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サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



日米ビジネスコミュニケーション101①:ビジネスでは「行間コミュニケーション」は成立しない

6/24/2008

 
私も日本を離れて、はや13年となり、段々「日本人血中濃度」が低下しつつあり、それと反比例するように、日本に対する客観的な視点が深まっています。そんな中で、日本と米国のビジネス、特にコミュニケーションにおける違いを、これからブログしていこうと思います。米国では、よくビギナー向けのセミナーなどのタイトルに「何とかかんとか101(発音はワンノーワン)」という表現を使います。ですので、この日米ビジネスコミュニケーションのブログは、「101」というタイトルをつけて、シリーズとして、エントリしていきます。

「行間を読む」(ホモジーニアスなコミュニティで発達したテレパシーに基づく高度なコミュニケーション?)

最初のお題は「行間を読む」です。日本語の「特異性」は、「すべてを語らずに、読む人が語る人の気持ちになって類推する」、すなわち「行間を読むコト」を最高するところにあります。世界最古の長編小説の一つである「源氏物語」は、「行間を読むコト」を前提に書かれた小説で、「宮廷」という密室内でおきた出来事は、いちいち主語を書かなくても、誰のことを言っているかはすぐにわかります。読者はその曖昧な書き方の美しさに惹かれ、想像を逞しくさせて、登場人物の気持ちにのめりこんでいきます(中学高校時代の古文の時間に、私はこの曖昧さに大いに泣かされました)。

また、日本では、「沈黙は金」、「言わぬが花」、「以心伝心」、「不言実行」と言うように、「Verbal Communication(言語コミュニケーション)」を使わずに、「Telepathy(テレパシー:精神感応)」を主体にした(??)言葉を超えたコミュニケーションを重視する価値観を良しとしています。これは、非常に高度なコミュニケーションの仕方で、「ムラ」を中心とするホモジーニアスなコミュニティでは抜群の効果を発揮します。ただし、このコミュニケーションは「ムラビト」以外の人には通じないという欠点を持ち、時々この欠点を当の「ムラビト」たちが気がつかないために、「問題化」することがあります。現在の日本は、かつての地縁血縁を中心とした「ムラ」から、オフラインでは「会社や業界」、あるいは「行政組織や学校」、オンラインでは「ソーシャルネットワーク」といった新たな「ムラ」コミュニティを形成して、お互いが「日本語」という固有な言語を駆使して、「行間を読みあって」コミュニケーションしているように見えます。

英語にも、「行間を読む」の言い換えともいうべき「Read between the lines」という表現があります。ただし、米国では「相手の気持ちを察して、相手が明解に言わない部分を類推する」という考え方が非常に希薄です。ですので、日本人が期待するようなコミュニケーション結果を得ることは、なかなかできません(私は13年間米国に暮らしていて、一度もこの表現を聞いたことがありません)。多文化・多人種国家である米国では、人と人は「異なる立場や考え方」であるということを前提に人間関係を構築していくので、たまに最初から同様な価値観を持った人に出会うと、逆に驚いてしまうくらいです。

コミュニケーションにも「スピード」を求める米国

ビジネスコミュニケーションにおいて、「明解」であることは必須な要件で、会話でも文章でも「曖昧さ」を嫌います。これは、米国では、企業は四半期ごとの業績をもとに株主に対してAccountability(説明責任)を果すために、常に「スピード」を要求されていることに関連しています。この場合の「スピード」はイコール「時間すなわちお金」を意味します。ですので「スピードを維持する」ためには、「行間を読んでいる時間」はなく、極力両者の「誤解」を回避するために、古めかしい言い方ですが、「5W & 1H (Who, What, When, Where and How): 誰が、何を、いつ、どこで、どのようなやり方で行なうのか」をクリアにしたコミュニケーションが要求されます。さらに、ビジネスとプライベートを明解に切り分けているので、お互いの感情を察する機会が少ないために、メールなどにおける「行間」が見えないという点もあげられます。ですので、「相手にこれをいつまでにして欲しい」と次のアクションプランをつけてコミュニケーションするコトは、非常に重要です。逆にそれを言わないコトは、失礼にあたり、相手はそれが出来なければ、出来ないとあっさり、答えてきます。「出来ない」と答えるコトは、別に悪いことでも恥かしいことでもなく、単にそれは事実であると、アメリカ人は思っています。

また、英語はユニバーサルな言語で、必ずしても英語が母国語でなくても、英語圏のカルチャーを知らなくても使える便利なコミュニケーションツールです。ですので、アメリカ人は外国人の英語に対して寛容です。なるべく明解にコミュニケーションするためには、装飾的な文章は避けて、箇条書きなどを駆使した簡潔な文章が、逆に喜ばれます(外国人が書くメールにおける文法の間違いは、全然問題ありません)。

「空間コミュニケーション」への対処の仕方

日本からさまざまな方のメールが送られてきますが、最も難しいのは、「相手が私に何を求めるているか、皆目見当がつかないメール」をもらった場合です。最後の言葉は「よろしくお願いします」となっており、「何をよろしくして欲しい」のか、さっぱり分からず、一生懸命読み直して、相手の意図を探ろうとしています。すでに面識のある方の場合は、何とか類推が可能ですが、面識のない方のメールは、まさに雲をつかむようなもので、「行間」を飛び越えて、「空間を読む」という状態になります。

通常は、「これこれこういうことでしょうか?」と箇条書きで、相手が私に期待していることをサマライズしますが、時にはこれすら出来ない場合があります。そういう「空間を読む状態」に陥った場合は、「大変恐縮ですが、私に何を期待あるいは依頼されているのか、詳細をご連絡ください」と正直に書いて返信します。これは、面識のない方だけに限らず、度々会っても、必ず「空間コミュニケーション」になる人はいます。そういう場合は電話でもF2F(対面)のミーティングでも「暗号解読」を行ない、必ずコミュニケーション内容をMinutes(議事録)にして、後でメールします。これは日米を問わず、重要なことなので、必ず実行するコトをお薦めします。

基本は「相手に負担をかけないコミュニケーション」

コミュニケーションの基本は、「なるべく相手に負担をかけずに、自分が伝えたいことを、相手に理解してもらう」ことです。「行間コミュニケーション(空間コミュニケーション)」は、「阿吽の呼吸」がないと成立しない高度なコミュニケーションで、恋愛などで多用されるべきものです。ビジネスにおいては、日米を問わず、高度なテレパシーがなくても、意志の疎通が可能な、クリアなコミュニケーションを心がけ、感情的にならずに客観的な文章を書くことが重要です。特に、メールは、一度発信した後は、決して削除出来ないので、それを十分注意して、誰から見られても問題とならないコミュニケーション、これがポイントです。



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    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

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