これはガソリン高騰という環境を考えれば、当然と思われるかもしれませんが、アメリカ人にとってピックアップトラックへの想いは、一種独特なものがあります。かつてのミドルクラスのアメリカ人は、自分の家の所有とピックアップトラックはワンセットとも言うべきもので、「Do It Your Self」という文化の中で、多くのツールや修理のための材料をトラックで自宅に運んでいました。
実は我が家にも、夫が1987年に購入した21年も経つフォードのピックアップトラック「Ranger」があります。3年前に今の家(80年以上経った古い家)を購入する前は、ほとんど使っていなかったのですが、購入後は、しょっちゅう、Home DepotやPaganoといった材料や道具販売の店に通って、木材、ペンキ、チェーンソー、梯子、芝刈り機などをトラックで運びました。私は「トラックは、もうドネーションしたら?」と、以前夫に話したこともあり、夫は得意そうに、「だから言っただろう、Home Ownerにとって、トラックは絶対に持っていなければならないものなんだから」と言っています。夫のように大自然の中で育ったアメリカ人にとって、この「Big Blue(我が家ではクルマにニックネームをつけています)」は、利便性もそうですが、もっと感情的にエンゲージしているようです。
今日のWard's Auto Groupの発表によると、5月の販売台数のランキングは、
- ホンダシビック
- トヨタカローラ
- トヨタカムリ
- ホンダアコード
- フォードのピックアップトラック「Fシリーズ」
ということで、燃費の良いクルマが上位を占めています。シビックは、1ガロンあたりの走行距離は29 mpgで、F-150は15 mpgです。年間1万5000マイル走ると仮定して、1ガロン4.08ドルで計算すると、シビックは2111ドル、F-150は4082ドルのガソリン代がかかります(U.S. Department of Energyによる)。この差はかなり大きいものがあります。1年前(2007年5月)と比べると、Fシリーズのセールスは、30%落ち込んでおり、それと反対にシビックは33%、アコードは37%アップしており、消費者のクルマへの志向が、大きく変化していることを示唆しています。
クライスラーは、すでにクルマの購入者に、今後3年間1ガロン2.99ドルのガソリン保証のインセンティブをつけてマーケティングしていますし、GMは6月3日、北米の4つのトラック製造工場を閉めて(1万人の社員がいます)、より燃費の良いクルマ製造を始めると発表しています。また、ガソリン消費の怪物君といった「Hummer(ハマー)」ブランドの売却を考えていると発言しており、米国自動車メーカーは生き残りをかけて、必死です。今年は、フォードのFシリーズの60周年に当たる年ですが、時代は大きく旋回しています。