ジョブズは、社員へのeメールというカタチでこの決定を語り、彼の病気休暇の間は、2004年のすい臓がんの手術の時に代行を務めたCOOのTim Cook(ティム・クック)が、代わりを務めると発表しています。このニュースを受けて、株式終了後のアップルの株価は落ち込み、アップル社員のみならず株主および関係者の気分を暗くするニュースとなりました。
前回ジョブズは、「ホルモンのバランスに問題があリ、簡易な治療で治る」と説明していましたが、結果一週間後に半年間の治癒という新たな通告をしなければならないほど、深刻化しているとしたら、これは健康問題以上に「情報の透明性」という課題を感じます。もちろん本人にしてみたら、自分の健康問題をなぜ公開しなければならないんだという強い不満があるのは理解できます。ただし、前回もエントリしたように、「ジョブズは、取替えがきく通常のCEOではなく、アップルブランドを象徴するブランドそのもの」です。彼に関するどんな小さなことも、すぐに企業やブランドに直接跳ね返ってきます(特に株価)。ですので、アップル関係者、メディア、株主、一般の人たちの心配を取り除くために、前回は「ポジティブ、あるいは希望的観測に近い説明」をしたとしたら、それは「狼少年」ではありませんが、アップルが発する「情報」への懐疑心を生み出してしまいます。
今朝のシリコンバレーは前から噂されていたように、Yahoo!が新しいCEOに60歳のCarol Bartz(キャロル・バーツ)を選んで、ちょっと活気だっています。eBayの元CEOだったMeg Whitman(メグ・ウィットマン)が、政治家としての道を歩み始めて、共和党からカリフォルニア州知事選挙に出馬する意欲を見せている中で、久しぶりにシリコンバレーの女性CEOの誕生です。バーツは、元AutodeskのCEO・現会長で、インターネット・ビジネスの経験はありませんが、3M、Digital Equipment、Sun Microsystemsを経て、Intel、Cisco、NetAppのボードメンバーを務めるほど、長期にわたりテクノロジー業界で経営経験を持つ女性です。業界では彼女の起用を「安全な選択」という言いかたをしていますが、女性経営者の少ないシリコンバレーにとって、これは一つの活性化につながります。
Yahoo!は、昨年のMicrosoftによる475億ドル(4兆7500億円)の合併問題の失敗で大きく揺れて、現在最もドラスティックに「変換」を求められている企業です。創業者でCEOとして復帰したJerry Yang(ジェリー・ヤン)の経営者としての苦い顔は、昨年さまざまな場でクローズアップされました。今は、Yahoo!にとって、再起をかけた大きな手術が必要です。しがらみのない新たなCEOは、内部の檻を気にせずに、大鉈をふるって欲しいと思います。彼女を知る人によれば、「彼女のエクスパティーズはかなりワイドレンジに渡り、タフな判断も可能だし、『ハグ』が必要な時にはどのようにハグすればよいかを知っている」ということです。人員解雇や組織変更、合併・買収と大きな動きが出るYahoo!にとっては、ハグできるCEOは必要です。
経済が混迷している時には、より大胆でクリエイティブな発想を持ち、勇気を持って難しい問題を判断していく、経営者および社員が必要です。「Conventional(慣習的)な考え方」にしがみつくような人に活躍の場はありません。「トライアンドエラー(試行錯誤)」が許される米国では、そんな人が求められます。アップルのCookとYahoo!のBartzには、がんばって欲しいです。