昨日HPの元会長Patricia Dumnを含むHP-Gateの5名の関係者が、カリフォルニア州Attorney General Bill Lockyerより、告発を受けたことを見ても、ストックオプションを調査中のSECや連邦検察が、このシリコンバレーのアイコン的存在のAppleを、簡単に逃がすはずはないという気がします。
Appleのストックオプション操作に関する内部調査の結果とそれに関する事実は以下です。
- 1997年~2002年の間に、ストックオプションのイレギュラーの操作が15回あった(これはこの期間のストックオプション全体のアカウントの約6%にあたる)。
- CEOのSteve Jobsは、このストックオプションの操作に関して「Uunaware of the accounting implications. 」として無関係であるとして、彼自身は、バックデイトによるストックをキャンセルしており、この操作によって一切の利益を享受していない。
- Appleは、このストックオプションのバックデイトによって生まれた供与された利益を、財務報告に経費として反映させて、新たに財務報告を提出する。
- ストックオプション操作に、直接関与した財務担当のOfficers(取締役)2名はすでに退社している(名前は明かされていません)
- さらにこの期間のCFOで、現在のボードメンバーだったFred Andersonが、突然辞職した。彼はAppleの復活と現在の成功に大きく貢献して、Jobsに財務面で非常に信頼されていた人物。
このストックオプションのバックデイトは、現在進行中のスキャンダルです。Brocade Communicationsの元CEOを含む2人のOfficerがすでに訴追されているのを頂点として、シリコンバレーのテクノロジー企業を中心に100社以上が、現在SECの調査を受けています。どこまで、この調査が進んでいるか、どの企業が最も狙われているのかは、よく見えず、すねに傷を持つ会社の経営者たちは、戦々恐々としているというのが、現状だと思います。
多くの企業は社内に弁護士を抱え、社外に大きな弁護士事務所や会計事務所と契約して、様々なビジネス関連の課題を評価分析判断しているはずです。石を投げれば弁護士にあたると言われる「訴訟社会アメリカ」では、「これは合法的で違法行為にはあたらない」という言葉をしょっちゅう耳にします。こうした一連のスキャンダルを見て思うことは、弁護士たちの評価分析は、「クライアントにとって最も利益をもたらす判断と推奨」であって、必ずしも「倫理的な判断と基準に適合する」ものではないということです。
ストックオプションという大きな人参をばら撒いて、人材を集めたシリコンバレーのテクノロジー企業は、今頃になって、ドットコムバブルやITバブルのツケが回ってくるとは、思ってもみなかったと思います。私もドットコムバブル末期に、ストックオプションを受けましたが、その企業はバブルの崩壊とともに消滅したので(消滅した原因はバブルの崩壊に関係なく、ビジネスモデルが、間違っていただけです)、結果それはただの紙切れになりました。また、ストックオプションとフィーのコンビネーションで、プロジェクトを行って欲しいという依頼も、テクノロジー系のスタートアップ企業から受けましたが、結局その手の話は断ってきました。
シリコンバレーに住むプロフェッショナルが、何らかのカタチで関係するストックオプションは、バレーに多くのミリオネラーやビリオネラーを生み出し、バレーの人材キープの大きな要因です。何でもそうだと思いますが、正しく扱えば、何にも問題は起こらず、間違えって扱えば、問題となる。扱う人次第だと思います。