クライアントの温かい言葉
12月のアタマは、先ほどのエントリーでも触れた日経新聞の誠実で聡明な記者の方とのやり取りで、気持ちよくスタートを切りましたが、2週目に思いも寄らない問題が起こり、その解決に東奔西走しました。ここで学んだことは、何年たっても自分たちだけでビジネスを運営していく難しさと、ビジネスでは毎回新たな試練が待ち受けており、常に失敗をして学ばなければならない現実の厳しさです。ただ救われたことは、この問題の事情を説明した時に、JaMのことを理解してくれたクライアントたちの温かい言葉です。ビジネスで、常に誠実に仕事をすることを心がけていた私たちにとって、クライアントの理解と信頼は何ものにも代えがたいものでした。
「たかが代理店、されど代理店」
私が1979年に電通ヤングアンドルビカム(当時のJIMA電通)に入社した時に、上司や先輩から、「たかが代理店、されど代理店」という言葉を教わりました。「代理店風情、とか、代理店のくせして」とか、言われることがあるけれども、自らは「されど代理店」という毅然とした態度で、仕事をしていくことが大切で、それを肝に銘じて行動するように、というのが最初の教えでした。これは、22歳の私にとって、非常に重要なコンセプトで、その後の私のアドパーソンとしてのビジネス行動の規範となりました。さらに、もう一つ重要なこととして、「業者」という言葉を使ってはいけない、業務上の取引のある関係会社は「パートナー」企業で、私たちを助けてくれる大切な会社で、パートナーとして尊敬して接するようにと、釘を刺されました。これは、先の「たかが代理店、されど代理店」とともに、私のビジネス上の指針でもあります。
「ヤマビコ営業にはならないぞ!」
当時広告代理店では、「ヤマビコ営業(クライアントが何か発言すると、それと同じ言葉をヤマビコのように繰り返す広告営業担当のこと。クライアントと言わず"お得意様・得意先"と呼ぶ)」が存在する、クライアント至上主義(クライアント様様)的な風潮がありました。昼夜・週末と接待とゴルフに明け暮れる彼らを眼にして、当時私は新入社員ながらも、「ヤマビコ営業」ではなく、クライアントから業者扱いされずに尊敬されるパートナーとして、営業活動をしていこうと、心に誓いました。その後、ラッキーなことにクライアントに恵まれた私は、16年間のクライアントのパートナーとして、時には議論を繰り返しながら、担当クライアントのために持てる限りの力を発揮してサポートできたと思います。
「業者扱いしたらビジネスはおしまいだ!」
こうした流れの中で、米国移住後も、「三つ子の魂百までも」の言葉どおり、終始一貫してこの2つのビジネスモットーを貫いてきました。これを良しとしてくれるクライアントとは、非常に中身の濃いお付き合いをさせてもらっています。8/24の「食い逃げ客」のエントリでも書きましたが、コンサルタントは、「intangible asset」、すなわち、私たちが過去蓄積した情報やナレッジ(私の場合は50年間)を、各々のクライアントのニーズに合わせてカスタマイズして、提供するプロフェッションです。最近受け取ったメールの中で、JaMを含めてその会社の関係会社を「業者」という言葉で表現しているのを見つけて、非常にがっかりしたことがあります。多分、その方は無意識に使って特に他意はなかったかもしれませんが、「ビジネス2.0」ともいべきパラダイムシフトが起きている時代で、「業者」というVerticalなニュアンスを感じさせる言葉を使ったら、それでビジネスはおしまいです。
パートナー企業として、Wiki的にコラボレーションする
企業間はどんな関係論にせよ、お互いがパートナー意識を持って、お互いにコントリビューションしながら、Wiki的(ウィキの語源はハワイ語の「WikiWiki(速い・形式ばらない)というコンセプト)にコラボレーションするのが、ビジネスの成功への道です。「業者」は、カスタマー企業のスペックや注文通りに製品やサービスをデリバリしますが、パートナー意識をもった企業は、その注文やスペック以上に、その依頼主の成功のために必要な物をデリバリできるポテンシャルがあります。昨年亡くなった偉大なる社会学者のドラッカー教授が無形なものの重要性を強く指摘しています。日本ではまだまだ空気と安全という目に見えにくいものをただと思う、製造業的なメンタリティーが強く残っていますが、目に見えないAsset(資産)すなわち「ナレッジ(=人間そのもの)の活用」いかんによって、今後ビジネスが大きく左右されるのは必至です。
「ひさみのお祭りマンボ」的コンサルティング
JaMは、サンフランシスコ・シリコンバレーでも非常にニッチなコンサルティング会社です。うちは「大看板で勝負する大コンサルティング会社」とは異なり、マルチカルチャーなナレッジと生活体験をもとにした消費者の真のヴォイスをベースにしたコンサルティングワークをクライアントに提供しています。その価値を理解して、うちをパートナーとして信頼してくれるクライアントと出会えたらと、常に思っています。幸い、そうしたクライアントの米国でのビジネス活動のFacilitate(促進)できる機会が2007年もあるので、これは「ねじり鉢巻そろいの浴衣」*でがんばるつもりです。
*美空ひばりのアップテンポな曲「お祭りマンボ」の一節です。私の大好きなフレーズです。
私のとなりのおじさんは
神田の生まれで チャキチャキ江戸っ子
お祭りさわぎが大好きで
ねじりはちまき そろいのゆかた
雨が降ろうが ヤリが降ろうが
朝から晩まで おみこしかついで
ワッショイワッショイ ワッショイワッショイ
景気をつけろ 塩まいておくれ
ワッショイワッショイ ワッショイワッショイ
ソーレ ソレソレ お祭りだ