2001年当時600億ドル以上の市場価値があったエンロンは、このGreedy(強欲)な経営者たちのミスリードによって、株価の下落と倒産を招き、社 員はおよそ21億ドルの年金を一瞬のうちに失い、5600人が解雇され、多くの株主に多大な損害を与えました。米国ビジネス史上の最悪のスキャンダルの一 つとして、「エンロン崩壊」という言葉で、話題になり、私も当時はこの事件にかなり関心を持って、以下のようなコラムを書いて、事件を見守っていました。
番犬と道化師の役割 (The Roles of Watchdogs and Fools)
*ベイエリア最新事情2001年12月24日*
カモフラージュ・メイクアップ-エンロンの場合 (The Camouflage Makeup-Enron)
*ベイエリア最新事情2002年1月25日*
失われた企業モラル (The Loss of Corporate Ethics)
*ベイエリア最新事情2002年6月22日*
あれから5年が過ぎて、やっと、創立者・会長・CEOのレイは、最長165年間、CEOのスキリングは最長185年の受刑を宣告されました。すでに10年 間の受刑が確定しているCFOのAndrew Fastow(アンドリュー・ファストウ)は7月から塀の中に入り、レイとスキリングはいみじくも「9月11日」から始まります。この4ヶ月かかった2人 の裁判で、検察側の切り札が元CFOで一連のエンロンの不正会計操作の設計者だったファストウです。彼は、彼の妻をエンロン事件の関係者として1年間の受 刑生活をさせており、トップ2人とすべて協議の上で行ったと証言して、2人を一気に不利な状況に落としこんでいます。
いろんな報道や陪審員・関係者の発言で、頻繁に出てきたのが、「Liar(嘘つき)」という言葉です。米国では、間違いや悪事をしても、それを正直に認め て、今後二度とそれを繰り返さないと誓う姿勢を評価します。反対に、「正直に話さない=嘘をつく」ことを嫌い、レイとスキリングが、「エンロンが倒産する ほどひどい財務状態であったことは知らなかった」と言ったことに対して、「社員と一般投資家と株主に嘘をついた」として、鋭く非難しています。
このエンロン崩壊に限らず、多くの大企業のCEOたちが行ったホワイトカラークライムは、米国ビジネスの「Greedy(強欲さ)」の象徴として、多くの非難を招き、それを受けて検察側も必死の努力により、徐々に塀の中にCEOたちを送り込んでいます。
Bernard Ebbers, 64 | GUILTY
Former chairman & CEO, WorldCom
Dennis Kozlowski, 59 | GUILTY
Former CEO, Tyco International
Frank Quattrone, 50 | CONVICTION OVERTURNED
Investment banker, Credit Suisse First Boston
John Rigas, 80 | GUILTY
Former chairman and CEO, Adelphia
Richard Scrushy, 53 | NOT GUILTY
Former chairman and CEO, HealthSouth
Martha Stewart, 64 | GUILTY
Founder Martha Stewart Living Omnimedia
また、現在SECによって調査進行中のCEOたちへの巨額な報酬の一部である「ストックオプションのバックデイト」問題には、SF Chronicleによれば、以下のような企業の名前があがっており、何らかの問題で巻き込まれる可能性があるとしています。
Altera, San Jose -- internal inquiry
Cnet Networks, San Francisco -- internal inquiry
Juniper Networks, Sunnyvale -- U.S. attorney investigation
KLA-Tencor, San Jose -- SEC investigation
McAfee, Santa Clara -- internal inquiry
Mercury Interactive, Mountain View -- SEC investigation
Openwave Systems, Redwood City -- SEC investigation
Power Integrations, San Jose -- internal inquiry
Trident Microsystems, Sunnyvale -- internal inquiry
Zoran, Sunnyvale -- internal inquiry
Source: Company reports, Chronicle research
この「ストックオプションのバックデイト」も、「日付をさかのぼる嘘」によって、ストックオプションを実際に売る時点との差額で、莫大な利益を経営者たち にもたらします。これは企業の会計において損益の数字を変えることを意味し、さらに、それは投資家へ嘘、あるいは納税の不正申告へとつながる可能性を秘め ています。
「嘘つきは泥棒の始まり」、これはどうやら真実のようです。