ひさみをめぐる冒険
  • BLOG
  • About
  • Contact

ひさみをめぐる冒険
サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



アル・ゴアが描写する米国「中国からの借金+ペルシャ湾の石油購入=石油を燃やして環境破壊」

7/18/2008

 
昨日のエントリに引き続き、今日も環境とエネルギーの話題です。昨日ワシントンで、ノーベル平和賞を受賞した強力な環境保護推進者Al Gore(アル・ゴア)元副大統領が、「Challenge to Repower America」で、現在のアメリカのエネルギー問題に対する呼びかけを行なっています。

ゴアは、スピーチの中で、以下のようにアメリカに端的に描写しています。

「We're borrowing money from China to buy oil from the Persian Gulf to burn it in ways that destroy the planet," "Every bit of that's got to change(我々は中国から借金をして、ペルシア湾の石油を買い、それを燃やして、地球の環境を破壊している。これらすべてを変えなければならない)」

ゴアは、「米国は10年以内に、すべての電力業界は、風力、ソーラー(太陽光)、ジオサーマル(地熱)というカーボンフリーの電力エネルギーに転換して、それをこれからの新しい電動自動車の燃料として使うコトを目指すべきだ」と主張しています。彼は、1961年ケネディ大統領が「月に人間を送る」というミッションを掲げたように、自分のプランはすべての米国民(政治家、企業、技術者、発明家、アントレプレナー、一般消費者)が、これに向かって行動を起せば実現可能となると、力説しています。彼のポイントは、現在、米国が立ち向かわなければならない危機は、以下の3つで、これはすべて重なり合っているという点です。

  1. エネルギー価格の高騰による経済危機
  2. 地球温暖化の危機
  3. 安全保障の危機(石油を供給する中東の政情不安定さによって起きている)
ただし、米国のエネルギー源は、U.S. Energy Information Administrationによれば、以下の割合で、いまだに石炭に電力供給の半分を依存しています。エネルギーの専門家(Edison Electric Institute)にいわせれば、ゴアのプランは非現実的で、10年以内にRenewableなエネルギー源だけで、米国のエネルギー消費のデマンドをまかなうことは不可能で、バランスの取れたエネルギーのポートフォリオのためには、すべてのリソースを考慮して、原子力発電の増加を考える必要があると指摘しています。

  • 石炭:49%
  • 天然ガス:22%
  • 原子力:19%
  • 水力:6%
  • Renewable(持続的利用可能なエネルギー):2.5%
ゴアがこうした発言をした背景には、昨日ブログしたように、ブッシュ政権がモラトリアムを取り下げて米国の海岸線の新たな油田採掘を展開して、石油の輸入依存を減らすという、政治的ギミック・アクションへの強い反発があることは必至です。

埋蔵量に限りのある「化石燃料」は、いくら「持てる国のアメリカ」であっても、どこかの時点でで掘りつくしてしまいます。また、当然その価格は需要と供給のバランスで、投機的な値動きがあります。ということは、消費者は、「化石燃料」に依存するという状態は、自国であろうと外国(中近東)であろうと結果は同じで、今後も、何度もこうしたエネルギーの価格高騰による物価上昇に翻弄されるということになります。

誰でも出来る行動は:

  • エネルギー需要のもとである自分自身のライフスタイルのチェンジ(ゴアはそれを強く求めています)。
  • 環境保護のアクションを実施している企業の製品を選ぶ(エコフレンドリーな企業のロイヤルファンとなる)
  • 対処療法や政治的なギミックでエネルギー戦略策定をするような政治家を、選ばない

カリフォルニア州は、2009年7月1日から、新築の建物(商業用、個人住宅、学校、病院などすべての建物)に関して、エネルギー使用は15%、建物内の水使用は20%、屋外のランドスケープのための水使用は50%の削減基準「California Building Standards Commission」をスタートさせます。これは全米でも、州レベルで初めて実施する本格的な「Green Building Standard(エコフレンドリーな建物基準)」で、環境保護に熱心なカリフォルニア州ならではものです。このコミッションはスタートはボランティアリーなものなので、これを2010年の終わりか2011年の初めまで、強制される基準となるように働きかけるということです。

米国に住んで、すでに13年経ちますが、どうやらやっと米国民もかなりの真剣さで、エネルギー問題を見つめ始めています。マーケッターとして、こうした消費者行動や意識の変化を見た場合、これは単なるトレンドではなく、一つの「Tipping Point(社会学的に、以前は稀な現象であったイベントが、臨界点を越えて、急激に一般的なイベントとなること)」を迎え始めている、そんな気がします。


Comments are closed.

    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

    Archives

    May 2020
    April 2020
    March 2020
    January 2020
    November 2019
    August 2019
    November 2016
    October 2016
    May 2016
    April 2016
    January 2016
    December 2015
    August 2015
    July 2015
    June 2015
    May 2015
    December 2014
    November 2014
    January 2013
    November 2012
    August 2012
    May 2012
    December 2011
    November 2011
    October 2011
    August 2011
    May 2011
    April 2011
    March 2011
    January 2011
    November 2010
    October 2010
    September 2010
    August 2010
    July 2010
    June 2010
    May 2010
    April 2010
    March 2010
    February 2010
    January 2010
    December 2009
    November 2009
    October 2009
    September 2009
    August 2009
    July 2009
    June 2009
    May 2009
    April 2009
    March 2009
    February 2009
    January 2009
    December 2008
    November 2008
    October 2008
    September 2008
    August 2008
    July 2008
    June 2008
    May 2008
    April 2008
    March 2008
    February 2008
    January 2008
    December 2007
    November 2007
    October 2007
    September 2007
    August 2007
    July 2007
    June 2007
    May 2007
    April 2007
    March 2007
    February 2007
    January 2007
    December 2006
    November 2006
    October 2006
    September 2006
    August 2006
    July 2006
    June 2006
    May 2006
    April 2006
    March 2006
    February 2006
    January 2006
    December 2005
    November 2005
    October 2005
    September 2005
    August 2005
    July 2005
    June 2005
    May 2005
    April 2005

    Categories

    All
    Book
    Business
    Culture
    Current Affairs
    Game
    Green : 環境・テクノロジー
    Healthy Life
    Influencer
    JaM Media
    Marketing
    Movie
    Music
    Obama Watch
    Online
    Politics
    Religion
    SNS
    Sports
    Technology
    Travel
    TV
    Twitter
    WOM (Word Of Mouth)

Proudly powered by Weebly