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サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



マジョリティがいなくなる米国社会:2042年、白人もマイノリティになります

8/14/2008

 
米国のアキレス腱、あるいは宿命とも言うべき「人種問題」を語る際に、真っ先に口にされる言葉は、「マジョリティとマイノリティ」です。米国にはさまざまな人種の人たちが住んでいますが、以下のように、大別されます。

  • 白人
  • アフリカ系(黒人)
  • ヒスパニック(スペイン語圏からの移住者)
  • アジア系
  • ネイティブアメリカン(アメリカンインディアン、アラスカネイティブ)
  • パシフィックアイランダー(ネイティブハワイアンとその他の太平洋諸島からの移住者)
  • 2つ以上の人種(Biracial & Multiracial、Mixed)
昨日発表されたU.S. Census Bureau(米国国勢調査)のデータによると、2004年に予想したよりも、8年も早く、2042年には、現在米国のマジョリティである白人が、過半数ではなくなり、すべての人種がマイノリティになると予測しています。米国の総人口はおよそ3億500万人ですが、2039年に4億人に達し、2050年には4億3900万人になります。この時の人種構成の予測は、以下となります。

  • 2050年の米国の総人口4億3900万人<<-- 2008年3億500万人
  • 白人:2050年2億330万(46%)<<-- 2008年1億9980万人(65.5%)
  • ヒスパニック:2050年1億3280万人(30.2%)<<-- 2008年4670万人(15.3%)
  • アフリカ系(黒人):2050年6570万人(15%)<<-- 2008年4110万人(13.5%)
  • アジア系:2050年4060万人(9.2%)<<-- 2008年1550万人(5.1%)
  • ネイティブアメリカン:2050年860万人(2%)<<-- 2008年490万人(1.6%)
  • オーシャンアイランダー:2050年260万人(0.6%)<<-- 2008年110万人(0.4%)
  • 2つ以上の人種:2050年1620万人(3.7%)<<-- 2008年520万人(1.7%)
ここで構成比の合計が100%を超えているのは、自分をどの人種として考えるかという、アイデンティティによって分類が異なるからです。民主党大統領候補のBarack Obama(バラク・オバマ)のように、父親がアフリカ系(黒人)、母親が白人と2つ以上の人種の「Biracial & Multiracial」の場合でも、人によっては、単独の人種(例えば黒人)に区分する場合もあります。特に国勢調査で「2つ以上の人種」という項目の表示が始まったのは、2000年からですので、項目への登録には個人差があります。

ここでのポイントは、白人のマイノリティ化と、ヒスパニック人口の急増(3倍)ということがあげられますが、俯瞰で米国社会を見ると、「人種におけるマジョリティとマイノリティの対立」という概念が徐々に薄まり、「Multiracial」の人たちの増加によって、ますます人種間の垣根が低くなるという点です。すでに「Generation Y(ジェネレーションY)」に代表される若年層は、この傾向があり、彼らは人種や文化の違いを受け入れ、逆にその多様性を楽しんでいます。今はまだ、人種差別の歴史的な痛みを、身を持って体験している層が、社会の中心を占めているため、容易に「人種問題」を語り、乗り越えるのは難しいものがあります。ただし、米国社会が、この「Post Race Era(人種を超えた時代)」とも言うべき時期に到達するのは、あながち遠い未来ではありません。

このデータを見ながら、我が家のことを考えました。夫は、人種や出身の国で自分を表現する言い方が好きではなく、「自分の先祖はデンマークから来たけど、自分はデーニッシュアメリカンと言う気はない。自分は、An American(1人のアメリカ人)だ」と言って、「なんとかかんとかアメリカン」という言い方を嫌がります。もちろん、彼は白人ですので、現在人種的に差別されているマイノリティの人たちとは立場が異なり、こうした発言も普段は滅多に口にしません。彼も含めて、米国では、白人男性の人種に関する発言は、ことあるごとに「人種差別発言」として受け取られるので、みんな非常に神経質になっています。夫は、以前「僕もマイノリティになったら、もっと自分の意見をストレートに話すことが出来る」と言っていましたが、2042年にはそれが実現しそうです。

私は米国に移住した1995年、永住権の手続きをする際に、自分自身の身体的特徴を描写する項目があり、困惑した記憶があります。もちろん、外国の小説では、必ず主人公や登場人物の髪や眼の色などを描写する文章が出てきますが、まさか自分が公の文書にそれを記入するとは夢にも思いませんでした。当時、一度も「自分の色」について、考えたことがなかった私は、横にいた夫にイチイチ「私の色」を確認しながら記入しました。

  • 私:「髪と眼の色はブラック?」
  • 夫:「髪はブラックだけど、眼はブラウン」
  • 私:「肌の色はイエローと書くべきか?」
  • 夫:「ライトブラウン」



私は夫に「肌の色」を、ライトといわれながらも、ブラウンと言われたことに、軽いショックを受けてしまいました。もちろん、私は、もともと肌は黒い方で、いつも日焼けしていることもあって、白くないことは認識していましたが、「ブラウン」とは予想外の答えでした。その時、子供の頃使っていたクレヨンや絵の具には「肌色」という色があったのを思い出し、夫にそのことを告げると、彼も、逆に「肌色」という名前で販売されていることに、驚いていました。


その後、「白人、アフリカ系、ヒスパニック、アジア系、ミックス」という人種に関する項目が現れ、はたと目をひいた言葉が、「パシフィックアイランダー」でした。私は、この言葉を目にして、広大な太平洋に散在する島々の間を、危険を顧みずに勇敢に航海する人々を思い浮かべ、さらにその太平洋の端っこにある島「日本」も、それに含まれてしかるべしと思い、勝手に自分を「パシフィックアイランダー」で登録しました。もちろん、これは間違いで、私は「アジア系」で記入すべきですが、この私の行動を見てわかるように、リアリティは、どのように自分自身を位置づけるか?です。

2042年には、夫も私も80代ですので、「マジョリティのいなくなった米国」を見るチャンスは十分あります。その「Post Race Era(人種を超えた時代)」で、私たち2人は、2008年の大統領選挙で、初の黒人大統領候補(あるいはBiracialの大統領候補)をめぐって、どんなに人種問題が大きな要素として機能したかを、歴史的な事実として、孫やひ孫に語る、あるいはブログする、そんな気がします。


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    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

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