防弾チョッキをコートの下に着用して、法廷を出る元Nasdaqの議長で70歳になるMadoffは、「Ponzi Schrme(ポンジースキーム)」と呼ばれる株式詐欺で、昨年逮捕されました。彼は、1980年代から逮捕されるまでの20年以上の間、4800人のクライアントを抱えて、株式詐欺史上最高の648億ドル以上の金額の詐欺を働いています。彼の株式詐欺の手法は、最高46%のリターンを投資家に約束して、虚偽の株式の売買報告をして、新規投資家のお金を既存の投資家のリターンに回し、既存の投資家がすべての投資額を引き出さない限り、延々と新規投資家を引き入れて、お金を回していくというやり方で、「Pylamid Scheme(ピラミッドスキーム)」とも呼ばれるものです。
彼自身のフィーは、一株のトレードにつき4セントをチャージするということですが、このとんでもないハイリターンを信じて、Madoffに多額の金額を預けていた投資家たちは、逮捕直後、一様に「信じられない、彼は本当に良い人のように見えた」と口にしています。騙された投資家たちの中には、スティーブン・スピルバーグのようなハリウッドのスターや監督に始まって、ファイナンシャル企業や著名人の名前も見え隠れしていますが、多くの人たちが巨額の損失をこうむったのは、言うまでもありません。
しかし、どうしてこうした富裕層は、このとんでもない「ハイリターンの株式投資」を信じたのでしょうか?過去3年間を振り返れば、住宅バブルがはじけて、米国の経済がかなり危なくなっているのは素人でもわかるリアリティです。そんな状況の中で、Madoffだけがハイリターンのプロフィットをクライアントに還元しているとしたら、どうみてもこれはおかしいと思うのが必然です。それを自分だけは大丈夫と考えたとしたら、投資家自身が「欲」に目がくらんで、現実を見る目をなくしてしまった、それが結論のような気がします。もちろん、そうじゃない人たちも多くいると思いますが、「欲」とは、多分に人の目を曇らすもので、ついつい最後のがけぷっちまで行ってしまうのかもしれません。
彼の「元Nasdaqの議長」という肩書きは、この詐欺事件で大きな影響力を持っていたと思いますし、20年以上という長期間に渡って、多くの投資家が彼の投資能力を評価していたとしたら、新規投資家はどんどん騙されて、Madoffにお金を預けることになると思います。こうした事件がおきると、一般の市民の気持ちとしては、ますます金融関係のCEOや経営者への信頼が薄れて、金融業界の安定のために、納税者のお金を救済に回す気がしなくなる、そんなことが思われます。いやでも安定化のための金融機関救済をしなければならない、オバマ政権にとっても、これは実にやりきれない、しんどい事件です。