5月20日は、堀江健一さんの世界1周単独無寄港の日本帰国予定日でもあり、その日にサンフランシスコを出発する私は、彼との不思議な縁を感じます。今回は日本からオーナーの友人の女性も参加するので、日本女性2人が同時に太平洋を半分渡るということになります。この私のアドベンチャーは、これから逐次、ブログに書いていこうと思います。
今、夫と私の最大の関心は、15日間、いかに水の使用を押さえるかと食料の保存に関してです。水の確保は非常に重要な問題で、シャワーも3~4日間に1回 ぐらいしか使えず、毎日Baby Wipeで身体を拭くという生活(昨晩は夫が買ってきたBaby Wipeを試しました。顔が赤ちゃんくさいにおいがしました)になります。また今朝もJazzerciseで1時間15分汗をびっしょりかいてきて、夫の つくってくれたオムレツを食べながら、食料の真空パックについてディスカッションしました。これから1ヶ月間、いろいろな技術を試しながら、この水問題と 食糧問題の答えを見いだしていきます。
今でも充分、原始的でワイルドな私ですが、このアドベンチャーが終わった後は、ゴキブリ以上にどんな環境でも適応可能な人間になりそうです。
太平洋半分横断航海の計算式(2005年4月26日)
サンフランシスコからハワイまでの距離は、2091*海里(Nautical Mile)です。1日平均9ノットでセーリング出来たとすると、24時間ノンストップで、1日に216海里進むことが出来ます。この計算でいくと、9.4 日でハワイまで達しますが、8ノットあるいは7ノットで計算する方が現実的なので、多分12日間あるいは14日間で、太平洋を半分横断することになると思 います。仮に14日間で横断できたとすると、336時間のノンストップ・セーリングを意味します。この場合、我々クルー6人は、2時間ずつ以下の3つの任 務があります。
- 2時間:Helm(舵を取る)
- 2時間:Trim/ Look out(せールを風向きに合わせて調整することと、海上の見張り)
- 2時間:Others(ログの記録、ナビゲーション、クリーニング、クッキング)
これが終わると12時間のOff Timeとなり、自由行動(睡眠を含む)が可能です。このローテーションを繰り返すので、私たちの1日は通常の24時間から、18時間を1日の単位とする 生活となります。今まで、1日を18時間で考えて行動したことがないので、これがどういうことになるのか、さっぱりわかりませんが、面白いなとひとりで興奮しています。夫はNavyの原子力潜水艦のオペレイターでしたので、この辺のことはお手のもので、嬉しそうにいろいろ話してくれます。
満月も航海中にあるので、太平洋の真ん中で、満天の星を見る楽しさを考えると、ワクワクします。
*海里、浬(かいり、sea mile, nautical mile)は、距離の単位。海面上の長さや航海・航空距離などを表すのに使われる。地球の大円上における1分の長さとして定義されており、その長さは 1852メートルである。この定義は、1929年にモナコで開かれたInternational Extraordinary Hydrographic Conferenceで採用された。それまでは、アメリカおよびイギリスで6080フィート、すなわち1853.184メートルという値が用いられてい た。海里は赤道上における1分の長さであるので、海里は子午線上での緯度の差として表れる。単位表記はM , nmまたはnmiである。nmはナノメートルの意味としても使われるが、使用される状況が異なるので、実際には混乱はほとんど生じていない。毎時1海里の 速度をノットという。すなわち、1ノットは毎時1852メートルである。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
このブログを始めてから、「なぜこんなにブログは普及したのか?」と考えましたが、「誰でも簡単にオンラインで情報発信が出来る」、これにつきると思います。実際にHTML化なんて考えただけでもアタマの痛くなる私にとって、いつでもどこでも誰にも頼まずに、簡単に情報発信できてしまうことは、最大のブロ グの魅力です。
「簡単は、強いぞ!」
これが21世紀のビジネスのキーワードです。エンドユーザは常に簡単で使い勝手の良い製品やサービスを求めています。彼らの「目線」で製品開発やマーケ ティングをしないと、製品の良さは届きませんし、ギークにしかわからないような差別化は、ビジネス上全く意味がない、と言えます(自己満足)。
また、別な視点から見ると、このブログによって、「個人が、パブリックに簡単に情報発信出来る機会」が与えられたことになります。現在のソフィスティケー トされた情報検索では、ブログ情報はコンテンツとして容易に検索されますし、その質は玉石混淆とは言いながらも、企業や組織が発する情報量以上に大量の情報が流されています(現在世界中で、毎日2万のブログが新たにクリエイトされています)。ここでもう一つのビジネスのキーワードは
「コンテンツは、強いぞ!」
ということです。人は単なる定型的な情報以上に、「情熱的な情報」に惹かれます。「情熱」には必ず「真実のストーリー(体験や実感に基づく)」の裏付けがあり、人々は直感的にその真偽のにおいを嗅ぎわけて、「Real Voice」を見つけます。これがブログの最大の強みです。
てなことを書きながら、私はブログを大いに楽しんでいます。特にブログページにコメントはなくても、Emailや口頭で多くの方たちが読んで頂いていることがわかり、感謝しています。また昨日は、私の友人がブログを読んで、太平洋半分横断航海のことを知り、我が家にOn Voyageのギフトを届けてくれました。その時、彼女が最近ビジネスを始めたことを知り、私はさらに大感激しました。久しぶりに話した彼女は、2年間の フラワーアレンジメントの修行(オラクルのCEOラリー・エリソンの有名な日本邸宅の生け花を、彼女はアシスタントとして、毎週やっていたそうです)の末 に、自分のビジネス(Mi Flora) を立ち上げました(オラクルのCEOがフラワーアレンジメントのビジネスの立ち上げのストーリーに絡むなんて、これこそシリコンバレーならではお話しで す。笑)。ウェディング用フラワーのデザイナーとしてスタートした彼女は、私のブログページへのコメントで、「ひさみ姉さん」と呼びかけてくれて、妹のいない私は、その言葉にとっても嬉しくなってしまいました(Maiちゃんありがとね)。
新たな出会いや旧友とのコミュニケーションの復活など、ブログ効果は確かに私に現れています。
航海4日目&5日目(Day 4 & Day 5)
太平洋半分横断セーリングに挑戦する大柴ひさみに代わって、「ひさみの冒険」ブログのアップデートを行う将です。大柴ひさみとその旦那さんから届くシーメールにもとづいて、航海中の状況や現在の通過地点をほぼ同時進行でお伝えします。
セーリング開始後の数日は、25-35ノットの風で海も荒れ、セーリング以外は食べる事と寝る事しか出来なかった。現在のポジションは、33deg. 49.26 min. N 133 deg. 54.47 min W.。ほぼサンディエゴから800海里西に位置している。
Calm spotに当たる昨夜までの間は、時間的にもとても良い感じで進む事が出来た。今までのトータル航行距離は643マイル。一日平均160マイルほどの速度で進んでいる。
“Nothing to see but ocean.”
Hisami
S/V D’uphoria
航海5日目(Day 5)
天候は良好でとても心地良い。しかし、パシフィックの位置において今のところ風がほとんど吹かず、モーター無しでは3-5ノットしか進む事が出来ないため、一日中モーターをつけている事もある。風が吹くことを願う。
Hisami
S/V D’uphoria
サンフランシスコを出発してからというもの、セーリングの「冒険」によって、今までの生活が画期的に変わった。この航海で考えるていることといったら、 「寝る事」「食べる事」そして「風の動き」がほとんどだ。ボートに乗っているひとりひとりに役割が与えられていて、1日を基本的に12時間単位で過ごして いる。6時間のワークは、舵取り、セールの調整、見張りに費やされ、そして6時間の就寝を取る、という計算である。
昨晩舵取りをしている時に、満月を海の上から見る事が出来た!それはまるでシャンデリアの様に、煌々と輝いていた。真夜中でも、海上にあるすべての物を見る事が出来たくらいだ。
もう2日間も風がない。「WE WANT BIG WIND」。
今は太平洋時間で15:00。今回はこの船旅についてもう少し詳しく書いてみたいと思う。
私たちクルーは常に何らかの役割を持っており、責任を持ってそれらを行っている。前回も書いたとおり、1日は12時間単位で区切られている。6時間はワー ク(舵取り、セールの調整、見張りをそれぞれ2時間ずつ)、そして残りの6時間はオフ(就寝、料理、読書等に使われる時間)にと費やされる。
料理は、船にいる皆がローテーションで行っている。通常、夕食は皆で食べるため、その時間帯にワークを行っている者は2時間のワークが1時間になり、皆が 一緒に食事ができるようにしている。また、これによりそれぞれが毎日のワークを行っている時間帯を少しずつずらす事ができる。このワークの短縮を船員用語 で「Dogging the Watch」という。
サンフランシスコを出発してから、何隻かの船と遭遇した。4日前にはBreak Bulk Cargo Ship、昨日はAutomobile Transport Vesselを見た。それらの船はかなりのスピードで進んでいるため、衝突を避けるためにも、船にあまり近づかない様に心がけて進む事が重要だ。
昨日は船の上から釣りをした。16:00頃に初めてマグロを釣るチャンスがあったが、逃がしてしまった。それから30-45分後にまたチャンスがやってき たが、それもうまくいかなかった。この2回の失敗で皆は釣りに真剣になり、ついに3回目のチャンスでは、かつおを釣り上げる事ができた。おかげで昨晩はかつおの刺身、今日のランチにはかつおの照り焼き、と美味しい食事ができた。
セーリングを開始したサンフランシスコ周辺にいた2-3日は、風がとても強く吹いていて、風の中へセールをしている感じであり、ラフな日々だった。 Point Conceptionを過ぎたあたりから風のコンディションがどんどん良くなり、いい感じでの冒険になり始めた。しかし、そう思ったのも束の間、今度は風の動きがほぼ完全になくなってしまった。そのため、かなりの間モーターを使って進むことになってしまった。しかし、そういう状況であったからこそ、各自それぞれ身の回りの整理をしたり、ボートの片付けをしたり、身体を休めたり、皆で楽しい時間を過ごしたりする時間に当てることができた。
昨晩から風の動きが出てきたため、いいセーリングができている。今現在我々は875マイル(2,040マイルの内)進んだ。多分、明日の夕方にはHalf-Way Celebrationをする事ができるであろう。
Hisami
S/V D’uphoria
航海11日目(DAY 11) 自然の畏怖を実感
朝日が昇る時は、本当に一日がドラマティックに始まる予感を感じさせ、太陽に心から感謝したい気持ちになります。
太古から地球上の多くの人たちが、「自然を畏怖」したのは、当然だと思います。こんなに凄いシーンを、毎日じっと見ていると、その気持ちが充分実感できます。
ますます、日々暑くなっていく中で、薄着で、舵を取るのが 日常化してきました。「マウイは近いぞ」という思いを、薄着に込めて、みんな気分を盛り上げています。
とうとう、水着で、舵を取る日々となりました。「夏、夏だ! 水着だ、水着だ!」、「マウイは近いぞ!」と、わめきながら、気持ちを大いに盛り上げていました。
航海14日目(DAY 14) ALMOST THERE
この日は、完全にみんな「Almost there(あと少し)」モードとなり、ラストスパートで、気分が浮かれ出した頃です。明日は、陸(おか)に上がれると信じて、Happyな気分の私です。
航海15日目(DAY 15) 水先案内人のイルカに感謝
恐怖の夜が明けて、最終日マウイ島を目指しています。初めてみたマウイの島の神々しさは、一生忘れることができません。
「この太平洋半分横断の航海を経て得たことは?」と聞かれて、私の答えは「Lots of water!(想像を絶する巨大な海)」と「Be patient(忍耐)」です。太平洋の真ん中では「風を待つ」、「風をつかまえる」、これしか陸(おか)に到着するための方法はありません。人間がコントロールできることは、本当にたかがしれています。しょっちゅう日米間を飛行機で往復し、長距離通勤などとうそぶいていた私は、その自然のスケールと凄さを完全に忘れていたようです。太平洋の海が教えてくれたことは、月並みな言い方ですが、「自然への畏怖と感謝」を実感できたこと。さらに以下のような素晴らしい「自然の美しさ」を眺め、感じて、一体化できたことにつきます。
- 「シャンデリアのように輝く、満月の凄まじいほどの明るさ」
- 「打ち上げ花火のように、私の目の前を走っていった緑色の流星」
- 「数えきれない満天の星々」
- 「オレンジ色に輝き、目玉焼きのようにおいしそうな夕陽」
- 「月も星もない、夜の底知れぬ暗さ」
夜中に舵を取っている時は、「夜の底知れぬ暗さ」に身を置いて、羅針盤が指し示す方向だけを見ながら、過去の出来事が走馬燈のように浮かんできました。米国移住以来10年、いつも走り続けていた私は、この太平洋の真ん中で、初めて立ち止まり、自分の過去を振り返り、その不思議な感覚に身を任せることができました。