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サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



クリントンが負けた理由⑤「Bill Clinton(ビル・クリントン元大統領の舌禍」

7/6/2008

 
シリーズエントリです。6/11のエントリ「Clinton(クリントン)が負けた6つの理由」のうちの5番目について書きます。

  1. Change vs. Experience(経験を盾にして、変革を求める米国民の声を読み間違えた)
  2. War Vote(イラク戦争開始への賛成投票。さらにそれが間違いであると認めなかったこと)
  3. Dysfunctional Campaign(戦略ミスと内部分裂で機能しなかったキャンペーン)
  4. Overconfidence(クリントンブランドへの過信)
  5. Bill Clinton(元大統領ビル・クリントンが巻き起こした舌禍)
  6. Sexism(女性差別のカードを引いた)


今回の民主党の予備選挙において、頻繁に使われた言葉は、「歴史上初めて」という表現です。Barack Obama(バラク・オバマ)と、Hillary Clinton(ヒラリー・クリントン)という2人の候補者そのものが、アフリカ系アメリカ人(黒人)、女性という、人種とジェンダーという点で、多くの人たちを熱狂させています。人種という点においては、オバマは、カンザス州出身の白人の母親とケニア出身のアフリカ人の父親を持つ「Bi-racial(複数の人種)」です。米国では、人種差別的な考え方の典型として、「One-drop rule」という言い方があります。白人でも先祖に少しでも黒人の血が混ざると「黒人」とみなされるという考え方で、以下の米国の5人の大統領の共通点は、彼らの先祖が黒人の家系とつながっている点で、その意味から考えると彼らは黒人大統領と呼べないことはないということになります。

  • Andrew Jackson
  • Thomas Jefferson
  • Warren Harding
  • Dwight Eisenhower
  • Calvin Coolidge
  • Abraham Lincoln


この中でも特に、29代目の大統領Warren Hardingは、その白人の容貌からは伺い知ることは出来ませんが、曾祖父母の1人が黒人であったために、彼を米国初の黒人大統領とする説もあります。オバマの場合は本人が「黒人」であることを認識しており、その意味で上記の「One-drop rule」とはまったく違う本当の意味での黒人大統領候補です。ただし、彼は、過去の公民権運動を経たJesse Jacksonのように黒人大統領候補として、「人種」のカードを最初から出さずに、むしろ人種問題に対してはニュートラル、あるいは言及することを避けていました。ですので、1年半前のキャンペーン開始時は、逆に奴隷制度と公民権運動と直接関わらないオバマは、黒人層からは、彼の「Blackness(黒人性)」が足りないことへの、反発と批判を招いていました。また、多くの黒人層は、黒人の人権や経済的なサポートを果たして「First Black President(初めての黒人大統領)」と呼ばれたビル・クリントンへの忠誠心から、当初はヒラリー・クリントンへの支持を表明していました。

この「First Black President」と呼ばれたビル・クリントン、およびヒラリー・クリントン自身の発言が、クリントン陣営のロイヤリストとしてコアのサポーターであった、黒人層の怒りを買い、オバマへ大きく流れるというと結果をもたらしました。以下の有名な舌禍事件となったもので、日本風に言うと、「クリントン発言の炎上」ともいえます。

  • 「御伽噺発言」:「the biggest fairy tale that I have ever seen」オバマが当初からイラク戦争に反対していたことを、こんな御伽噺(フェアリーテール)のような話を今まで見たことがないと発言。オバマの大統領候補としての可能性を信じ始めた黒人層は、これを黒人への侮蔑ととって反発した最初の発言。
  •   「ジェシー・ジャクソンを例にした黒人軽視発言=人種差別発言」:「Jesse Jackson won South Carolina in '84 and '88」オバマのサウス・キャロライナでの圧勝に関して、コメントを求められた時の発言。黒人層の多いサウス・キャロライナでの勝利は、黒人であるオバマの場合当然で、ジャクソンですら、84年と88年2回勝ったと発言。上記の「フェアリーテール」発言以上に、黒人層の反発を招いた。
  • 「キング牧師とジョンソン大統領比較発言」:「"Dr. King's dream began to be realized when President Johnson passed the Civil Rights Act,"  "It took a president to get it done."The power of that dream became real in people's lives because we had a president capable of action." 」ヒラリー自身によるMartin Luther King Jr.(キング牧師)とジョンソン大統領の役割比較で、夢を現実化するためには大統領が行動を起こさなければならないと発言して、公民権運動で血を流して戦い抜いたリーダーたちが、キング牧師の伝説を汚したとして猛反発を招いた。この発言と上記のビル・クリントンの発言が連続して起こり、結果これが大きなトリガーとなって、黒人層がクリントンに見切りをつけて、一気にオバマ支持に走って行った。
米国史上初めて、元大統領が、大統領候補者の夫として、キャンペーンに参加するということ自体が、異例のことです。クリントンキャンペーンは、ビル・クリントン元大統領の影響力のある言動をコントロール出来ず、多くの論議を巻き起こしています。実際にキャンペーン内部には、ヒラリーとビルのスタッフが別々に存在し、両社の連携は密とは言えず、また元大統領を諌める、あるいは助言できる立場の人間が存在しないために、多くの混乱を招いています。特に彼は感情が激化してくると、しばしば一般の質問者やレポーターを、真っ赤になりながら指差して論破しようとして、それが「YouTube時代」のスキャンダルとして、オンラインだけに限らず、ケーブルTV局を通じて、あっという間に広まっていきました。

また、もう一つの大きな問題は、彼のキャンペーン参加は、ヒラリーを大統領にするためであるにもかかわらず、必ず自分の政権時代の政策や結果に言及して、自身を弁護・擁護することとに終始してしまうという点です。まるで、自らがホワイトハウスへの復帰キャンペーンを行っているようで、映画「Back to the Future」ではありませんが、90年代の昔に戻ったような錯覚と困惑を、パブリックに与えて、「Change」を求める多くの人たちの心を掴むことが出来ませんでした。

今は、オバマとヒラリーはジョイントで、政治献金の集金に注力して、彼女の2000万ドルの負債を返還すべく、協力体制ですが、ビル・クリントンとの関係はまだ修復されていません。ビル・クリントンが発言した数々のオバマへの批判は、感情的であるだけに傷は深いと思われます。ビル・クリントンは、20世紀の政治家としては、カリスマ性もあり、天才と呼ばれましたが、ボトムアップと市民参加による今年の大統領選では、そのスキルがどうやらアップデイトされておらず、結果「発言の対価」は非常に重いものとなりました。

24時間365日、誰もが簡単にヴィデオやオーディオで録画して、候補者、その夫や妻、スタッフたちの言動を逐一Publishingしてしまう現在は、どこにも逃げ隠れできる場所はありません。「口から出てしまった言葉」は削除しようとしても消えないものです。「真摯にその意図や真意を説明する」、あるいは過ちを認めて謝罪する、そういうストレートなやり方の方が、受け入れられやすいように思われます。


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    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

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