昨日は、お正月らしく、以下の「初もの尽くし」とも言うべき形容詞で飾られて、Nancy Pelosi(ナンシー・ペロシ)が、米国下院議長に正式に就任しました。
- 初の女性下院議長
- 初のカリフォルニア州選出の下院議長
- 初のイタリア系アメリカ人の下院議長
サンフランシスコ選出の66歳のナンシーは、High Profile(高いキャリア)の女性にとって「Perfect Husband(完全な夫)」*と呼ばれる富裕な投資家Paul Pelosi(ポール・ペロシ)との間に、5人の子供をもうけて、子育て終了後の46歳の時に、政界入りを果たした女性です。「Kitchen to the House(台所から下院議長)」へ上り詰めた彼女は、カソリックであるにも拘らず、同性間の法的な結婚問題、胚性幹細胞研究の促進、女性の中絶の権利など、反宗教的な問題にも擁護する姿勢をみせる、サンフランシスコ**きってのリベラル派です。
*Perfect Husband(パーフェクトな夫):43年間の結婚生活を共にする夫のポールは、1987年の彼女の当選以来、常に彼女の政治活動をバックステージで支えてきた「Mr. Nancy Pelosi的な人」です。金銭面での支えを含めて、彼女の20年間の政治的活動が成功するように、自らの投資やビジネス活動も彼女の障害にならないように、気をつけて行ってきた人で、彼女の最大のサポーターと言われています。
**サンフランシスコ:ビートニック、ヒッピー、ゲイマリッジなどを生み出し、擁護してきたサンフランシスコは、他の州の人から見ると、政治的に非常に急進的で、米国民のマジョリティから程遠い、ちょっとクレージーな人たちという意味を感じさせるようです。
ルーズベルト大統領以来の政治一家に育ったナンシー
彼女のボルチモアの実家は、父親は市長と下院議員、兄も市長という政治一家で、1947年、彼女が7歳の時に、父親の市長就任宣誓式で演説したのが、「最初の政治活動」と言われているぐらい政治的環境で育っています。良くある女性議員の成り立ちで、夫や父親が亡くなったために政界入りするというパターンとは異なります。
強硬なリベラル派がどこまで議会運営の舵取りができるか?
イラク戦争の早期解決を目指すナンシーは、昨年院内総務候補として、イラク撤兵を唱える海兵隊出身のMurtha(マーサ)下院議員を選んで(結果は民主党内の反発を買って、No2のHoyer下院議員を選出することになります)、自身のイラク戦争への態度を見せ付けるなど、その強気な姿勢はいたるところで、目につきます。昨日は、就任早々、「議員モラルを高める」ために、ロビーイストやサポーターによる食費や旅費の供与は認めないという方針を打ち出し、共和党との相談もなく出されたこの提案は、「横っ面を張り倒されたようだ」と言わせるほどの反発も買っています。今後どこまで、このリベラル派のナンシーーが、議長として両党およびブッシュ政権との間で、上手に調整を図って、国民の声を政治に反映できるかは、非常に興味深いところです。
「シーザー以来最もパワフルなイタリア人」は、米国のNo3の政治家となる
米国では、上院議長は、常に副大統領が務めるため、今日のタイトルに書いたとおり、彼女は米国の大統領、副大統領に次ぐ3番目に政治的なパワーを持つ存在となりました。彼女は、「通常の女性がGlass Ceilling(ガラスの天井)を打ち破るだけでなく、Marble Ceiling(大理石の天井)を打ち破って行く」と語ったほど、今回の就任の持つ意味が、米国女性の意識改革に大きな役割を果たすと語っています。また、これは女性だけに限らずイタリア系の米国人にとっても、画期的な出来事で、「Most Powerful Italian since Caesar(シーザー以来の最もパワフルなイタリア人)」と呼んで、大いに祝福しているようです。
Second Life(セカンドライフ) にも登場するナンシー
今日のSF Chronicleによると、彼女が「Second Lifeのヴァーチャルな下院」に登場する予定であると発表しています。「ネクストジェネレーションとエンゲージするためにも、重要なことである」と言う話を聞くと、ますますサンフランシスコぽくって、いいな、と思いました。
また、ナンシーが議長に選出された瞬間、彼女は5人の孫たちに囲まれながら、6人目の生後2ヶ月の男の子の孫を抱いており、あわてて赤ちゃんを娘に渡すという、今までの議長選出ではありえない光景を目の当たりして、時代は変わっていくと、感じました。
モメンタムに乗って
ブッシュ政権との交渉、議会運営など、チャレンジングな課題を抱えているナンシーに対して、周囲はそんなに楽観的にモノゴトは推移しないという目を向けていますが、彼女には今、国民の声の反映である中間選挙の民主党の勝利という「Momentum(勢い)」があります。今までのやり方ではないものを求めている国民は、彼女がどこまで、モメンタムを活かせるか、見守っています。