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サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



宇宙を語り続けてきた人々

8/3/2019

 
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『A loss for words たったひとりのことば 絶滅する言語と失われゆく「世界」』 

「絶滅しつつある言語」という言葉を見た瞬間に、本来あるべき多様な文化と価値観が地球から消滅しつつあると思い、何とも言えない悲しみに襲われた。言葉を記す術を持たなかった人々は、侵略者に簡単に滅ぼされてしまい、支配者達は必ず自国の言葉を強制し、部族の言葉を取り上げていく。それは過去続いてきた部族の歴史の抹殺で、その部族は確実に自分の世界と価値観を失い、尚且つ部族の歴史や世界観が失われたことに気が付かないという、より悲しい事実の中にいる。前回書いたブログの記事の後半に出てくる、「宇宙を語り続けてきた人々」の中で、私が何度も反芻した部分を抜粋した。アタマを開放するには、こんなながーいモノを読むべきだと思う。

「モホーク語はただの表現法ではありません」と彼は言う。「全体論的な宇宙との関係なのです」。
モホーク族とされる北アメリカ人は約2万5,000人いるが、日常会話ができるほどにその言語を話せるのは15パーセントほどにすぎない。モホーク語を文字で書き表すのは困難な作業だ。1870年代、カナダに移住したばかりのアレクサンダー・グラハム・ベルは、この言語の響きに魅せられ、正書法を考案した(モホーク族は彼を名誉首長にした)。

文法は少なくともラテン語と同じくらい難しい。名詞語根はいくつもある形容詞的な接頭辞に修飾される。例えば、「h」の文字を加えることで意味が劇的に変わりうるのである。「背の高い」男性と表現したいのを間違って、彼には「長い球」があると言ってしまっているかもしれない。動詞は力強く詩的だ。誰かを「埋葬する」は「その身体をわたしたちの母なる大地の毛布で包む」となる。父親となる男性は「子どもに自分の人生を貸す」。モホーク文化のエートスでは、主格の「I(わたし)」はそれ単独では成り立たない。一人称単数はつねに関係性の一部なのだ。だから、「わたしは病気だ」とは言わない。モホーク語では、「病気がわたしのところに来た」となるのである。

ガナジョハレゲの上級セミナーでは、ミナ・ボーヴェイズ(モホーク語の名前ではデワデロンヒアグワ)が希求法を教えていた。これは仮定法に近い難解な叙法で、クルド語、アルバニア語、ナヴァホ語、サンスクリット語、古代ギリシャ語に存在する。生徒たちは複合語とも格闘しなければいけないが、これはドイツ語より長く、書かれた通りに発音されない。

ボーヴェイズ並みにモホーク語を話すには、吟遊詩人の記憶力と歌手の息づかいが必要なのだが、彼女の話すことばはまるで呪文のようである。わたしはクラスで行われているテストを受けてみたが落第だった。テストの内容はこうだ。「tahotenonhwarori’taksen’skwe’tsherakahrhatenia’tonháîtieを暗唱せよ」(これは1つの単語で、「愚か者が丘を転がり落ちてきた」という意味である)
​

モントリオール近郊で育ったボーヴェイズは70代後半のネイティヴスピーカーである。小柄だがたくましく、苦難から生まれた屈折した忍耐力をもっている。7歳のとき、州が彼女の両親に「インディアンのための」学校に通わせることを強制した。そこでは、母語を話す生徒は殴られた。
​
トム・ポーターの場合は、同じ年齢のときに祖母にかくまってもらったため、当局に寄宿学校に入れられることはなかった。ファースト・ネーション[カナダに住む先住民族]の子どもたちを、懲罰の厳しい、主に協会が運営する施設で強制的に同化させることは、1880年代にカナダの法律で義務化され、1970年代まで続いた。「あの制度がわたしたちをほとんど滅ぼしました」とポーターは言う。「スポンジの時期、つまり、最も貴重な学びの年代に子どもから言語を奪えば、それをもう一度学ぶことはないでしょう」

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    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

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