また、NBCが放送した犯人のマニュフェストは、誰らかも相手にされずに、世界から孤立していた犯人が、望んだとおりにメディアが動いて、全世界の注意をひいたということで、これからこの手のCopycatがまた出てくると思います。メディアの倫理に関しては、すでに議論百出という感じですが、センセーショナルな報道の仕方は、見る気も起きません。
韓国で生まれて、8歳の時に米国に移民してきてChoは、ワシントンDCの郊外で育っており、彼の両親のような移民のFirst Generationと、米国で生まれた移民の2nd Generationとも違う、「1.5 Generation(1.5 G)」と呼ばれています。ティーンネージャーになる前に、米国に移住してきた1.5Gは、母国の文化の影響と米国という新しい国での経験という、2つの世界で、Identityが微妙に揺れ動くとも言われており、今回のChoの場合もどこにも帰属できないという、1.5Gの独自の悩みがあったのかもしれません。また、アジア系の彼がEast Coastに住んでいたことも、もしかしたらIsolationを生む結果になったのかもしれません。
私のビジネスパートナーは、お父さんが米国人、お母さんが日本人のDouble(ダブル:日本ではハーフといいますが、半分ではなく2倍という意味を込めて、私たちはこの言葉を使っています)で、米国生まれの日本育ちで、大学以降は米国在住です。彼女のように子供時代に母国以外の文化の中で育って、異なる2つ以上のカルチャーを統合して、彼ら独自の3番目のカルチャーを形成して、それをIdentityとして受け入れる人たちを、「Third Culture Kids(TCKs or 3CKs)」と呼びます。これは1960年代に社会学者のRuth Hill Useemによって、名づけられたもので、第2次世界大戦後、伝道師、海外基地勤務者、海外在住ビジネスマン家族の家庭の子供がそれに該当し、必ずしも子供の両親の一方が外国人である必要はありません。
「1.5G」でも「TCKs」でも、もし「Identity Crisis」が起きたとしたら、それは自分自身で解決すべき問題で、誰に対しても非難や責任を負わせることはできません。
私も日本でアメリカ人の夫と結婚したことが契機となって、米国に38歳の時に移住してきて、アジア系外国人として12年、この国で暮らしています。よく、アメリカ人の友人に、私は永住権を持つ外国人で、米国市民ではないと言うと、「ひさみが、アメリカ市民になれないのはおかしい。政府に何か問題があって、それを邪魔しているの?私ができることがあればサポートします」と、言われます。私は、いつも笑いながら、「私は自分の意志で、あえて米国市民になることを選んでないだけで、星条旗よ永遠なれを、アカペラで歌えるようになったら、市民になるかもしれない」と答えます。 一般にアメリカ人は、誰でも米国市民になるために移民して来ると思っており、こんな会話がよく起こります。
どこにルーツを持つにせよ、被害者意識を持たずに、2つの文化を経験できる喜びに、フォーカスして、人生をダブルでエンジョイできる幸運に感謝すべきだと思います。ただ、そうは言っても、若い時は、他の人間と違うことを受け入れるのは辛く、簡単にいかないのも現実です。人の心が狂う原因は、いろんなところに存在する、そんな気がします。