ひさみをめぐる冒険
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ひさみをめぐる冒険
サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



netflixの試験的な広告配信に関して感じたこと

6/2/2015

 
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Netflixが、試験的に広告をヴィデオ視聴の前後に流し始めた。Netflixは、HBOモデルで、オリジナルプログラムのプロモーションのためのTrailer(予告編)のみを流し、「第三者の広告」を配信する予定はないとしている(MotherboardはNetflixに情報確認をしている)。いきなり広告を見るはめになった閲覧者は「何だこれは?」といった訝しげな反応をTweetし始めているが、どのくらいの量とどの地域でこの試験的な広告が実施されているかは把握できておらず、今後の展開も今のところ、Netflixからは聞こえてこないらしい。

昨年Netflixのchief product officerのNeil Huntは、「インターネットTVであるNetflixは消費者と直接的に関係を構築できるので広告収入の必要性はない、マーケターは広告するために異なる場所を見つける必要がある」と発言してる。これは言い換えれば、Netflixは消費者からの有料購読収入によるビジネスモデルで、今後も成長を続けられるので、「広告ビジネス」には足を踏み入れない、ということを意味する。

しかし、このNetflixの試験的な広告を見れば、この発言とは異なるシナリオが見えてくる。理由は、Netflixほど、閲覧者のprofileをきめ細かく分析して(詳細な過去のコンテンツの閲覧履歴を持っている)、最適なTargeted Adsを配信できるPublisherはなく、実際に広告ビジネスに踏み込めば、通常のケーブルTV会社よりかなりの高額のレートで広告販売が可能となるからである。Netflixにとって「広告ビジネス」ほど「甘い水」はなく、投資家も株主も大いに喜ぶ大きな収入源となる。もちろん、この場合はユーザがこれを受け入れたと仮定した場合である。

米国のTVは、消費者レベルで見れば、すでに何年も前から「Segmented Media」となっている。一般の消費者は、寡占的なケーブルネットワーク会社によって、見たくもない莫大な数のチャンネルをバンドルされて、インターネット回線とのセットで高額な契約料(人気のHBOやスポーツ番組を見たい場合は$100ぐらいになってしまう)を毎月払っている。ただし、それにも関わらず、多忙を極めて、指定された番組時間に、TVの前に座る頻度が少ない消費者が、実際に視聴しているのは、多分20チャンネルにも満たないと思う。我が家の場合も、AT&TのU-Verseのメンバーで450のチャンネル視聴が可能であるが、スポーツのライブ放送だけがどうしても見たい番組で、それ以外は夕食後のちょっとした時間つぶしでしかない。通常の広告主もTVは「Segmented Media」であることを十分把握しているので、Demographicにあわせた広告を入れており、History  Channelなんかを見ていると、シニア対象の医薬品やサプリメントの広告ばかりで、気分が暗くなる。

米国の消費者は、こうしたケーブルネットワークの囲い込みビジネスを嫌い、そこから逃れようとして、Netflixのようなインターネットによる映像配信によって、低価格で自らが好きな時間にコンテンツを視聴できるサービスに切り替え始めている。またモバイルデバイスの普及は、リビングルームの大型TVスクリーン(インターネット対応のGoogle TVやApple TVであったとしても)で家族そろって番組を視聴する機会を大幅に減らし、映像コンテンツの消費行動はかなり個人レベルに落ちている。こうした環境下で、Netflixは成長を続けており、ユーザ側のデマンドに合わせたカスタマイズされたインターネット経験の提供が、そのビジネスを牽引してきた。


私自身の日々の生活を鑑みても、ニュースや人気コンテンツをTVで見ないで、iPhoneやiPadのアプリで見る頻度が高くなり、ヴィデオ広告(=TVのコマーシャルと言い換えていい)はTVではなくインターネットで接する機会が多い。ここでもケーブルの圧力が働き、加入しているケーブルのログイン情報の入力を要求されるアプリもある。ただし、そうでないものも結構あり、無料アプリを利用している場合は、自然にPre-rollの広告が入ることは受け入れている。問題はその秒数と本数と頻度で、あまりにも長く多い本数の広告を何度も見せられると、自然とそのチャネルを見る気がしなくなる。また、こうした映像コンテンツを気軽に見ている自分の心理は、無料アプリであることが大きな前提で、有料となるとその見方は大きく変わる。

世の中には、手が込んでいて、コピペできないような、質の高い興味深いコンテンツが無料で存在するわけがなく、誰かが、どこかで、その製作と配信に、お金を払うという仕組みが必要となる。それが「広告主」なのか「エンドユーザ」なのかはビジネスモデルによって異なるが、ポイントは「エンドユーザの視聴したいという欲求と行為を邪魔しない」という点にある。ユーザは、その「ビジネスのカタチ」に納得したら、その代償として広告をきちんと受け止めるか、あるいはお金を自らで払う。

Netflixの将来(あるいは近々)の「広告ビジネス」が、契約者であるユーザと、うまく折り合いをつけて、どのように着地するのかは気になるところである。個人的には、早くこの「ケーブルTVのバンドル地獄」から逃れて、アラカルトでTV番組を選べる仕組みに移行したい。オンデマンドのインターネットで映像閲覧はもちろん気に入っているが、時には「PassiveなTV視聴(カウチポテト状態)」というダラダラ感も捨てがたい、これも本音の1つである。

台本なしの今日のオバマ大統領と共和党の質疑応答は真のリアリティTVです

1/29/2010

 
C-Spanは、ワシントンの政治家たちのリアリティを、淡々とTVカメラで映していますが、ヒートアップした政治家の言動は、単なるリアリティTV番組より面白く、最近最もホットな「政治劇場」と言われています。今日の台本なしのとの質疑応答は「飛んで火にいる夏の虫と」思っていたはずですが、この夏の虫は火の中で、嬉しそうに飛び回り、周囲を大いにかき回した、という感じです。

また少なくとも、大統領が共和党の言い分に聴く耳を持って、彼らの陣地に出かけたことはポイントで、さらにホワイトハウスがかなりプッシュして、TVカメラが入ったことが成功の要因です。このC-Spanの放送の良さは、そこには政治評論家やTVレポーターといったバイヤスがかかる人たちが存在しない点です。最近のケーブルTVが「ゴングショウ」的で、極端な政治志向に走りやすい中で、ありのままの政治家の姿が映し出されるC-Spanは、視聴者が自分で目で見たことを、自分のアタマで考えることができます。

「密室の中の政治」とは古臭い言葉ですが、民主党が「ヘルスケアのリフォームの論議」で共和党を締め出して、密室で話し合ったことは多くの批判を呼びました。オバマ政権が打ち出す「政治の透明性」を強化する上でも、このC-Span的な作りこみのないカメラを入れて、国民にありのままを見せのは、信頼の獲得の上でも好ましいと思います。

今朝は米国の第4四半期のGDPが5.7%の成長率と、過去6年間で最も速いペースであるというニュースが入ってきて、ちょっと気分が明るくなりました。

もちろん失業率は相変わらず二桁で、「雇用創出」が最も大きな米国民の願いであることは変わりません。ただし、大統領は、おとといの一般教書演説で、「リセットボタン」を押して、米国民と「Re-engagement(再エンゲージメント)」を試みました。その直後のGDPのグッドニュースですし、今日大統領は共和党とFace to Face(対面)で、TVカメラを入れて、1時間半にわたってスピーチおよび質疑応答を行っています。

「Twitter vs. TechCrunch」と化したTwitterのハッキング情報公開問題

7/17/2009

 
過去3日間ブログ圏をにぎわした「ハッカーによるTwitter社内の機密書類盗難および漏洩事件」は、いまや「Twitter vs. TechCrunchの倫理観の相違」といったカタチに推移して、益々ヒートアップしています。

TechCrunchの公開したTwitterの盗難ドキュメントの内容は、以下のTechCrunchのポスティングに詳細がでていますは、これを読むと、「Twitterの社内会議」を盗聴しているような錯覚に陥るぐらい、Twitterがパブリックに出したくない情報が満載です。

  • by Erick Schonfeild on 7/14: Twitter's @Ev Confirms Hacker Targeted Personal Accounts; Attack Was "Highly Distressing."
  • by Michael Arrington on 7/14:In Our Inbox: Hundreds Of Confidential Twitter Documents
  • by Michael Arrington on 7/15: Our Reaction To Your Reaction To the Twitter Confidential Documents Post
  • by Michael Arrington on 7/15: Final Tweet: The Twitter Reality Tv Show Pitch
  • by Michael Arrington on 7/15: Twitter's Financial Forecast Shows First Revenue In Q3, 1billion users in 2013
  • by Erick Schonfeld on 7/16: Twitter's Internal Strategy Laid Bare: To Be "The Pulse Of The Planet"


TechCrunchのArringtonは、「Twitterと話し合って、結果ニュース価値のあるものを公開しており、個人情報として公開すべきでないものは出していないとコメントしています。彼の論点は、TechCrunchのようなニュースサイトは、日々『盗まれた情報』、例えば社員や企業の関係者が漏らした情報を得て、読者に真っ先に価値のある情報を報道している。その観点から考えると、今回の「盗まれた情報」も通常のリークされた情報と変わらず、その観点で選択した情報を公開した」と言っています。情報公開に関する読者や有識者の多くの批判への返信コメントですが、改めて上記のポスティングを読むと、Twitterの社内以外に、ポテンシャルパートナー(AOL、Dell、Ericsson、Nokiaなど合意書を取り交わしている)、さらに今後ディールすべきGoogle、Facebook、MSといった名前の企業とのやり取りが、すべてポスティングされており、経営者として誰でも顔が真っ青になるものです。

TwitterのCEOのEvan Williamsが、TechCrunchが機密書類を公開したことに関して、以下のように「誰もどんな情報を公開してよいという許可を出していない」とTweetしていますが、このTechCrunchとの争いは、今後大きな火種を生みそうです。ちなみに彼、および彼の奥さんのプライベートな記録もハッカーに盗まれています。

@TechCrunch @arrington “we have been given the green light by Twitter to post this information” What?! By whom? That’s not our understanding

公開文書には「Twitterが2013年に10億人のユーザを獲得した場合、地球という惑星の『Pulse(脈拍・鼓動)』となる。それは、『Alert system(警告システム)』ではなく、『Nervous sysem(神経系統)』という役割を持つ。」というフレーズもあり、スクリーンショットの掲載とともに、Twitter内部の生々しいディスカッションの様子が垣間見れます。Twitterという今最も注目されている企業は、ハッカーの最も標的となりやすい会社ですし、Twitterは5月にも一度ハッキングされており、セキュリティの甘さは否めないと思います。

ポスティングの中で、Twitterが自問自答するように「Are we building a new Internet?(我々は新しいインターネット世界を作ろうとしているのか?」というフレーズがあり、なるほど気分はそんな感じなんだと妙に実感しました。

Super Bowl(スーパーボウル)CM

2/5/2007

 
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結局昨日は、ゴールデンゲイトに入ってくるQueen Mary 2 (QM2)を見に行かずに、自宅で、スーパーボウルのCMを見るために、TVの前に張り付きました。(自分で撮影できませんでしたが、サンフランシスコクロニクルの撮影したQM2の写真は素晴らしいので、記念に掲載させてもらいます。)

普段はCMが入ると、他のチャネルに変える私が、昨日は逆で、フットボウル自体に興味がまったくないため、CMからゲームに変わると他の番組にスイッチするという逆TIVO状態で、だらだらとカウチポテトしてしまいました。

それでも、CMを見るためにTVを見るという状態は耐えがたく、途中でカウチで眠りこけてしまいました。夫がちょうどPrince(プリンス)のハーフタイムショウの時間に仕事から戻り、2人で後半を見ましたが、何だかちっとも面白くなく、途中でCMを見ることもあきらめてしまいました。夫には、「明日の朝、YouTubeでみるから、もういいや」と言って、マーケティングのプロとして、ライブでスーパーボウルのCMを見ることを放棄してしまいました。

結果、今日は朝から全部のCMをYouTubeで見ましたが、49本もあるので、見るだけでも、なんだかんだ30分はかかりました。このページでは、ユーザの投票が、今行われています。明日の火曜日に人気CMのランキングがYouTubeのホームページで発表されますので、参加したい方はぜひ投票してください。

私は、個人的には、DoritosのCGC (Consumer Generated Commercial:消費者制作コマーシャル)である#22「Check Out Girl」が、奇を衒ってなくて、シンプルでわかりやすく製品をダイレクトに訴求していて、好きです(ドリトスは一般からCMを募集して、今回のスーパーボウルでオンエアするCGCコンテストを実施しています)。特にこのCMのチェッカー役の女性の表情に妙なリアリティとユーモアがあって、かなり気にいっています。

他のいろいろなCMは、結構手を変え品を変えて制作していますが、マンネリ化したコンセプトや懲りすぎてかったるい感じのものや、また極端にEdgy(とんがりすぎている)で、何だかちっとも楽しめず、結構がっかりしました。ただ、私はスーパーボウルのターゲットオーディエンスではないので、実際のターゲットの反応をチェックしないと、何ともいえませんが、これは、また仕事がらみでフォローアップします。

YouTube時代の消費者は、いつでも、どこでも「オンエア」されたものを、見られるので、それは非常に便利ですが、なんだか「ライブ」の感動がなく、むなしく感じるのは、私だけなのか?と、今朝は自問自答しています。

ゴールデンゲイトにQM2を迎えにいった400艘のセールボートのように、私たちも、233年前、西洋の船が初めてサンフランシスコ湾に入って以来最大の船QM2を見に行けばよかったと、今朝は結構「レバタラ」状態です。


    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

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