先週のクリスマスウィークは、クリスマス当日のサンフランシスコ動物園のシベリアンタイガーによる3人の見学者殺傷事件に始まり、パキスタンのブット元首相の暗殺など、ローカルからグローバルまでいろいろな問題を考えさせられることが起こりました。
ローカルに眼を向けると、個人的には、亡くなった被害者や負傷者と同様に、殺害されたシベリアンタイガーのTatiana(タティアナ)に対しても非常に悲しい思いを禁じえません。シベリアンタイガーは、密猟者によって20世紀半ばに絶滅しかかった世界最大のトラで、現在は全世界で500頭しか生存しない野生動物です。彼女は、シベリアにいようともサンフランシスコの動物園にいようとも、野生のトラであることに変わりなく、彼女が何らかの刺激を受けて、檻から逃げ出して、人間を襲った行動は、野生動物としては正常な行為だと動物学者は発言しています。私が気になるのは、彼女が檻から逃げ出すこととなった誘引です。何か人為的な刺激があって、彼女の野生の本能がうずいたとしか考えられません。
現在サンフランシスコ動物園は、檻と見学者たちの間の堀の壁の高さが、米国の動物園の規定の高さを満たしていなかったとして、監督責任を問われています。私はそれ以上に、シベリアンタイガーを檻の中に閉じ込めておくことに、なんとも言えないやりきれなさを感じます。タイガーに限らず、動物園にいる動物は、なんとも哀しそうな眼をしており、私はその哀しみをティーンネージャーの時に感じて以来、動物園には足を向けていません。
トラもそうですが、象や犀のような大型動物は、その毛皮や牙、漢方薬として価値(中国市場では非常に高く売れる)から、密猟者によって絶滅する可能性を秘めています。地球の温暖化が北極グマの生息地を減少させていると避難するレトリックもありますが、それ以上にクマの生息数を減少させているのは、密猟者を含むハンターであるというデータもあります。
単独の野生動物としては最強であるというタイガーですが(ライオンはグループで狩をするために単独ではトラの方が強い)、タイガーよりも、もっともっと怖いのは、エコノミックアニマルとなった時のヒューマンビーング(密猟者)です。
PS: ちなみに、インドに生息するベンガルタイガーは、20世紀初頭には4万から5万頭いましたが、現在は3000頭から3500頭まで減少したと推定されています(最も少ない推定数は1500頭)。当時のマハラジャのSurgujaは、1人で1150頭のタイガーをハンティングしたと発言しており、マハラジャたちは、自身のロールスロイスをハンティングしたトラの毛皮でカスタム化したらしいです。
いくら野生動物を保護しようと努力しても、毛皮、象牙細工、犀、クマ、トラの漢方薬etc. こうしたマーケットが存在する以上、密猟は行われます。個人が野生動物保護に出来ることは少ないと思いますが、少なくともこうした製品を購入しないコモンセンスや分別が、なんらかの野生動物保護のサポートになるのであれば、それをやっていくしかないのかもしれません。