ひさみをめぐる冒険
  • BLOG
  • About
  • Contact

ひさみをめぐる冒険
サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



カスタマーサービスが、マーケティングそのものだ

7/24/2007

 
Picture
昨日は、朝SFクロニクルを広げたら、Unite Airline(ユナイテッド航空)の見開きの全面広告が掲載されていました。以下のように、気持ち良さそうに眠る女性のイラストレーションがどーんと正面にあり、コピーはこんな感じです。

「Flat, flat, flat.

So you can sleep, sleep, sleep.」
はっきり言って、これを見てかなりムカッときて、思わず「Give me one more blanket, please!(私に毛布をもう一枚ください」と叫んでしまいました(なぜこれを叫んだかは、このブログの後半に書いています)。

この広告はUAの国際線のビジネスクラスの新しいサービスの告知広告で、米国の航空会社では初めてシートが180度と完全にフラットになり、15インチのパーソナルヴィデオモニター、iPodのドッキングステーション、ワールドクラスの食事とワインという設備とサービスの強化をうたったものです。

私がなぜ怒ったかというと、先月の日本出張の帰りのUAでの一件があったからです。今回は米国訪問の母と一緒で、私はいつものようにUAのエコノミークラスに座っていました。この飛行機はかなり古い機種で、座席にはパーソナルモニターがついておらず、エコノミー客は昔ながらに画像の悪い大きなモニターを見るか、あるいは通路に吊り下げられている小さなモニターを見なければならないという状態でした。私たち2人は大きなスクリーンのまん前の席で、映画を見るどころではありませんでしたが、エコノミークラスで日米間をしょちゅう往復する長距離通勤者の私としては、このぐらいのことは苦にもならず、まずい食事と不親切なフライトアテンダントも含めて、UAを受け入れています(マイレージメンバーなので仕方なくUAに乗っています)。

今回、私が怒り心頭に発したのは、私の分の毛布をかけても寒さが止まらない母のために、「もう一枚毛布をください」と頼んだところ、「1座席につき毛布一枚が原則で、余分は一切ありません、他の乗客で毛布を使わない人がいるかもしれませんから、その場合にはお持ちします」という、木で鼻をくくったような答えを、フライトアテンダントから聞いたからです。

母は寒さに弱く、このまま10時間もサンフランシスコまで、このままの状態でいたら、本当に病気になると説明しても、そのフライトアテンダントの顔には、何の感情の変化もなく、余分を見つけたら持って来ますと行って、立ち去ってしまいました。私も毛布なしで寒いし、母の状態は悪くなる一方で、業を煮やした私は、再度フライトアテンダントに毛布を頼みましたが、前回と同様の説明をするので、思わず、もうその答えは聞きたくないと怒鳴って、彼女を追い返しました。

この私の怒りの声が彼女たちへアラームとなったらしく、別のフライトアテンダントが新品の毛布を持参しました。ここでのポイントは、毛布は新品だったということで、毛布を使わない乗客から持ってきたものではないという点です。彼らは当然余分の毛布を最初から用意しており、多くのエコノミー客がしょっちゅう「もう一枚毛布がほしい」と言うために、最初はお決まりの文句で断るという、UAのマニュアル通りのカスタマーサービスのひどさが見えました。毛布を持参した後のフライトアテンダントの態度は一変し、不機嫌な乗客対策のマニュアルにしたがって、急につくり笑いで感情を隠しながら、妙に親切な声音で接するために、私はますます不快になっていきました。

現代は「カスタマーサービスが、マーケティングそのものである」といわれるぐらい、カスタマーとのタッチポイントがマーケティング戦略において重要な役割を占めています。今回の経験で痛感したことは、臨機応変(母の状態を見れば、機転を利かせてすぐに毛布を持ってこれたはずです)にカスタマーに接すれば、必ずしも大きな問題にはならないのに、それが問題化するには、そこにカスタマーに対する「誠意のある姿勢」が欠けているからだと思います。この基本の欠落が、カスタマーに「不快なブランド経験」をもたらして、その企業に対する「Bad Mouth (悪口のWOM・クチコミ)」を創出する結果となります。

デルタ航空は、新たなブランディングのために、より多くのカスタマーの声を聞くよう、ウェブサイトを開設し、カスタマーの助言・意見・コメントを直接聞いています。そこから出てきたコメントは「Bigger balnkets, please(大きな毛布をください)」といった切実な意見から、企業が見落としがちなカスタマーの本音が投稿されています。

UAは、どこまでカスタマーの声を聞いているか不明ですが、長年のロイヤルカスタマーの私がただ1つ、彼らにいいたことは、寒さに震える乗客には、すぐに毛布を渡してほしい、ただそれだけです。

「GIve me one more balnket, please(毛布をもう一枚ください)」

PS: 航空会社にしてみれば、航空燃料は高いし、エコノミー客では儲からないので、ビジネスクラスで稼ごうとするのは理解できます。ちなみに以下は、サンフランシスコと成田間のエコノミーとビジネスクラスの価格の違いです。8倍近い価格の差があれば、企業がサービスを強化するのは納得できます。しかし、この差は大きすぎると思います。何とかもう少しリーズナブルにならないのかと思いますが....

  • ビジネスクラス: 7,594ドル
  • エコノミークラス: 956.23ドル


Comments are closed.

    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

    Archives

    May 2020
    April 2020
    March 2020
    January 2020
    November 2019
    August 2019
    November 2016
    October 2016
    May 2016
    April 2016
    January 2016
    December 2015
    August 2015
    July 2015
    June 2015
    May 2015
    December 2014
    November 2014
    January 2013
    November 2012
    August 2012
    May 2012
    December 2011
    November 2011
    October 2011
    August 2011
    May 2011
    April 2011
    March 2011
    January 2011
    November 2010
    October 2010
    September 2010
    August 2010
    July 2010
    June 2010
    May 2010
    April 2010
    March 2010
    February 2010
    January 2010
    December 2009
    November 2009
    October 2009
    September 2009
    August 2009
    July 2009
    June 2009
    May 2009
    April 2009
    March 2009
    February 2009
    January 2009
    December 2008
    November 2008
    October 2008
    September 2008
    August 2008
    July 2008
    June 2008
    May 2008
    April 2008
    March 2008
    February 2008
    January 2008
    December 2007
    November 2007
    October 2007
    September 2007
    August 2007
    July 2007
    June 2007
    May 2007
    April 2007
    March 2007
    February 2007
    January 2007
    December 2006
    November 2006
    October 2006
    September 2006
    August 2006
    July 2006
    June 2006
    May 2006
    April 2006
    March 2006
    February 2006
    January 2006
    December 2005
    November 2005
    October 2005
    September 2005
    August 2005
    July 2005
    June 2005
    May 2005
    April 2005

    Categories

    All
    Book
    Business
    Culture
    Current Affairs
    Game
    Green : 環境・テクノロジー
    Healthy Life
    Influencer
    JaM Media
    Marketing
    Movie
    Music
    Obama Watch
    Online
    Politics
    Religion
    SNS
    Sports
    Technology
    Travel
    TV
    Twitter
    WOM (Word Of Mouth)

Proudly powered by Weebly