最近、目についた凄い数字は、ファイナンシャルサービスのWachovia Corpの元Vice CharimanのWallace Malone Jr.が受けとる1億3500万ドルの退職金です。これはミニマムらしく、彼の退職金に課税される税金も会社が経費扱いで支払う仕組みで、5つの分割された退職金の支払いと3つの分割された年金の支払いで、この金額以上のかなりの金額が支払われる予定です。
この数字を見た後では、HPの元CEOのCarly Fiorinaのゴールデンパラシュートの4200万ドル(退職金2140万ドルとストックオプションと他のベネフィットの合計)は、決して大きな金額と は思えませんが、彼女のパッケージを承認したHPのボードに対して、HPの株主は、退職金返還の訴訟を起こしています。
HPの退職金に関しては、その役員の基本サラリーとボーナスの合計金額に2.99以上の掛け率で支払う場合は、株主の投票を必要とするという規定があり、 それを実行せずに、Fiolinaに7倍以上の金額にあたる合計4200万ドルを支払ったとして、The Indiana Electrical Workers Pension Trustと the Service Employees International Unionの2つの組織株主が、HP、Fiorina、HPのボードメンバーを訴えています。
HPが、この株主の投票という新規約を取り入れた原因は、2003年のCompaqとの合併後、ほんの数ヶ月でMCIに移った元HPの社長Michael Capellasに400億ドルの退職金を支払ったのがきっかけです。当時、2社の合併で1万7000人の社員がレイオフされており、トップ経営者に対す る目に余る厚遇が、引き金になっています。このCapellasに関してもう一言付け加えると、彼は転職先のMCIを、SBCとVerizonに売却し て、そこでそのディールの対価として、およそ2000万ドルを受けとっています。
このHPの株主の訴えを聞いて、以前から問題視されていた巨額のCEOたちへのゴールデンパラシュートへの、株主による監視抑制機能が動き始めたと思い、少しほっとしました。
1984年、Peter F. Druckerは、「CEOに対して、その企業のアベレージ社員の給料の20倍以上を支払うべきではない」と、急激に上昇を続けるCEOのサラリーへ警告 を発しています。このDruckerの20倍という数字は、とっくの昔に夢物語となり、何白倍、何千倍という数字に膨れ上がっています。
いつも不思議に思うのは、経営が悪化している、あるいは悪化させる結果をもたらした経営を行ったのに、その責任者であるのCEOに、巨額な退職金を支払 う、ボードメンバーの無責任な態度です。Druckerのように中立な立場で、企業の経営を見ながら、ボードメンバーとして、経営者たちを監視する人が少 なすぎる、それがアメリカの現実です。ボードメンバー自身が、CEOたちとなんらかの関係(利害あるいは何かの関係)があり、企業のオーナーである株主に 利益をもたらすような適切な判断ができる人が、ボードメンバーにいない、そんな気がします。
しかし、「金持ちはもっと金持ちになる方法をよく知っている」、そんなことを思わずつぶやきたくなるような金額が動いています。