ひさみをめぐる冒険
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ひさみをめぐる冒険
サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



旧友の再会:2007年のSteve(スティーブ)とBill(ビル)

5/31/2007

 
今朝のサンフランシスコクロニクルのトップは、20年ぶりに、F2F (Face to Face)で、「D: All Things Digital conference」 のステージに立ったSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)とBill Gates(ビル・ゲイツ)の顔写真です。

今週アタマから、どんな会話が飛び出すかと、メディアやブログで多くのバズが起きていた2人は、ともに51歳となって、旧友が久しぶりに再開したようなフレンドリーな感じで、リラックスした姿をみせてくれました。

2人の好対照なキャラクターは、その服装や話し方にも良く現れていて、スティーブのトレードマークの黒のタートルネックシャツとジーンズ、ビルのブルーのストライプのシャツに黒のパンツというテックギークなファッションは、今さらながらに2人を示唆しています。天才マーケッターのスティーブが話し始めると全ての注目が彼に行ってしまいますが、最初にビルが、「I'm not a fake Stece Jobs(私はスティーブジョブズのまねはしない)」と言って、大いに笑わせます。

おすすめは、プロローグとして、彼らがステージに立つ前に流された、「1983年のマッキントッシュ・ソフトウェア・デーティング・ゲーム」のヴィデオです。27歳のスティーブとビルが登場して、本当に楽しげな様子で、壇上で語り合っています。2007年の2人は、過去30年間の道のりで、お互いにおのおの辛い時期に、助け合ったことを素直に語り、さまざまなジョークの中に歴史の重さを感じました。

2人の関係は?と聞かれて、スティーブは、ビートルズの曲「Two of Us」を引用して、ちょっと言葉に詰まるほど、2人の長い長い30年間の道のりを懐古していました。

"You and I have memories, longer than the road that stretches out ahead."

30年前は、私のようなごく普通の人間が、コンピュータを使うなんて、夢のまた夢の時代でした(私が1979年に新入社員として入社した時に、社内にFaxマシーンもなく、上司が「女の子を、今から行かせます」という言葉とともに、文書を持ってクライアントのところへ走りました。そうです、私は当時のFaxであり、今のEmailの役目を担っていました)。

今日は、2人のヴィデオを見ながら、そんな時代をちょっと振り返って、改めて夢の実現のために走り続けた2人に、心から感謝しています。

PS: スティーブが、「かつてはミーティングルームで最年少だった自分が、今はいつも最年長だ」と発言していますが、これは私がいつも言っていることです。これは、50代に入るとつくづく実感することです。特に、テクノロジー業界は、CEOたちが若く、GoogleのFoundersに代表されるように、Generation X & Yが主流です。Bommersの2人は、やはり時代を感じさせます。

父の言葉「カタチあるものは壊れる」、私の言葉「カタチのないものは壊れない」

5/24/2007

 
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「カタチあるものは壊れる」、この言葉、私が子供の頃、お茶碗やお皿を割った時に、必ず父が言う言葉でした。

父は、この後さらに、「日常使いの器が壊れることを恐れるならば、その器を使う・所有する資格がない。自分の身の丈にあったものを使う。それが大切」と言って、お客さんが来た時だけに使う高価なブランド物の食器を嫌がっていました。

今朝、夫は、私が日本から持参したみどりの小皿を床に落として、割ってしまいました。私は思わず父の口癖「カタチあるものは壊れる」と日本語で、叫んでしまいました。夫は、意味がわからず、「Sounds like serious(何だかシリアスな言葉だね)」と言うので、父の言葉を説明しました。

彼はいきなり、毎朝使っているお気に入りの備前焼きの湯のみ茶碗と急須を見ながら、「君のお父さんの言葉は、僕に一つのことをリマインドさせた。この大好きな備前は、いつかは壊れてしまうということ。そうすると、同じ作家(末石泰節)に注文しても同じものは手に入らないということだ。」

夫はさらに続けて「普段使うのは、別のにしたほうがいいかも。壊れても、惜しくないものにしよう」。父の言葉は、急に我が家の食器使いに大きな変化をもたらしました。

「カタチのあるものは必ず壊れるならば、カタチのないものは壊れないのか?」これが今朝の私の疑問です。「カタチのないもの」と考えて、真っ先に浮かんだのは、「愛情」です。確かに18年前に亡くなった父に対する愛情は、彼の生前も含めて、一度も壊れたことがありません。今は、夫に対してもしかりです。「カタチのないものは壊れない」のトップに、「愛情」を持ってくるのは多少危険ですが、壊れて欲しくないもののトップであることは確かです。


オンラインショッピングとクリックスルーの話

5/18/2007

 
オンラインショッピングの様相が、大分変わって来ています。

14日に発表されたForrester Researchの調査では、初めてオンラインショッピングで、「ファッションアイテム(衣料、靴、アクセサリ)」が、「テック関連製品(コンピュータ関連のハードやソフト)」を抜いたということです。これは、オンラインショッピング史上初めてのことで、確かに私も毎日の生活でそれを実感します。

もうインターネットは、Geek(オタク)な男性たちの世界では、とっくになくなっており、むしろ電気、水道、ガスなどのUtility(公益事業)に近い感覚で、年齢・性別に関係なく、ごく普通の人たちの日常生活にどっぷり定着しています。特に、スペックが良くわかっている書籍・音楽・旅行関連製品に限らず、ファッションアイテムや日常必需品(トイレットペーパーや洗剤まで)を、オンラインで購入するのも、何ら抵抗がなく、オンとオフの差はどんどんなくなってきています。以下は調査の数字です。

  • 2006年オンラインショッピング: 2,199億ドル(26兆3,880億円)(25%増)
  • 2006年トラベル関連製品を除くと: 1,465億ドル(17兆5,800億円)
  • 2007年オンラインショッピング: 2,590億ドル(18%増)(31兆800億円)
  • 2007年トラベル関連製品を除くと: 1,745億ドル(21兆940億円)
2006年のトラベル関連製品を除いたオンラインショッピングの業種別順位:

  1. ファッションアイテム: 183億ドル(2兆1,960億円)
  2. コンピュータ関連(ハード& ソフト):172億ドル(2兆640億円)
  3. 自動車・自動車部品: 167億ドル(2兆40億円)
  4. 家具関連製品: 100億ドル(1兆2,000億円)
円換算1ドル=120円

これだけ、オンラインショッピングが日常化していると、当然オンライン市場で小売店同志の競争も激化していきます。こうしたオンライン小売店舗が頻繁に使用するのが、インターネットの検索広告のクリックスルーです。Google(グーグル)の今日の繁栄もひたすらこれに依存していますが、Yahoo!(ヤフー)やそれ以外の主要な検索方広告を配給するウェブサイトの10~15%は、一般ユーザによるものではなく、不正な方法によるクリックである、という数字が、信用調査の代理店であるFair Isaacから、発表されました。

グーグルは、Fraud-Detection(不正行為の防止)システムで、そうした不正のクリックスルーはフィルターをかけているので、広告主に対して決してオーバーチャージしていないとし、またそのフィルターにかかる不正率は10%以下だと発言しています。ヤフーは、この不正クリックをあらかじめ計算して、最初から12~15%を差し引いて、広告主に請求していると答えています。

Fair Isaacは、彼らのファイアーウォール内で、フィルタリングや防止ができたとしても、彼らの外のマーケティングのネットワークサイトへ、広告がデリバリーされた後は、コントロールが効かなくなると、分析しています。

競争相手が、大量にクリックして、相手の広告金額を使い果たすという、オンラインならではの不正行為ですが、オンラインの日常化は、さまざまな戦術が生み出します。

そうです、マーケティングの世界は、常に「モグラ叩き状態」で、安住できない世界です。常に創意工夫をして、努力を怠らない、これしかないようです。




Bike to WorK (自転車通勤)

5/17/2007

 
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今朝も、4時半に起きた夫は、元気よく、自転車で会社に向かいました。毎朝、5時半に夫を見送るのは私の日課で、路上に飛び出す夫に向かって、大きな声で「Have a good day! 行ってらっしゃい、気をつけて!」と英語と日本語で叫びます。まだ暗いうちに、バックパックを背負って、自転車をこいでいく夫の後ろ姿を、しっかり確認した後、家の中に戻ります。

今日は、サンフランシスコベイエリアの13回目の「Bike to Work(自転車で職場に行こう)」の日です。

地下鉄のBARTの駅、フェリー乗り場、バイクショップなどに、191の「Energizer Stations(エネルギー補給ステーション)」が設置されて、無料で、コーヒー、ジュース、ベーグル、エネルギーバーなど、バイカーに自転車をこぐためのエネルギーを補給します。

今日は推定10万人がバイカーとして職場まで、自転車をこぐと予想されており、1ガロンが4ドルまで跳ね上がり、空気汚染および化石燃料消費につながる自動車に代わって、自転車で通勤することは、「エコフレンドリー」として暮らすための大きなステップです。また、肥満が大きな問題となっている米国で、自転車で行動することは、健康のためにも非常によく、我が家も週末は夫と2人で、自転車で動き回っていますが、自転車に乗ること自体が非常に楽しく、まるで子供時代に戻ったみたいな感じで、1挙3得です。

日本と違って、公共の交通機関が発達していない米国では、地下鉄や列車の駅まで行くにも、距離があるためクルマを運転しながら駅まで行くのが普通で、自転車通勤が可能な人は非常に限られています。そんな状況下ですが、どこまで「Green(エコフレンドリー)」になるかが、今年の米国民の大きな関心事で、企業もどんどん自転車利用を奨励する施策を奨励しています。

Google(グーグル)の「エコフレンドリー志向」は有名ですが、自転車通勤を大いに奨励しています。「Business Week(ビジネスウィーク5/21号)」によれば、、社員をピックアップするシャトルバスには、自転車用のラックはもちろん用意されていますし、毎月自転車修理のクラスも設けたり、自転車通勤を20日間実施すると、100ドルを自転車通勤者の選択したチャリティに寄付したり、さらにシャトルバスのないヨーロッパでは、1000台以上の無料自転車を社員に提供したりと、さまざまなカタチで自転車通勤を奨励しています。マイクロソフトの共同創設者で、チャリティ事業を多く手がける億万長者のPaul Allen(ポール・アレン)は、自身のビジネスおよびチャリティプロジェクトを管理する会社Vulcan(ヴァルカン)で、自転車通勤、あるいはクルマで通勤しない人に対して、毎月100ドルのチェックを送っています。

うちの夫が勤務する会社でも、自転車購入や既存の自転車の修理代として、社員に200ドルを渡して、自転車活用(彼の会社は船舶の修理をする会社で、シップヤード内の移動に自転車が利用されています)を、大いに奨励しています。夫のように、会社まで自転車で30分で通える人は、稀ですが、さまざまなところで、エコフレンドリーな自転車活用が始まっています。

さあ、週末はまたアイランドを、自転車で走り回るぞ。



1983年のスティーブと1984年のビル

5/11/2007

 
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YouTubeの賛否両論はありますが、つい便利なので検索代わりに多く利用しています。 この写真は裏庭で栽培しているハーブです。若さを表現する時に、英語で「Green」という言い方をしますが、グリーンな2人を、偶然YouTubeで発見しました。超有名人の23年、24年前のヴィデオは、掘り出しものだのと思うので、URLを下にペーストしておきます。しかし、性格がよく出ていて、とても面白い。
http://www.youtube.com/watch?v=lSiQA6KKyJo

1983年のアップルのコンファレンスで、Steve Jobsが、あの伝説的なマッキントッシュの広告「1984」を紹介した際のヴィデオです。スタートの音楽が80年代らしくおかしいです。彼は私より1歳年上ですので、この時は28歳です。でもずーと若く見えます。

http://www.youtube.com/watch?v=Uau0aIbrzkQ&NR=1

これは、Bill Gatesが、アップルのマッキントッシュが最高なPCだとを語っているヴィデオです。彼もスティーブと同じ1955年生まれですので、この1984年制作のヴィデオ時は、29歳です。この当時は彼はマッキントッシュを持っていたと思われます。しかし、彼もずーと若く見えます。


「エコガーデニング」と私の昔話

5/10/2007

 
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日本がGWで連休だったので、私もすっかりスローになって、コンピュータの前から離れて、のんびりしていました。この写真は、裏庭のFuchsia(フューシャ)です。うち夫のお気に入りの花で、今が盛りときれいに咲いています。

連休中は、夫と2人で、ちょっとベイをセーリングしましたが、久しぶりに冷たい海風に当たりながらヘルムをとって気分爽快、週末は、自転車で、我が家のあるAlamedaの島中を3時間ぐらい走りまわって、大いに脛を鍛えました。

さらに、今年の我が家のテーマでもある、「Green(グリーンに=エコフレンドリー)」の実践で、トマト、キュウリ、ガーリック、ストロベリーという野菜や果物、さらにカリフォルニア・ポピーやカリフォルニア・ラベンダーという土地のネイティブな花々を、自前の堆肥を使って、裏庭に植えました。無駄なガソリンを使わず、地球に何か良いことができて、さらに収穫時には新鮮でおいしいオーガニックなものが食べられる。もっと良いことは、ガーデニング自体が楽しく、汗水流して身体を使うのでエクササイズにもなる、エコ・ガーデニングは、一挙四得です。

手袋ははめていますが、いろいろなことをやっているうちに、手袋なしで作業してしまうこともあり、爪には泥が入り込むし、巨大なミミズとの対面も多く、夫が彼らは土を耕してくれる良い虫だと教わると、遭遇にも喜びがわいてきます。自家製の堆肥も、卵の殻、野菜や果物の皮、落ち葉などでつくっているので、最近は家から無駄なごみが大分なくなっています。ボトルの水やスパークリングウォーターももう買わないし、とにかく、少しでも地球にとって害のないことをしていきたいと思います。

日本に住んでいた頃は、バブル時代に広告代理店に勤務していて、若さもあいまって、毎晩のように夜中の2時頃、青山や霞町に出没しており、「エコフレンドリー」なんて言葉は、その頃の私にはありませんでした。当時の私のお気に入りは、南青山3丁目の「バーラジオ」です。バーテンダーの尾崎さんは、「バーラジオのカクテルブック」を出したほどの名バーテンダーで、マスコミ関係者や著名人が多く集まっており、20代の私は「あのドア」を開ける時は、結構気合を入れながら、押したものです。

今ふっと、急に昔のことがアタマを横切りました。当時(1980年)ミリオンセラーとなった「なんとなくクリスタル」で一躍有名作家になった田中康夫氏が、よく1人でカウンターで飲んでいたことを思い出しました。彼は、私と同い年で(1956年生まれ)、バーラジオのカウンターの一番はじっこで、周囲の人たちに十分見られているのを意識しながら、それに気がつかないふりをして、カクテルを飲んでいる姿が印象的でした。

彼が政治家への道を歩むきっかけとなったのは、1995年の「神戸大震災」で、被災地におけるボランティア活動での経験によって、政治活動に関わっていったということです。私は同じ年に米国に移住しており、彼の政治活動は米国から間接的に見聞きしているだけで、コメントは特にはさめませんが、南青山3丁目時代を共有する私から見ると、彼はずいぶん環境に適応して、「進化している」と感じます。

私も1995年以来、米国という社会環境に適応するために、かなりの速度で「進化」しつつあり、週末泥だらけになっている最近の私にとって「エコフレンドリー」という言葉の重みは、増しています。社会的生物である「ヒトの進化」は、いろんなカタチであり、27年もたちましたが、南青山3丁目のお酒が無駄ではなかったような気がします。

なんとなく、今日は「バーラジオ」に乾杯したい気分です。



「ひさみをめぐる冒険」の名前の由来

5/10/2007

 
さっき、27年前の田中康夫さんと「バーラジオ」での遭遇を書いたので、ついでに、「ひさみをめぐる冒険」というタイトルをつけた、33年前の昔話をします。

この題名は、確かに村上春樹さんの「羊をめぐる冒険」にちなんでいます。私は、春樹さんとは彼が作家になる前に多少縁がありました。1974年、彼が国分寺に開いたジャズバー「ピーターキャット」が、その縁があった場所です(ちなみに私の実家は国分寺で、今でも日本出張の際には実家に泊まっています)。私は大学時代、かなりジャズに狂っていて、いろんなジャズ喫茶(当時三寺と言われた「国分寺、吉祥寺、高円寺」、それに新宿)に入り浸っていました。村上さんがピーターキャットを開いた頃、私は18歳で、当時奥さんの陽子さんと2人でお店をやっていて、ローソクの蝋の塊を集めたデコレーションがある、地下の暗くておしゃれなジャズバーでした。

当時18歳の私は、1学年上のベースを弾く男の子に、密かにあこがれており、その彼が「ピーターキャット」に、私を連れて行ってくれました。彼は当時ガールフレンドがいて、私とは単なるジャズが好きな友人として、親しくしてくれただけですが、自分の想いを告白できない私(今と違ってかなり純情だったようです)は、彼が先に帰った後に密かにマスターだった春樹さんにその悩みを相談しました。春樹さんは、通常お料理をつくっていて、ほとんどお客さんとは話さない方でしたが、なぜかその時だけは、私の悩みに対して、「自分の気持ちに正直にふるまったら」と一言、答えてくれたのを記憶しています。彼は1949年生まれで、私より7歳上で、計算するとまだ25歳の若さでお店を開き、ティーンネージャーの私の子供ぽい悩みを聞いてくれたことになります。

彼は1977年に千駄ヶ谷にピーターキャットを移して1981年までお店をやって、1979年「風の歌を聴け」で群像新人賞をとり、作家としてデビューしています。33年前、私は国分寺のピーターキャットのマスターが、作家になるとは思いもよりませんでした…

こんな奇妙な縁もあり、さらに1995年に米国に移住して以来、私は毎日が冒険という気分だったので、最初の書籍のタイトルを「ひさみをめぐる冒険」にしました。

国分寺のピーターキャットのことは、「村上春樹の世界 国分寺を歩く」に、写真や詳細な記述があるので、ご興味があるかたは、ぜひご覧ください。ピーターキャットがあった当時の国分寺は、アングラ系のEdgyでユニークなお店が、南口に固まっていて、「ほんやら洞」や「寺珈屋」でよく珈琲を飲んで時間をつぶして、「グルマン」のカレーはおいしかったという、思い出があります。今は、すっかり変わってしまって、面影がなくなってしまいましたが、「ピーターキャットの暗さ」は、今も私の頭の中にイメージとして、残っています。

PS: 村上春樹さんの作品は、私は20代(1980年代)の時に夢中になって、読みました。上記の「羊をめぐる冒険」や「風の歌を聴け」は当然のことながら、「1973年のピンボール」、「ダンス・ダンス・ダンス」と、一連の作品の登場する「僕」、「鼠」、J's Barのバーテンダーの「ジェイ」とか、目くるめく人物が、白昼夢のように、私のアタマの中を駆け巡ったことを思い出します。さらにあの緑のバックに赤の縦書きのタイトルというソフィスティケートな装丁の「ノルウェイの森」。書き出すときりがないし、彼の作品のことはいろいろな著名な方たちが書いているので、この辺でやめておきます。

今は、世界的な作家になってしまった春樹さんですが、国分寺のピーターキャットに思い出を持つ私は、手の届かなくなった世界にいるような気がして、なんとなく寂しい気持ちがします。でも、どんどん素晴らしい文筆活動をしているので、もちろん、サンフランシスコベイエリアの島Alamedaに住む私は、陰ながら彼を応援しています。

ズボン一着分で6,500万ドル(78億円)の訴訟を起こす訴訟天国アメリカ

5/4/2007

 
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我が家の裏庭の巨大で奇妙な植物ですが、花が咲きました。

今朝の新聞をみて、本当にびっくりしました。ワシントンDCでドライクリーニング店を営んでいる韓国人Chung一家に対して、自分が預けた一着のパンツがなくなったとして、判事が6,500万ドル(78億円)の訴訟を起こしたという記事です。

こんな訴訟が起こりえること自体が、この国の訴訟天国のアホらしさを如実に現しています。2003年にコラムでも書きましたが、日本の弁護士は2万人弱、米国はその45倍以上にあたる90万人以上の弁護士が存在します。弁護士の国民1人当たりの割合は、日本では約6,300人に1人、米国では約290人に1人の割合となり、石を投げれば弁護士に当たるのが米国社会です。

この韓国人のドライクリーニング一家の悲劇は、この原告がたまたま判事であったために、始まったような気がします。2年前に、この判事Roy Pearsonは、数着のスーツのリフォームを、このCustom Cleanersに頼み、一着のパンツが仕上がり予定日の2日後になっても出てこなくて、彼はその弁償として1000ドル(12万円)をChung に要求します。Chungは、一週間後にパンツが見つかったとして、彼の弁償金の支払いを拒否しますが、それが気に入らないPearsonは、訴訟を決意します。Chungは、訴訟を避けるために、和解金として、最初に3,000ドル(36万円)、その後4600ドル(55万2000円)、さらに1万2,000ドル(144万円)を提示しましたが、Pearsonはそれに満足せず、彼の独自の計算(彼は、他のクリーニング店に行くためにクルマをレンタルして10年間通った場合のコストと、ワシントンDCの消費者保護法による一回の違反1,500ドル(18万円)受け取れるなど、さまざまな罰金まで計算にいれている)で、累積金額が6,500万ドル(78億円)という馬鹿げた金額をはじき出して、訴訟を起こしています。

Chung一家は、もうこれ以上の法的な争いおよびその出費のために、米国にいることも出来ず、さらに精神的にひどく傷つけられたとして、韓国に戻るという話です。これは、本当にひどい話ですし、もちろんPearsonに対して、非難が上がっており、彼を判事から罷免しろという話も出ています。ただそれ以上に、「何でもかんでも訴訟して、金をふんだっくってやる」という社会全体の意識やモラルの低さに、憤りを覚えます。

1994年に起きた有名な訴訟では、79歳の女性がファストフード店のドライブスルーで買ったコーヒーを、運転中に太ももに挟んで、蓋を開けようとして火傷して、その訴訟で64万ドル(7,680万円)を獲得した有名なケースもあります。被害者の非常識な行為が原因であっても、腕のいい弁護士がつけば、勝訴するケースが多々ある米国社会では、訴訟した方が勝ちという悲しい現実が、人々を弁護士事務所に駆け込ませます。

今回は、Pearson自身が弁護士役もやっており、通常の訴訟だと弁護士に支払う金額が莫大になりますが、それも彼には負担となりません。

私がいつも行くクリーニング店も韓国人の経営ですが、いつもかなりしつこくシミの原因を聞かれるので、私は結構おどおどしながら、彼女と応対しています。夫曰く「やっぱり、あれだけしつこく原因を聞いても、必ず最後には落ちるかどうかの保証はできないと、つっぱねる理由がよくわかった。」と納得しています。このChungのクリーニング店は「Satisfaction Guaranteed (満足の保証)」をうたっており、Pearsonは、この自分の満足の保証の分も、訴訟金額に計算しているということです。

アメリカンドリームや機会の平等を求めてやってくる移民に対して、時には情けないほど、非情で不公平なことが起こる、これもアメリカの現実です。

1ドル=120円の計算



    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

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