これって、結構、大変な「ブランドアセットの交換」になると思います。
買収額は20億ドル(2300億円)で、Tata Motorsは、「People's Car」と称する、世界で一番安いクルマを、来年2500ドル(28万7500円)で販売する予定です。今、一番不安な気持ちで、この買収劇の行方を見ているのが、米国のジャガーのディーラーたちです。確かに2500ドルのクルマを製造する会社が、最も安い価格でもその20倍はするクルマのオーナー会社となると、完全にジャガーのブランドアセットは、ダウンしてしまいます。Tataにとってみれば、一気にラグジュアリーな市場に進出できるので、大きなアドバンテージです。こうしたドラスティックな買収劇が起こるほど、クルマメーカーの市場競争は激化しており、どこが何を製造しているのかわからなくなり、ブランドアセット自体の価値が段々薄れてきているのを実感します。
私が10代、20代の頃、ジャガーはまだ英国製で、あのクルマはかなり輝いていました。会社の先輩がジャガーの中古を売るというので、真剣にその購入を考えて、亡くなった父に相談したことを思い出します。父は、「電気系統が弱いし、しょっちゅう故障するから、メカに弱いお前には向かないよ」、と言われて、あきらめました。
まさか、そのジャガーがフォードへ身売りされて、その後インドの自動車会社に買われるとは(まだ買収は成立していませんが)、時代はかくも変遷するものです。