。YouTubeのマケインのヴィデオを見て、「即座にマケインのキャンペーン戦略家を首にすべきだ」というコメントもありましたが、私も同感です。
ドイツのDer Spiegelは、論説記事のヘッドラインに「No. 44 has spoken(44代目の大統領が話した)」と題して、まだ大統領として選ばれていないオバマを44代目の大統領として、大きく報道しています。記事では、米国とヨーロッパの意見や政策の違いを認めながら、連帯と協調を主張するオバマを、「彼は米国のみならず、世界の大統領を目指すほど野心的である。傲慢で世界を力で圧倒しようとするテキサススタイルのブッシュは昨日、誰もが世界を救うためにブラザーでありたいと思う"ユートピア"を目指すオバマは今日。」と語り、「25歳年上のマケインが勝つことは想像できない」と言い切り、「オバマの今後をヨーロッパは注意深く見つめていく」と結んでいます。

7月22日に発表されたThe Telegraphの調査によれば、ドイツ人の間では、オバマは67%、マケインは6%と、オバマは圧倒的な支持を取り付けています。

  • オバマ支持:67%
  • マケイン支持:6%
この数字は今後さらに上昇すると思いますが、今回のオバマのドイツ訪問は、有名な1963年のJFKの「Ich Bin Ein Berliner」のスピーチや、1987年のレーガンの「Tear Down This Wall」のスピーチに熱狂したドイツを思い起こさせます。

ケイマン諸島の「租税回避地」に、米国の年間税収の1000億ドル(10兆5000億円)が埋まっている

7/25/2008

 
この数字は凄い、思わずため息をつきました。

今朝のAP報道によれば、、ケイマン諸島の「Tax Haven*(租税回避地)」には、1万8857の企業があり、そのうちの半分は、米国所有、米国が請求先住所、あるいはそれ以外の米国関連企業です。ここで米国は、なんと年間1000億ドルの税収を、失っているというリアリティです。これは、GAO(Government Accountability Office)が、Senate Finance Committeeに、調査報告した数字ですが、これは上院議員たちに、何とかしてもらわなければならない大事な税収です。

過去にも、何度もこの問題は、様々な人たちが問題視して、俎上にあげていますが、政府がこの問題にシリアスに、メスを入れた話はきいたことがありません。ずいぶん昔になりますが、私が2002年に書いた「エンロン問題」のコラムでも、以下のようにエンロンはケイマン諸島881の子会社を設立して5年間収益なしとして無税申告して、米国政府から還付金として3億8300万ドルを受け取るという凄さです。

「エンロンの企業体質を表す例としてわかりやすいのが、その税金対策です。アメリカの多くの企業が行っている税金逃れの古典的な手法で、租税回避地(外国の島々)に子会社を持ち所得税をゼロにするやり方です。2000年10月フォーチュン500の半数の企業を対象に調べた「市民による公正な税金のための調査」によると、1996年16社、1997年17社、1998年24社が、子会社を税金天国に設立して無税申告をしています。エンロンの場合は、その数の多さが尋常ではなく881の子会社をつくり、過去5年間4回を収益なしとして報告して無税扱いとなり、さらに政府から還付金として3億8,200万ドルが返還されています。ケイマン諸島に692、トルコとカイコスに119、マルティネスに48、バミューダに8と、まるで乱開発されたリゾートホテルのように税金逃れのパートナー企業を各島々に設立しています。仕組みは意外とシンプルで、利益を米国法律下にないパートナー企業へ送り、パートナーが手数料をとった後おカネがエンロンに戻されるというもので、この場合は米国の所得税申告の対象外になります。」

今朝のこの数字を見ながら、いかに政府が企業の税金逃れに甘いかを痛感しています。米国は、今、以下のような問題を抱えています。

  • 底なしの不安を抱えながら解決を模索するサブプライム問題、
  • 輸入石油依存の泥沼から脱出できずにドンドン上がるガソリン価格
  • 石油価格上昇がトリガーになって上昇する物価・失業率
  • ダウの平均工業指数低下と平行して低下する消費者自信指数


NBC/WSJの調査では、アメリカ人の74%は「米国は悪い方向に向かっている」と回答しています。こうした経済的にかなりダメージを受けているアメリカにおいて、「この企業の税金天国」にみられる「税金の不平等」は、許せないものがあります。マイクロビジネスですが、ビジネスオーナーとして、税金を払うことに苦労している私は、これには怒りを感じます。

アップデイト:「Tax Haven」の日本語訳の「税金天国」が間違っているという指摘を受けて、「租税回避地」と表現を訂正しました。


「オバマの中東訪問のヴィジュアルインパクト」 vs. 「マケインの失言とゴルフカート」

7/24/2008

 
Obama(オバマ)の海外視察はどんどん進行しています。

アフガニスタン、クウェート、イラク、ヨルダン、イスラエルと、彼の行く先々での写真やヴィデオは、かなり大きなヴィジュアルインパクトを与えています。もちろん、彼が米軍兵士とバスケットボールをしてシュートを決めたシーンだけではありません。アフガニスタン大統領、イラク大統領、イラク首相、ヨルダン国王、イスラエル大統領、パレスチナ自治政府大統領、さらにおのおの国の国家安全保障担当者たちや米軍の最高司令官や指揮官、という各国の要職の人たちとの会見、またイスラエルのホロコーストミュージアムでの献花と、最新の映像は連続技で送られてきます。会見内容もしかりですが、そのヴュジュアルインパクトは、かなり大きく、米国民は、改めて、彼が米国大統領に選ばれた時のイメージをそこに投影しています。
今回の視察では、セキュリティの関係で、メディアの自由な取材が許可されておらず、オバマ陣営および米軍関係者が提供する映像やインタビューだけが、パブリックがアクセスできるものです。メディアには、こうした取材の不自由さもさることながら、ジャーナリストたちに、取材時のドレスコードまで通達されています。アラブ世界における服装に関する常識は誰でも当然心得ているものですが、今回は、女性ジャーナリストには、タンクトップとマニキュアはダメ(女性たちはタンクトップはわかるが、なぜマニキュアまでダメなのか理解に苦しむと発言しています)、男女に関わらず「グリーン」の服の着用を避けて欲しいとアドバイスしています。この「グリーン」に関しては、「Hamasの関係したもの」とみなされる色であるという釈明に、「グリーン」はイスラムの色でもあるので、オバマ陣営は神経質すぎると反発するジャーナリストやブロガーの声も聞こえます。

オバマ陣営は、この中近東訪問のために、300人近い軍事専門家・国家安全保障の有識者たちをアドバイザーとして迎えて、おのおのの国を最も熟知している人たちの助言をもとに、綿密に計画して、実施しています。5カ国の軍事や国家安全保障の高官たちとの会見でも、そうした有識者たちが必ず会見に参加して、オバマがこの視察で「ミスステップ」を踏まないように、「直接現地の人たちと会話が出来る」舞台を作り上げています。

出発前に、メディアや有識者からこの視察に関して、「一つの発言が命取りになる可能性があるので、危険すぎる」、「経済問題で苦しむ国民の反発を買う」など、多くの批判を耳にしました。ただし、結果、20日のエントリのように、イラク首相からのオバマの撤退プランの支持表明、ブッシュ政権の「将来のイラク撤退の具体性をにおわす発言」や「アフガニスタンに目を向けることを示唆する発言」などが矢継ぎ早に出て、オバマの中東政策や軍事安全保障の考えへの追い風となっています。

この間、McCain(マケイン)は、このオバマへのメディアの熱狂に対して、何とかその目を自分に向けさせようとして、数々の発言を繰り返していますが、相次ぐ「失言」とお門違いなオバマへの攻撃的な発言で、メディアはかなり「あきれ果てている」といった感じです。彼はさまざまな失言を繰り返していますが、以下のような地理的な間違いが目立ち、メディアだけでなく、一般も、「思わず、彼の年齢による記憶違いか?」という、疑問もでてきています。

  • チェコスロバキアの国名:1993年にチェコ共和国とスロバキア共和国に分離した国を、過去、何度もチェコスロバキアと発言。7月、6月の連続2ヶ月もこの間違いを繰り返しており、彼の最新のヨーロッパ諸国への理解を疑問視されている。
  • イラクとパキスタンを取り違える:オバマのアフガニスタン訪問時にTVにインタビューされて、「アフガニスタンとイラクの国境」と発言して、最もホットなトピックスを間違えたので、周囲は困惑している。過去にもイラク訪問時に「スンニ派とシーア派」を取り違えたり、イランとアルカイダを直接結びつけるなど、重要な問題への失言で、彼の信頼性に関する疑問がでている。


一昨日は、TimeのコメンテーターJoe Kleinが、マケインの「オバマは選挙に勝つためならば、戦争に負けても構わないと思っている」という発言に対して、大統領選に出馬する人間でこんな下劣な発言は過去自分が取材していて、聴いたことがないと、強烈な怒りを見せています。

マケインは、メディアのオバマへのカバレッジの多さと好感度に不満を漏らして、「メディアがオバマに好意的すぎる」と批判しています。ただし、彼は過去の大統領選、および今回の共和党の大統領予備選までは、「Mavericks(マヴェリクス:一匹狼)」と呼ばれて、「メディアが自分の基盤だ」と発言するくらいメディアと良い関係を構築していました。今回のマケインの不満に対して、メディア側は、「マケインには注目するネタやエキサイトメントがないからだ」とシンプルに反論してます。すでにマケインが展開してるタウンホールミーティングの注目度は極端に低下しており、1昨日も2社しかメディアが参加しないというほどのひどさです。

「オバマ現象・オバマ革命」といわれるほど、アイコン化したオバマ相手に、マケインが何とかメディアカバレッジを勝ち取ろうと必死です。このあせりがさまざまな失言や失敗を招いて、ますますマケインの「Desperate(必死)な状態」が逆に目立っています。マケインは、イラクが安定してきたのはマケインが支持したブッシュ政権の「米軍増強策」によるもので、これをオバマが反対していたと、オバマを猛烈に批判しています。メディアおよび一般の反応は、「過去のことばかり言及するよりは、未来の撤退を論議することがより大切だ。その実施の可能性の有無は別にして、オバマの16ヶ月以内の米軍撤退案をイラク首相が支持したことのほうが重要だ」という風に流れています。マケインは、「スンニ派が、アルカイダに対して戦いを開始した(Anbar Awakening)のは、米軍増強策によってである(実際は増強策の発表の4ヶ月間前から始まっていた)」という、「米軍増強策」の時系列の理解も間違えており、ますます、彼に対する「信頼性」が低下しています。

ヴィジュアル面でも、マケインの最新映像は、「84歳のブッシュ元大統領と、彼の別荘で、元大統領が運転するゴルフカートに乗って、マケインが登場する」というもので、若くフレッシュなオバマの海外視察と好対照で、72歳(8月29日誕生日)のマケインの年齢を際立たされる映像でした。特にアメリカでは、通常ゴルフをする場合は、自分でカートを引っ張ります。またゴルフカートは、歩行困難なシニアが、コミュニティの中の移動に使用しており、この映像は、マケインの年齢を痛烈にメッセージとして送っています。ヴィジュアルインパクトは、文字とは異なり、視聴した時のみならず、意識化に「イメージ」として組み込まれて、長く残ります。その意味でも、私がマケインキャンペーンのマーケティング担当者であるならば、思わず「これは痛い」とつぶやいたと思います。

よりエコロジカルに:商業化ベースの「ゴミからエタノール燃料生成プラント」

7/20/2008

 
私の住むサンフランシスコ・ベイエリアは、シリコンバレーを含む地域で、常にアドベンチャーを求めて、「Risk Taking」をする、野心満々の人たち(移民や外国人)が、互いにInspireしながら、新しいモノやサービス、さらに文化をクリエイションする土地柄です。また太平洋に向って開かれたこのエリアは環境問題にも敏感で、よりエコフレンドリーなテクノロジー・ビジネス・製品への欲求が高い点でも有名です。

そんなベイエリアのPleasantonにバイオテクノロジーの会社Fulcrum BioEnergyが、初の商業ベースで、「家庭内のごみからエタノール燃料をつくるバイオ燃料プラント」を、ネヴァダ州のRenoから10マイル離れたところに建設することを発表しました。このプラントでは、2010年までに、毎年家庭から出される9万トンのごみを精製して、1050万ガロンのエタノールをつくりだすという計画です。プラントの創設費用は、1億2000万ドルですが、なるべくこの費用を抑えて、エタノールの価格を1ガロン1ドル以下に押さえることを目標にしています(現在のこの会社の製造するエタノール価格は1ガロン2.40ドル)。

このゴミは通常はただそのままゴミ捨て場の土地に捨てられるものなので、「ゴミ処理問題の解決」、「継続的利用な燃料」、「低価格」、「エコフレンドリー」という、、「1石4鳥」のアイディアといえます。

米国では、バイオエタノール燃料は、コーンから生成されていますが、政府のバイオエタノール奨励政策で、農家には1ガロンのエタノール生成につき51セントの補助金が支給されるために、農家は食品としてではなくエタノール用にコーンを作ることにフォーカスし始めています。そのためコーンの農産物としての価格が上昇しています。2008年のコーンの収穫の34%はエタノール燃料に使用されると予測されており、農産物価格は25%も増加するとも推測する専門家もいます。米国の2007年のエタノール燃料の生産量は70億ガロンで、今年は130億ガロンにまで達するといわれており、政府は2015年までに150億ガロンのエタノール生産を目標としています。米国では、エタノール燃料なしでは1ガロンにつき20から35セントのガソリン価格増となるので、米国の年間ガソリン消費量1400億ガロンを考えると、エタノール燃料によって、280億ドルから490億ドルのセービングとなります。こうしたエタノールの役割を考えると、単純にコーンの農産物価格上昇に不満を漏らすことはできません。

「家庭内のゴミ」は、どうやっても必ず出てくるものです。これをなるべく家庭から近い場所で、「エタノール」に変えられるとしたら、「ゴミの輸送」のエネルギーが軽減して、ここでもガソリン消費が減っていきます。とにかくさまざまな知恵を絞って、よりエコロジカルにエネルギー消費が出来る工夫は、これからのビジネス経営に必須な要素です。これが抜けたビジネス戦略は、消費者も納得しないビジネスとなります。経営レベルから始まって、マーケティング、顧客サービスなど、企業が全社レベルで、この課題に取り組む、この意識がよりクリエイティブなアイディアを生んで、ビジネスの成功につながっていくと思います。簡単ではありませんが、チャレンジしなければならないことです。


オバマの48時間のアフガンニスタン滞在は、今のところ見事な「Hoop」で、ハイスコアを稼いでいます

7/20/2008

 
Obama(オバマ)のアフガニスタン視察=「ハイスコアなHoop(フリースローシュート)」

48時間しか経っていないオバマの海外視察は、共和党が本当に恐れるほどの、「ホームラン級」のトリップになりそうです。すでに、昨日のエントリで触れましたが、イラクの首相が、「オバマの米軍のイラク撤退16ヶ月プラン」を、「正しいタイムテーブル」と支持して、共和党がパニクるほどの大きなスコアを稼いでいます。さらに彼が当初から主張したアフガン中心のテロ対策に、ブッシュ政権もいやおうなしに認める風向きが見え始めてきている中、彼は、アフガニスタン大統領Hamid Karzai に会って、アフガンの国境沿いの危険性をインタビューで語っています。また、実際に前線の米軍兵士たちに会って、直接会話を交わして、大歓迎を受けています。特に、彼が兵士たちと一緒にバスケットボールをした時、彼がすかさず放ったシュート「Hoop」は、見事に決まり、大歓声を浴びています。

オバマがエクササイズやバスケットボールに費やす時間は、かなりのものらしく、ジムでのトレーニングは毎日欠かさず、時には日に2回、さらにそれに加えてバスケットボールもプレイするというハードなエクササイザーです。彼はパブリックに公開されるシュートシーンでは、必ず見事な「Hoop」を決めますが、やはりこれは練習の賜物のようです。オバマの不思議さは、バスケットボールで、激しく動いても、汗をかかないという点で、MSNBCは、やはり彼は「Cool」だと表現しています。

オバマの「16ヶ月以内にイラクから米軍撤退プラン」をイラク首相が支持

7/19/2008

 
米国の大統領選の関心は、大統領候補者として初めて海外視察に出発したObama(オバマ)に注がれています。メディアは、まるでロックスターの追っかけのごとく、オバマの一挙一動*を追っています。セキュリティの問題から、オバマの今回の海外視察のスケジュールは公表されていませんが、彼が3時間前にアフガニスタンに入ったことが、映像とともにリリースされました。McCain(マケイン)陣営の「政治的アクションに過ぎない」という非難もどこ吹く風で、メディアは良く悪くもオバマの初の海外視察のリスクとアドバンテージを、行く前から記事ネタとして大いに書き立てて、追っかけ状態を継続しています。

*ちなみに、6月以来、オバマとマケインのネットワークTV局のカバレッジは、オバマ114分、マケイン48分と圧倒的にオバマに偏っています。マケインのメディアのカバレッジは、彼がオバマについて発言した時や失言・失敗の際に取り上げられるという始末で、彼が常にオバマについて話さなければならないのは、ある種のメディア対策でもあります。

そんな状況下で今朝のトップニュースは、Nuri al-Malikiイ ラク首相が、ドイツの雑誌のインタビューで、オバマの16ヶ月以内にイラクから米国軍を撤退させるというプランは、「多少の変更はあっても、妥当なタイムラインだ」と支持する初のコメントを出したことです。イラク首相は、「米軍の撤退は可能な限り早く行うのが望ましいし、イラク軍の自立のためにも米軍の増強策は歓迎できない」と答えており、ブッシュ政権、およびマケインにとっては、かなり痛いコメントです。

クリントンを破って民主党の候補者となって以来、オバマは、予備選挙の時に掲げた政策の中で、公的資金の不採用に始まって、銃規制、最高裁の死刑判決、FISA、NAFTA、中絶問題などへの意見を変化させて、「Center(中道)寄りにシフトした」として、リベラル勢力から猛反発を食らっています。また、メディアやブログ圏からも、マケインもそうですが、オバマの中道寄りに見える態度の変化は、「Flip-Flop(突然の政策変換)」として大きく非難されています。リベラルでオバマ支持であった政治ブログ「Huffington Post」は、本選挙向けに、無党派層、民主党寄りの共和党支持者、意思決定をしていない有権者を取り込むために、中道路線に傾くことは、「オバマ・ブランドのAuthenticity(オーセンティシティ:本物であること)」を傷つけることで、今まで彼を支えていた多くの若年層やリベラル勢力の期待を裏切ったとして大きく非難しています。

オバマは、彼の最も強いStrength(強み)である「イラク戦争に最初から反対した」というスタンスに基づいて、「16ヶ月以内に米軍撤退」というプランを、予備選挙中に発言して、有権者から大きな支持を集めました。その後候補者となって、そのプランを非現実的だとして疑問視する意見が出始めると、「実際に米国軍の幹部から話を聴いて、改めてプランを見直す可能性がある」と発言してしまい、それ以来、オバマへの非難は大きく高まっていました。そんな中で、このイラク首相のオバマプランへの支持は、彼にとっては追い風といえます。

6月26日から29日に実施されたCNNの調査によれば、「イラク戦争」に賛成する人は30%、反対する人は68%と、イラク戦争への疑問と不満は増大しています。マケインは、当初、第2次世界大戦後の日本への米軍駐留、朝鮮戦争後の韓国への米軍駐留を例にひいて、イラクへの米軍駐留は100年かかっても、勝利のためならば厭わないと発言して大きな反発を招きました。彼はその後、その発言を無視するかのように、自分の大統領任期終了までには撤退すると大きく方向転換していることを考えると、このイラク首相のオバマプランの支持は、政治的インパクトが大きい発言といえます。

オバマのテロ対策の大きな柱は、予備選挙の時から「アフガニスタンに潜むアルカイダ勢力」へのフォーカスにありました。イラク戦争はブッシュ政権によるミスリード・ミスガイドで、米国は本来アフガニスタンに注力すべき軍事力(人員と費用)を無駄にしたという彼の主張は、今回の最初の海外視察をアフガニスタンに選んだことでも明解です。賛否両論を招き、危険な賭けとも言われている「大統領候補としての初の海外視察」は、意外にもイラクからの風で、まずは順風満帆に滑り出したようです。

クリントンが負けた理由⑥「女性差別のカードを引いた」

7/19/2008

 
シリーズエントリです。6/11のエントリ「Clinton(クリントン)が負けた6つの理由」のうちの6番目、最後の項目です。

  1. Change vs. Experience(経験を盾にして、変革を求める米国民の声を読み間違えた)
  2. War Vote(イラク戦争開始への賛成投票。さらにそれが間違いであると認めなかったこと)
  3. Dysfunctional Campaign(戦略ミスと内部分裂で機能しなかったキャンペーン)
  4. Overconfidence(クリントンブランドへの過信)
  5. Bill Clinton(元大統領ビル・クリントンが巻き起こした舌禍)
  6. Sexism(女性差別のカードを引いた)

キャンペーンを開始した2007年当時のHillary Clinton(ヒラリー・クリントン)は、クリントンブランドへの自信から、あえて「初の女性大統領候補」としてのポジショニングを強調せずに、むしろそれを避けるかのように、彼女自身のキャリア、経験、資質などが、いかに大統領として適切であるかという点にフォーカスしたキャンペーンを展開していました。当時の一般のクリントンへの見方は、以下の有名なオバマサポーターの政治ヴィデオ「Vote Different」に代表されるように、むしろ性差を超えて、その「強さと冷たさ(=冷静さ)」が、彼女のイメージとして定着していました。
ヴィデオは、アップルの歴史的なマッキントッシュのCM「1984」のリミックスです。当時アップルはIBMを、この2007年の政治ヴィデオはクリントンを、Big Brother(独裁者)としてシンボライズして、アップルとオバマは、独裁者に立ち向かう挑戦者として描写されています。7月18日現在で530万3258のビューがあるほど、バイラル化して広まっていったヴィデオは、当時のクリントンとオバマの位置関係を如実に現しています。

この当時を振り返ると、多くのメディアも一般の有権者も彼女の絶対的な優位を確信していたので、クリントンが女性であることはもちろん認識していましたが、それが「男性社会で差別されている女性」という図式にはつながっていませんでした。また、彼女もことさら「女性としての性差」を持ち出して、男性中心社会で差別されているという被害者意識で、女性の有権者の共感を得る必要性は感じていない、そんなムードでした。

そんな彼女の自信は、1月の最初のアイオワの予備選挙における、オバマの劇的な勝利、自身はエドワーズに続いて3位となったことから、大きく崩れていきます。先頭を走る予定の走者がいきなり3位になり、さらにメディアの「オバマへの熱狂」は、彼女をドンドン追い込んでいきます。そうした彼女に追い討ちをかけるように、夫のビル・クリントン元大統領の「All-boys club(男性社会での女性の差別)」発言、さらに女性初の副大統領候補のGeraldine Ferarroの「オバマは黒人であるから大統領候補となれた。オバマやメディアはクリントンを女性差別している」という発言は、被害者意識の発露として見られていきます。特にFerarroの発言は、人種差別および女性差別を非常に感情的に表明した発言で、彼女がクリントンのサポーターとしての地位を離れても、彼女自身何度もメディアに登場して、クリントンの足を引っ張るがごとく、繰り返し「人種と性差の差別カード」を振り回しています。

クリントン自身は、アイオワ敗退の後に、支持者に囲まれた中で、選挙戦がいかに厳しいものであるかを語りながら、涙を流して、初めて「人間的な(=女性的)」な部分が見せたとして、女性有権者やメディアの大きな共感を得て、ニューハンプシャーで勝利しています。ただし、その後の候補者たちとのディベートで、彼女は「なぜいつも自分が最初にモデレイターから質問を受けるのか?オバマには誰も最初に尋ねない」という発言をし始めて、徐々に女性差別のニュアンスを、キャンペーンに持ち込んでいきます。

クリントンの熱狂的な女性支持者は、60歳以上で、多くの女性たちは、彼女たちの若い時代には、法的にも社会的にも男女同等の扱いを受けられなかった経験を持つ人たちです。彼女たちは、自分のたちが生きている間に「女性大統領」の出現があるとは思いもよらず、そうしたフェミニストたちはクリントンにその夢を託すという流れを生み出していきました。それに異を唱えたのが、若い世代の女性たちで、性差を持ち出すこと自体が逆にアンフェアだとしています。また、クリントン支持の男性有権者も「女性差別カード」を持ち出したことによって、従来のフェミニズム的なものへの反発となって、クリントン自身の個人の資質を疑うという結果をもたらしました。

政治でも、ビジネスでも、そうですが、本当に実力のある人たちは、当然のことながら、自分個人の資質で勝負します。そこに、人種、性差、年齢、家系など、自分では変えられない要素を持ち込んで、それを梃子にして他を説得しようとした場合、必ず反発が生まれます。クリントンへの批判の一つには、ビル・クリントン元大統領の妻として、ファーストレディの地位があったからこそ、大統領候補になれたという、自身の資質を越えた部分が大きな要素を占めるというものもあるくらいです。クリントンも、それは十分理解していたはずですが、思い通りに展開できなかったキャンペーンによって、追いかける立場になった途端に、意識化に潜んでいた「被害者意識」が持ち上がってしまったようです。

クリントン支持者に「なぜクリントンをサポートするのか?」と尋ねて、サポーターが「クリントンは女性だから」と答えたら、私がクリントンでしたら、大いに失望してしまいます。私は日頃から「男性中心社会だからこそ、女性がその中で一緒に働く場合は、大きなアドバンテージがある」と、答えています。「性差」を被害者意識ととるか、アドバンテージととるかは、その人次第です。

アル・ゴアが描写する米国「中国からの借金+ペルシャ湾の石油購入=石油を燃やして環境破壊」

7/18/2008

 
昨日のエントリに引き続き、今日も環境とエネルギーの話題です。昨日ワシントンで、ノーベル平和賞を受賞した強力な環境保護推進者Al Gore(アル・ゴア)元副大統領が、「Challenge to Repower America」で、現在のアメリカのエネルギー問題に対する呼びかけを行なっています。

ゴアは、スピーチの中で、以下のようにアメリカに端的に描写しています。

「We're borrowing money from China to buy oil from the Persian Gulf to burn it in ways that destroy the planet," "Every bit of that's got to change(我々は中国から借金をして、ペルシア湾の石油を買い、それを燃やして、地球の環境を破壊している。これらすべてを変えなければならない)」

ゴアは、「米国は10年以内に、すべての電力業界は、風力、ソーラー(太陽光)、ジオサーマル(地熱)というカーボンフリーの電力エネルギーに転換して、それをこれからの新しい電動自動車の燃料として使うコトを目指すべきだ」と主張しています。彼は、1961年ケネディ大統領が「月に人間を送る」というミッションを掲げたように、自分のプランはすべての米国民(政治家、企業、技術者、発明家、アントレプレナー、一般消費者)が、これに向かって行動を起せば実現可能となると、力説しています。彼のポイントは、現在、米国が立ち向かわなければならない危機は、以下の3つで、これはすべて重なり合っているという点です。

  1. エネルギー価格の高騰による経済危機
  2. 地球温暖化の危機
  3. 安全保障の危機(石油を供給する中東の政情不安定さによって起きている)
ただし、米国のエネルギー源は、U.S. Energy Information Administrationによれば、以下の割合で、いまだに石炭に電力供給の半分を依存しています。エネルギーの専門家(Edison Electric Institute)にいわせれば、ゴアのプランは非現実的で、10年以内にRenewableなエネルギー源だけで、米国のエネルギー消費のデマンドをまかなうことは不可能で、バランスの取れたエネルギーのポートフォリオのためには、すべてのリソースを考慮して、原子力発電の増加を考える必要があると指摘しています。

  • 石炭:49%
  • 天然ガス:22%
  • 原子力:19%
  • 水力:6%
  • Renewable(持続的利用可能なエネルギー):2.5%
ゴアがこうした発言をした背景には、昨日ブログしたように、ブッシュ政権がモラトリアムを取り下げて米国の海岸線の新たな油田採掘を展開して、石油の輸入依存を減らすという、政治的ギミック・アクションへの強い反発があることは必至です。

埋蔵量に限りのある「化石燃料」は、いくら「持てる国のアメリカ」であっても、どこかの時点でで掘りつくしてしまいます。また、当然その価格は需要と供給のバランスで、投機的な値動きがあります。ということは、消費者は、「化石燃料」に依存するという状態は、自国であろうと外国(中近東)であろうと結果は同じで、今後も、何度もこうしたエネルギーの価格高騰による物価上昇に翻弄されるということになります。

誰でも出来る行動は:

  • エネルギー需要のもとである自分自身のライフスタイルのチェンジ(ゴアはそれを強く求めています)。
  • 環境保護のアクションを実施している企業の製品を選ぶ(エコフレンドリーな企業のロイヤルファンとなる)
  • 対処療法や政治的なギミックでエネルギー戦略策定をするような政治家を、選ばない

カリフォルニア州は、2009年7月1日から、新築の建物(商業用、個人住宅、学校、病院などすべての建物)に関して、エネルギー使用は15%、建物内の水使用は20%、屋外のランドスケープのための水使用は50%の削減基準「California Building Standards Commission」をスタートさせます。これは全米でも、州レベルで初めて実施する本格的な「Green Building Standard(エコフレンドリーな建物基準)」で、環境保護に熱心なカリフォルニア州ならではものです。このコミッションはスタートはボランティアリーなものなので、これを2010年の終わりか2011年の初めまで、強制される基準となるように働きかけるということです。

米国に住んで、すでに13年経ちますが、どうやらやっと米国民もかなりの真剣さで、エネルギー問題を見つめ始めています。マーケッターとして、こうした消費者行動や意識の変化を見た場合、これは単なるトレンドではなく、一つの「Tipping Point(社会学的に、以前は稀な現象であったイベントが、臨界点を越えて、急激に一般的なイベントとなること)」を迎え始めている、そんな気がします。

米国は「輸入エネルギー依存」から脱出できるか?

7/17/2008

 
最近かなり気になっている話題は、政府がスポンサードして創設された米国最大の2つの住宅ローン企業のFannie Mae(Federal National Mortgage Association)とFreddie Mac(Federal Home Mortgage Corporation)の破綻の可能性です。ただでさえサブプライムローン問題でガタガタになった米国金融市場は、これによってとんでもないほどの深みにはまる可能性があります。さすがのブッシュ政権も、これだけは避けなければならない問題と認識しており、3000億ドル(31兆5000億円)の融資プランを出してきて、彼らを救済すべく必死です。

ここでのポイントは、こうした政府のプランを見て、米国一般消費者は、漠然と「政府にはお金があると思い込んでいる」ことです。実際は「米国政府にはお金はない」、さらにお金がないどころか、借金だらけで、Government Accountability Officeによれば、53兆ドル(5565兆円)という、私にとっては天文学的で長期的な負債を抱えているという事実です。これは年間の国家予算の収支とは異なり、返済目途などを示す必要のない借金で、国民が見えにくく実感しにくい負債です。ただし、これは言い換えると、米国では一世帯につき、45万5000ドル(4777万5000円)の負債を抱えていることを意味します。またもっと怖いのは、この負債はどんどん雪達磨式に増えており、これを中国や中近東の産油国の投資に依存しているという状態です。

こうした巨額な負債を抱えて生き抜くためには、米国のドルの信用を確保して、強化するしかなく、それによって米国市場は融資先を常にひきつける魅力を保持して、走りぬいていくしかないようです。私は、経済学者ではありませんが、この「強いドルの確保」という考えは、1996年、2000年の2回共和党の大統領候補者となり、経済雑誌の「Forbes」の会長兼CEOのSteve Forbesが、昨日MSNBCのインタビューで答えていたことです。彼には日本の出版者のパーティで一度会った事がありますが、気さくな人柄で、好感の持てる面白い人でした。確かに彼のこの意見は、当然といえば当然で、「強いドル」すなわち、「競争力の強い米国」になるためには、対処療法や短期的な戦術ではなく、将来のヴィジョンに基づく、長期的な戦略が必要です。「付け焼刃」では、ここまで悪化した患者の病巣を手術することは不可能で、大きな痛みを伴う「大手術」が必要になってきています。

この痛みを伴う大手術の一環として、「輸入エネルギー依存からの脱出」があります。

アメリカ人の原子力発電に関する意識は、1979年の「Three Mile Island accident(スリーマイル島事件)」がトラウマとなって、原子力発電への危険性のみがクローズアップされて、30年間発電所の新設されないほど、フリーズ状態となっています。地球温暖化を考えるとクリーンでなおかつ大量の電力を安定供給できる原子力発電は、フランスが電力供給の80%を原子力発電でまかなうという例をひくまでもなく、米国が乗り越えなければならない巨大な課題です。そんな中で、今日発表されたField Pollによれば、環境問題に敏感なカリフォルニアでさえ、50%がもっと原子力発電所を州内に開設すべきだと解答しています。この数字は、米国のエネルギー政策への米国民の心理と態度の変化を示唆しており、30年に渡ったトラウマが消し飛ぶぐらい、「ガソリン=物価の上昇」は大きなトリガーとなって、米国民のアタマに銃口を突きつけているようです。

ブッシュ政権はこうした風向きを素早く察知して、7月14日に18年間モラトリアムとされていた米国の海岸線の油田採掘禁止を解除しました。もちろん、議会の採決を待たないとこの解除は実行されませんが、ブッシュ政権は、エネルギー問題解決のために、新しい油田採掘を必要とするという意見が、最近35%から47%に急増した国民のムードを反映して、強気のアクションを起しています。民主党は、すでに石油会社に提供されている6800万エーカー(27万5200平方キロメートル)の油田採掘可能なエリアの採掘が先で、海岸線の新たな油田採掘は現在の石油価格高騰の解決にはつながらない、場当たり的な施策だと非難しています。

「石油価格高騰」という、米国のライフスタイルの急所ともいうべき「人質」を取って、大統領と議会はお互いを非難しあっていますが、前述の原子力発電所への取り組みも含めて、抜本的なエネルギー対策を講じない限り、この米国の「Weakness(弱み)」は、今後も頻発して、米国民の首を絞めます。フランスが原子力発電を選んだ理由は、石油、天然ガス、石炭というエネルギー資源が自国になく、他に道がなかったと語っています。1976年の石油危機以来、年間2つの原子力発電所を新設して、すでに58の原子力発電所を持つフランスは、電力を英国、ドイツ、イタリアに輸出するほどです。米国は、自国内にまだまだ手をつけていない、石油、天然ガス、石炭が取れる場所を有し、それ以外にも代替燃料など、選択肢はたくさんあります。ポイントは、どのようなエネルギー戦略のもとに戦術を展開していくかで、「持てる国」の悩みともいうべき、選択肢の多さが逆に米国の足かせにもなっています。

NY Times/CBSの調査では、「80%の人は経済が悪い状態、19%は良い状態」と答えています。崖っぷちに追い詰められた時に、人は本能的に何をすべきかが見えてくると思います。今がその時期です。


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    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

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