ひさみをめぐる冒険
  • BLOG
  • About
  • Contact

ひさみをめぐる冒険
サンフランシスコ・シリコンバレー在住マーケターのINSIGHT(洞察)



支持者層で見るブランドイメージ:スターバックス(オバマ)とダンキンドーナッツ(クリントン)

6/30/2008

 
おとといのエントリーで、クリントンが負けた理由④「クリントンブランドへの過信」を書きましたが、今日は改めて、Hillary Clinton(ヒラリー・クリントン)とBarack Obama(バラク・オバマ)を、ブランドに例えると、どんな風になるか書いてみます。

民主党内には、「コーヒー」を例にとって、以下のような2つのタイプの支持者がいると言われています。

  • Dunkin' Donuts Democrats(ダンキンドーナッツ型民主党支持者):ステレオタイプに表現すると、高卒のブルーカラーワーカー。一生懸命働いているが、「給料日から給料日の生活」といわれるように、生活費の支払いに追われるタイプ。この層が、不動産バブルの崩壊で打撃を受けたり、海外へのアウトソーシングのために工場を解雇されたり、健康保険が払えなかったりと、厳しい生活を強いられている。時間に追われているので、ドライブスルーでダンキンドーナッツとコーヒーを買って、そのままクルマで、カントリーサイドの雪道に戻るようなタイプ。
  • Starbucks Democrats(スターバックス型民主党支持者):ステレオタイプに表現すると、大卒のホワイトカラーでプロフェッショナル(専門職)な職業を持っている層。都会に住んでいる場合が多く、スターバックスにラップトップを持ち込んで、「ノンファットのヘイゼルナッツのラテ」を注文するようなタイプ。「6フィギュア」と呼ばれる10万ドル以上の高収入を得ている人たち。


こうした表現は、2000年の大統領選挙の民主党大統領候補として立候補したBill Bradleyの支持者を、「Sushi and Starbucks Democrats」と描写したくらいで、決して新しい区分ではありません。ただし、今回のクリントンとオバマの選挙戦では、その支持基盤の違いがかなり明解となり、オバマとスターバックス、クリントンとダンキンドーナッツというイメージが固定しました。また、クリントンキャンペーンが実際にダンキンドーナッツにかなりの金額を使っていることが、NY Timesのレポート*によってわかり、クリントンとダンキンドーナッツの関係は強くイメージされるようになっています。

*クリントン陣営のドーナッツ支出額:1月のニューハンプシャー、フロリダ、ヴァージニアの3州のキャンペーンで、ダンキンドーナッツに1884.83ドル使い、サウスカロライナでは、Krispy Kremeに、504.02ドル使っています。1月末の時点で、ダンキンドーナッツに使った金額は、5950.53ドルにのぼっています。

もちろん、こうしたステレオタイプな分け方は、マスメディアが「したり顔で行う差別化」で、実際の支持者たちをこうした単純な分け方で区分けすることは出来ません。ただ、この2つのブランドがシンボライズするものは、良くも悪くも両候補者のブランドイメージを現しています。

  • 「ダンキンドーナッツ」:「庶民性=近づきやすい、気軽な食べ物、肥満につながり健康的ではない、親の世代の古臭いイメージ、グルメの食べ物ではない」
  • 「スターバックス」:「Wi-Fiアクセスがもたらすテクノロジーに強いイメージ、先進性、グルメ、都会的、スノッブ=お高くとまっている」


両候補者は、おのおのこうしたブランドイメージを引きずりながらも、ホワイトカラー、ブルーカラーの両方の支持者にリーチアウトするために、様々なパフォーマンスを繰り広げました。特に、クリントンはアイオワ敗退後は、女性支持者とのミーティングで涙を見せて、「冷たい」といわれていたイメージを払拭し、パブでビールやウィスキーのショットを、男性のブルーカラーの支持者と飲んで庶民性を強調し、オバマがアピールしにくいブルーカラー層に深く食い込んで行きました。オバマも、パフォーマンスでは、ブルーカラー層へのアピールのために、ボーリング(ひどいスコアで評判が悪かった)やプール(ビリヤード:これはかなり上手でした)を行ないましたが、ブルーカラー層にはなかなかリーチアウトできませんでした。ただし、バスケットボールにおいて、高校時代プレイヤーであった実績をシュートで見事に表現して、若い世代の支持をより多く勝ち得ています(ホワイトハウスにバスケットボールのコートが欲しいと発言しています)。

オバマが、最終的に予備選を勝ち抜けた大きな理由は、ブランドとしての「新しさ」にあります。クリントンブランドが、すでにエスタブリッシュされた既成のメガブランドだとすると、オバマブランドは、「従来の政治シーンにみられなかった、ユニークで革新的なブランド」として登場しています。オバマブランドを最初に発見したのは、大学生を中心とするGeneration Y(ジェネレーションY、あるいはミレニアルズ=世紀末世代と呼ばれ、区分は諸説ありますが一般に1977年から1999年までに生まれた8~30歳まで)です。2004年のオバマの有名な民主党のスピーチに感銘を受けた大学生は、米国第2位のソーシャルネットワーク(SNS)Facebookで、彼を大統領にするために署名ページを立ち上げ、オンラインを駆使して、グラスルーツのネットワークを全米に広げていきました。Evangelist(伝道者)化した若い世代は、両親や祖父母という上の世代を説得しながら、オバマブランド普及の大きな原動力となり、莫大な数の「CGM (Consumer Generated Media:消費者創出メディア・コンテンツ)」や「UGC (User Generated Content:ユーザ創出コンテンツ)」を生み出していきました。

オバマブランドは、8年間続いたブッシュ政権のアンチテーゼの役割を担い、「Agent of Change (変革の代行者)」としてデビューしています。「Youの時代(YouTube=ヴィデオは大きな影響力を持っています)」と呼ばれて、「消費者がお互いにマーケティングし合う」現代において、オバマは、最初に出現した「CGB (Consumer Generated Brand:消費者創出ブランド)」、あるいは「UGB (User Generated Brand:ユーザ創出ブランド)」と呼べるかもしれません**。

注)**「CGB (Consumer Generated Brand:消費者創出ブランド)」および「UGB (User Generated Brand:ユーザ創出ブランド)」は、私がここで仮に使用している言葉で、米国で一般に使用されているわけではありません。


Comments are closed.

    大柴ひさみ

    日米両国でビジネス・マーケティング活動を、マーケターとして、消費­者として実践してきた大柴ひさみが語る「リアルな米国ビジネス&マーケティングのInsight」

    Archives

    May 2020
    April 2020
    March 2020
    January 2020
    November 2019
    August 2019
    November 2016
    October 2016
    May 2016
    April 2016
    January 2016
    December 2015
    August 2015
    July 2015
    June 2015
    May 2015
    December 2014
    November 2014
    January 2013
    November 2012
    August 2012
    May 2012
    December 2011
    November 2011
    October 2011
    August 2011
    May 2011
    April 2011
    March 2011
    January 2011
    November 2010
    October 2010
    September 2010
    August 2010
    July 2010
    June 2010
    May 2010
    April 2010
    March 2010
    February 2010
    January 2010
    December 2009
    November 2009
    October 2009
    September 2009
    August 2009
    July 2009
    June 2009
    May 2009
    April 2009
    March 2009
    February 2009
    January 2009
    December 2008
    November 2008
    October 2008
    September 2008
    August 2008
    July 2008
    June 2008
    May 2008
    April 2008
    March 2008
    February 2008
    January 2008
    December 2007
    November 2007
    October 2007
    September 2007
    August 2007
    July 2007
    June 2007
    May 2007
    April 2007
    March 2007
    February 2007
    January 2007
    December 2006
    November 2006
    October 2006
    September 2006
    August 2006
    July 2006
    June 2006
    May 2006
    April 2006
    March 2006
    February 2006
    January 2006
    December 2005
    November 2005
    October 2005
    September 2005
    August 2005
    July 2005
    June 2005
    May 2005
    April 2005

    Categories

    All
    Book
    Business
    Culture
    Current Affairs
    Game
    Green : 環境・テクノロジー
    Healthy Life
    Influencer
    JaM Media
    Marketing
    Movie
    Music
    Obama Watch
    Online
    Politics
    Religion
    SNS
    Sports
    Technology
    Travel
    TV
    Twitter
    WOM (Word Of Mouth)

Proudly powered by Weebly