ひさみをめぐる冒険
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ひさみをめぐる冒険
サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



Tech Worldのgenderに関して、感じたこと。

6/10/2015

 
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おとといのAppleの「Worldwide Developers Conference」のことをゆっくり読もうと思って、SF ChronicleのBiz&Tech欄をフィジカリーに開いたら、アプリのアップデイト以上に、キーノートで女性がプレゼンテーションに立ったことに注目していた。「Apple Pay」のVPのJennifer Baileyと、アプリの説明を行ったSusan Prescottの2人の女性が、WWDCのステージにキーノートとして立つのは、2010年以来5年ぶりということで、SF Chronicleは、Googleも含めて、シリコンバレーのテックジャイアント達も、社員の男女数の格差に、何らかのアジャストメントをしようとしていると報じている。

米国では、カンファレンスの男女のトイレの長蛇の列の有無によって、業界の男女格差を判断するが、マーケティング関連のカンファレンスではテック業界とは反対に、女性用トイレに長蛇の列ができる。米国はマーケティングやPublic Relationsの業界はとにかく女性ばかりで、うちの義理の娘たちは、私の日本でのマーケティング関連のコンファレンスの写真やスピーカーのリストを見て、女性が異常に少ないことに驚愕している。

いまさら言うまでも、シリコンバレーにおけるテック業務従事者数の男女格差は非常に大きい。テック以外の業務にはもちろん女性は多く勤務しているが、全体の印象も含めて、シリコンバレーでは男女格差が目立つ。以下はテックジャイアントのテック業務とリーダーシップポジションにおける女性比率である。

  • Appleのテック業務に従事する女性:20%
  • Googleのテック業務に重視する女性:18%
  • Microsoftのテック業務に従事する女性:17%
  • Appleのリーダーシップのポジションに従事する女性:28%
  • Googleのリーダーシップのポジションに従事する女性:22%
  • Microsoftのリーダーシップのポジションに従事する女性:18%


要は全体の2割以下しか女性がテック業務についていないというのが現時点でのリアリティである。これは、シリコンバレーの元締めともいうべきSand HillのVCたち、すなわちCaucasianの男性がマジョリティのVC Worldの、無意識あるいは意識下の、自分達とは異なるグループへのステレオタイピングな認識に起因する、と思う。彼らが投資するスタートアップや企業を見れば、彼らが何を重視しているかがよく見える。はっきり言えば、マイノリティ(アジア系を除いた非白人グループや女性)と、さらにシニア層にはお金を出さない。女性を含むマイノリティグループがテック業界でスタートアップとしてビジネスしにくい大きな理由は、Capitalへのアクセスがほとんど出来ないという点である。いろいろな記事でも取り上げられていた1つの事例だが、ベイエリアのVCたちに、50代のアフリカ系アメリカ人女性が、ヘルスケアに関するビジネスプランをピッチした際、VCたちはその容姿(彼女の身体は非常に大きい)を見ただけで、最初から聞く耳を持たず、非常に失望したと、その起業家はインタビューで応えていた。

この状況下で、Intelは2020年までに、自社内のDiversityの課題解決のために、マイノリティの就労比率改善(24%の女性比率を米国就労女性比率の47%に、ヒスパニックとアフリカ系アメリカ人比率も12%を26%に引き上げる)に、3億ドルを支出すると宣言した。また昨日Intelは、シリコンバレーのカルチャーにチャレンジするかのように、女性とマイノリティによるテクノロジースタートアップのための投資ファンドとして1億2500万ドルを供出することを発表した。

このファンドの要件は、スタートアップ企業は、女性あるいはマイノリティが創設者またはCEO、あるいはトップ経営陣に少なくとも3人の女性あるいはマイノリティがいることが必須条件となっている。すでに Venafi(cybersecurity firm)、CareCloud(Internet software for the health industry)、Brit + Co.,(provides classes and an online market for selling do-it-yourself products)、Mark One(makes a “smart” cup that analyzes the nutritional content of beverages)といった企業がファンドを得ている。Intel CapitalのVPのLisa Lambertは、「これは単なるソーシャルプログラムではなく、ビジネス機会として、お互いに成長するためにFundをしっかり見極めていく」と、明解に趣旨を語っている。Intel 以外では、AOLが女性によるスタートアップに1000万ドル、ComcastはマイノリティのスタートアップへのSeedファンディングとして2000万ドルといったファンドがあるが、NPOではなく、For Profitのマイノリティによるスタートアップへの投資ファンドは、非常に稀である。

テックワールドに従事する、あるいはリーダーシップポジションに、女性も含めたマイノリティが少ないという現実には、社会構造およびカルチャーも含めた複雑な要素が絡み合っていて、一刀両断に切れる問題ではない。また、一口にマイノリティといっても、女性問題と人種的な問題を同じ俎板で料理することも出来ない。ただし、ここにきてGeneration Y & Zといった若年層は、Genderや人種的な抵抗感はかなり少なくなってきており、今後こうした格差は縮まっていく可能性があると、思う。彼らには、ステレオタイプな既成概念、あるいは固定概念はなく、様々なことに「Authenticity & Transparency」を求めており、企業も、そうしたこれからの中心世代への対応を確実に迫られている。

以下は、米国の女性のCEOのトップ10のサラリーのリストである。調査では340社対象として、女性のCEOは17人しかリストには入っていないが、2014年のCEOのサラリーの中間値は、男性が140万ドル(0.8%減)、女性は1590万ドル(21%増)と、女性CEOのサラリーは男性より大幅に上昇中である( Equilar & The Associated Pressによる)。人数的には女性CEOは5%しかいないが、金額は決して悪くはない。実績をたたき出すと、男女差は関係なくなるという、証拠である。

No. 1: Marissa Mayer, Yahoo:4210万ドル(69%増)
No. 2: Carol Meyrowitz, TJX Cos., :2330万ドル(13%増)
No. 3: Margaret “Meg” Whitman, Hewlett-Packard:1960万ドル(11%増)
No. 4: Indra Nooyi, PepsiCo:1910万ドル(45%増)
No. 5: Phebe Novakovic, General Dynamics:1900万ドル(15%増)
No. 6: Virginia Rometty, IBM:1790万ドル(28%増)
No. 7: Marillyn Hewson, Lockheed Martin:1790万ドル(13%増)
No. 8: Patricia Woertz, Archer Daniels Midland:1630万ドル(138%増)
No. 9: Irene Rosenfeld, Mondelez International:1590万ドル(14%増)
No. 10: Ellen Kullman, DuPont:131万ドル(1%減)

自らを振り返ってみても、過去35年間のキャリアは、当初女性を守る法的規制もなく(男女雇用平等法の前だったので、現在の男女差別を差別と認識することすら出来ない時代)、常に道なき道ともいうべき密林を、手刀だけで切り開いてきたような感があり、自分が通ってきた道を他の女性に薦める気はさらさらない。また、そうする必要もないほど、社会的にも文化的にも、Genderはほとんど意識する必要がなくなり、多くの女性のキャリアの問題は、「育児と仕事の両立」に焦点が移っている。財政的にも大きな負担を抱えながら育児と仕事を両立させている女性達は、上述のYahooのMayerのような高額所得の女性CEO(多くのサポートを抱えられる財力のある)の発言や行動への見方は厳しい。

テックワールドの女性の役割の底上げを試みるならば、Intelのファンドのような取り組みも含めて、意識的に女性主体のビジネス育成プログラムや企業内の女性比率引き上げの法規制などをしていくのが、まず、初めの一歩としては正しいのかもしれない。数を増やさない限り、「玉石混交」のように、「玉」が生まれてこないのは世の常で、早くより多くの「玉」を増やすために、「石」の絶対値が必要だと思う。

IOM (Internet of Me)の時代のコミュニケーションとは?(日本で6/25に特別セミナー開催)

6/9/2015

 
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6/25(木)19時から渋谷のTECH LAB PAAKで「ITで日本を元気に!」の特別セミナーとして、以下のテーマで対談を実施します。主催者はトライポッドワークス社長の佐々木賢一さんで、MCにはAkerunの広報の高橋ちささん、対談相手はHEART CATCHの代表取締役の西村真理子さんというメンバーで、私がキーノートとしておしゃべりします。セミナーは無料ですので、是非ここから申し込んでください。女性との対談やセミナーは、私にとっては珍しく、女性3人はすでに大いに盛り上がっています。面白い話になると思うので、ぜひご参加ください。

19:00【主催者あいさつ】 「ITで日本を元気に!」代表 佐々木賢一(トライポッドワークス株式会社 代表取締役社長)

 19:05【キーノートスピーチ】「IoM(Internet of Me)」の時代のコミュニケーションとは?JaM Japan Marketing LLC創設者&マネージングメンバー 大柴ひさみ氏

「Instant Gratification(瞬間的な満足)」に慣れてしまった消費者の注意力のスパンは12秒から8秒までに落ちている。 テキストによって記憶できる内容はわずか20%。 “I want what I want when, where, and how I want it”と、消費者のデマンドは拡大する。自らの指紋のようなユニークさを、「インターネット経験」に求める消費者に、米国のマーケター達はどのようにReach outしようとしているのか? 「IoM(Internet of Me)」とまで呼ばれる、今のアメリカのビジネスおよびマーケティング事情を語る。

 20:00【 対談トーク】「日米で活躍する第一人者が語り合う マーケティングの未来とイノベーション」

JaM Japan Marketing LLC 創設者&マネージングメンバー 大柴ひさみ氏

株式会社HEART CATCH 代表取締役 西村真里子氏

【大柴ひさみ氏プロフィール】 シリコンバレーを拠点に、日米企業のマーケティング戦略の開発実施・調査分析を提供。16年間の電通Y&R勤務後、1995年米国移住、1998年JaMを設立。日本企業の米国市場向けの製品開発、グローバル市場のマーケティング戦略の開発実施を手がける。サンフランシスコと東京のad:techで5回登壇、アドバイザリーボードメンバーも歴任。執筆・講演も多く、時代を先取りするリアルな米国事情のInsightは高い評価を受けている。JaM Japan Marketing LLC 

 【西村真里子氏プロフィール】 国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobe SystemsおよびGrouponにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年7月1日、株式会社HEART CATCH設立。マーケティング×エンジニアリング×クリエイティブ視点でモノ・コトをプロデュース。 エンジニアとして国際特許取得、カンヌライオンズ金賞他受賞多数。株式会社HEART CATCH


iMedia Brand Summit 2015(6/15-6/17)に登壇!

6/8/2015

 
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あっという間に6月8日となり、2015年もモタモタしていたら、もう半年が過ぎようとしている。わざわざ「光陰矢のごとし(Time flies!!)」なんて言わなくても、時は確実に過ぎ去る。過去5日間、ケーブルネットワークのAt&Tの酷いサービスにあきれ果てて(シグナルが受信できないというフィジカリーな不具合によって固定電話とケーブルTVが使用できない)、すでにCord Cutterの気分を大いに満喫しつつ、6/13に日本出張に出ます。

今回、まず最初のイベント、6/15-6/17、宮崎で開催される「iMedia Brand Summit」です。海外からはMOATのPresidentのAniq RahmanとBrand Strategist & Social media expertのPhil Pallenと、私の3人です。

「iMedia Brand Summit」の趣旨は以下にあり、ヴィデオでも見られます:
最先端を行くブランド企業のマーケター300名が集う、完全招待制のビジネスサミット。国内外の大手ブランド広告主企業の、選ばれたマーケティング&宣伝担当者が集う完全招待制かつ世界最大級のビジネスサミットです。
業界プロフェッショナル間の活発な議論、関係作りブランド広告主企業のマーケターのみならず、活発なコミュニケーションや関係作りが行われます。

Aniqは、"Measuring attention in the era of digital"というタイトルで、ブランド広告主の間で大きく騒がれていAd Fraud(広告詐欺)の問題について話し、Philは、"New Way of Drawing Branding Strategies in the Era All Connected in Social Media"というタイトルで、ソーシャルメディアを駆使した、ブランド・パーソナリティの構築について語るらしい。

私は3日間サミットに参加して、日本から参加するブランド広告主と最後に一緒に上がって、ラップアップをする予定です。ad:tech san franciscoやtokyoは合計5回登壇しているので、勝手はわかっていますが、今回のBrand Summitは初めてなので、新鮮な気持ちで望みたいと思っています。






「CAUSE marketing(社会貢献型マーケティング)」 の終焉?

6/4/2015

 
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"Billion-Dollar Bombshell"っていうタイトルに惹かれて、思わずクリックしたら、 IKEAが地球温暖化対策に今後5年間で11億3000万ドルを費やすことを発表、っていう記事だった。この数字は半端じゃない。

IKEAは 6億7700万ドルを風力&太陽光エネルギーに、4億5100万ドルを温暖化で最も影響を受ける国々のチャリティ活動に充てるという。CEOの Peter Agnefjallは“Climate change is one of the world’s biggest challenges and we need bold commitments and action to find a solution,” と言っている。このCEOの発言とこの金額は単なるマーケティングギミックではなく、企業のattitudeを示す長期的なコミットメントと言える。私も5-6年前、日本のメディアに「Cause Marketing(社会貢献型マーケティング)」の事例を多く紹介した。当時は、企業のコミットメントは、戦術的な対応で、とても長期的な企業としてのAttitudeとは思えなかった。

ただここにきて、さまざまな企業の動きと、それを見守る消費者の視点を分析すると、「Cause Marketing(社会貢献型マーケティング)」に関して、企業は、それを戦略的なコミットメントなしに自らのブランディングに利用しようとすると、消費者の懐疑心と反発を招くだけということを、かなり痛い目にあいながら、学んだという点にある。

たとえば、Levi'sは環境保護のコミットメントの下で、Sustainabilityを考慮して、ジーンズの製造過程で水を大量に使わない事を目標に掲げ、それに呼応するように、ユーザにジーンズの洗濯でなるべく水を使わずに長くジーンズをはける「Slow Fashion & Sustainability」ともいうべきテーマをコミュニケートしている。またPatagoniaは、長く利用できる製品を製造しているので、頻繁に製品を買う必要はないとして、Don't Buy This Jacketというテーマで、環境への負荷を鑑みて、ユーザに無駄な消費をするなと呼びかける、通常ではありえない企業メッセージを投げかけている。

企業がパブリックに対して、社会貢献の旗を掲げる場合、最も大切なことは、企業メッセージと実践する行動が消費者から見て一致しているかどうかと言う点にある。製品の製造過程(素材、製造過程や施設のエネルギー施策、動物実験の有無、労働力への妥当な対価など)も含めて、企業姿勢と実践する企業行動に不一致を見られた場合、その社会貢献メッセージの信頼性は失われる。

消費者は、企業以上に、冷静で、Smarter(より賢く)で、物事を俯瞰で見ている。マーケティングギミックかそうでないかを、簡単に判断できる大人でもある。大言壮語に近い、くだらないグローバルマーケティングメッセージの広告配信に、莫大な金額を使う企業への監視の目はより厳しくなっている。若年層、Generation (Millennials) Y & Z*は、とにもかくにも、Authenticity & Transparencyを重視する。彼らのメガネにかなわない企業は、今後苦戦を強いられるのは必至であり、グローバルを見つめるIKEAのような企業は、その辺を十分理解した上で、コミットメントをしていると思う。

*米国の世代ごとの人口区分:

  • 12-17歳: 25 million (7.8%)- Generation Z
  • 18-24歳: 31.5 million (9.9%) - Generation Y (Millennials)
  • 25-34歳: 43.5 million (13.6%) - Generation Y (Millennials)
  • 35-44歳: 40.5 million (12.7%) - Generation X
  • 45-54歳: 43.5 million (13.6%) - Generation X and Baby Boomers
  • 55-64歳: 40.1 million (12.6%) - Baby Boomers
  • 65-74歳: 26.4 million (8.3%) - Baby Boomers and Silent Generation
  • 75歳以上:    19.8 million (6.2%) - Silent Generation

netflixの試験的な広告配信に関して感じたこと

6/2/2015

 
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Netflixが、試験的に広告をヴィデオ視聴の前後に流し始めた。Netflixは、HBOモデルで、オリジナルプログラムのプロモーションのためのTrailer(予告編)のみを流し、「第三者の広告」を配信する予定はないとしている(MotherboardはNetflixに情報確認をしている)。いきなり広告を見るはめになった閲覧者は「何だこれは?」といった訝しげな反応をTweetし始めているが、どのくらいの量とどの地域でこの試験的な広告が実施されているかは把握できておらず、今後の展開も今のところ、Netflixからは聞こえてこないらしい。

昨年Netflixのchief product officerのNeil Huntは、「インターネットTVであるNetflixは消費者と直接的に関係を構築できるので広告収入の必要性はない、マーケターは広告するために異なる場所を見つける必要がある」と発言してる。これは言い換えれば、Netflixは消費者からの有料購読収入によるビジネスモデルで、今後も成長を続けられるので、「広告ビジネス」には足を踏み入れない、ということを意味する。

しかし、このNetflixの試験的な広告を見れば、この発言とは異なるシナリオが見えてくる。理由は、Netflixほど、閲覧者のprofileをきめ細かく分析して(詳細な過去のコンテンツの閲覧履歴を持っている)、最適なTargeted Adsを配信できるPublisherはなく、実際に広告ビジネスに踏み込めば、通常のケーブルTV会社よりかなりの高額のレートで広告販売が可能となるからである。Netflixにとって「広告ビジネス」ほど「甘い水」はなく、投資家も株主も大いに喜ぶ大きな収入源となる。もちろん、この場合はユーザがこれを受け入れたと仮定した場合である。

米国のTVは、消費者レベルで見れば、すでに何年も前から「Segmented Media」となっている。一般の消費者は、寡占的なケーブルネットワーク会社によって、見たくもない莫大な数のチャンネルをバンドルされて、インターネット回線とのセットで高額な契約料(人気のHBOやスポーツ番組を見たい場合は$100ぐらいになってしまう)を毎月払っている。ただし、それにも関わらず、多忙を極めて、指定された番組時間に、TVの前に座る頻度が少ない消費者が、実際に視聴しているのは、多分20チャンネルにも満たないと思う。我が家の場合も、AT&TのU-Verseのメンバーで450のチャンネル視聴が可能であるが、スポーツのライブ放送だけがどうしても見たい番組で、それ以外は夕食後のちょっとした時間つぶしでしかない。通常の広告主もTVは「Segmented Media」であることを十分把握しているので、Demographicにあわせた広告を入れており、History  Channelなんかを見ていると、シニア対象の医薬品やサプリメントの広告ばかりで、気分が暗くなる。

米国の消費者は、こうしたケーブルネットワークの囲い込みビジネスを嫌い、そこから逃れようとして、Netflixのようなインターネットによる映像配信によって、低価格で自らが好きな時間にコンテンツを視聴できるサービスに切り替え始めている。またモバイルデバイスの普及は、リビングルームの大型TVスクリーン(インターネット対応のGoogle TVやApple TVであったとしても)で家族そろって番組を視聴する機会を大幅に減らし、映像コンテンツの消費行動はかなり個人レベルに落ちている。こうした環境下で、Netflixは成長を続けており、ユーザ側のデマンドに合わせたカスタマイズされたインターネット経験の提供が、そのビジネスを牽引してきた。


私自身の日々の生活を鑑みても、ニュースや人気コンテンツをTVで見ないで、iPhoneやiPadのアプリで見る頻度が高くなり、ヴィデオ広告(=TVのコマーシャルと言い換えていい)はTVではなくインターネットで接する機会が多い。ここでもケーブルの圧力が働き、加入しているケーブルのログイン情報の入力を要求されるアプリもある。ただし、そうでないものも結構あり、無料アプリを利用している場合は、自然にPre-rollの広告が入ることは受け入れている。問題はその秒数と本数と頻度で、あまりにも長く多い本数の広告を何度も見せられると、自然とそのチャネルを見る気がしなくなる。また、こうした映像コンテンツを気軽に見ている自分の心理は、無料アプリであることが大きな前提で、有料となるとその見方は大きく変わる。

世の中には、手が込んでいて、コピペできないような、質の高い興味深いコンテンツが無料で存在するわけがなく、誰かが、どこかで、その製作と配信に、お金を払うという仕組みが必要となる。それが「広告主」なのか「エンドユーザ」なのかはビジネスモデルによって異なるが、ポイントは「エンドユーザの視聴したいという欲求と行為を邪魔しない」という点にある。ユーザは、その「ビジネスのカタチ」に納得したら、その代償として広告をきちんと受け止めるか、あるいはお金を自らで払う。

Netflixの将来(あるいは近々)の「広告ビジネス」が、契約者であるユーザと、うまく折り合いをつけて、どのように着地するのかは気になるところである。個人的には、早くこの「ケーブルTVのバンドル地獄」から逃れて、アラカルトでTV番組を選べる仕組みに移行したい。オンデマンドのインターネットで映像閲覧はもちろん気に入っているが、時には「PassiveなTV視聴(カウチポテト状態)」というダラダラ感も捨てがたい、これも本音の1つである。

    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

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