私は数字が気になってもう一度各州の結果を見直したが、やはりClintonの敗因はミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンといった五大湖を取り巻く3つのBlue States(民主党優位の州)を失ったことに起因する(オハイオは今回クリントンが完敗したので除いた)。
ここで、私はあえて人種的な対立を煽るような言葉遣い「白人のブルーカラー」といった表現は使いたくない。そういったほうが物事が簡単に片付きそうだが、実際にはそれによって人種問題が優先して、根本的な問題であるアメリカの「富の偏在化=ミドルクラスの減少」といった部分が見えにくくなると思うからである。
- ミシガン(16人)- Trump: 47.6%, Clinton: 47.3%, Johnson: 3.6%
- ペンシルベニア(20人- Trump: 48.8%, Clinton: 47.6%, Johnson: 2.4%
- ウィスコンシン(10人)- Trump: 47.9%, Clinton: 46.9%, Johnson: 3.6%
もしClintonがJohnsonの投票を自分のものにできたら「(16+20+10=)46人+228人=274人」でTrumpに勝てた。Rust Belt(錆びついた工業地帯)に住む彼らは、米国の繁栄を享受できず、取り残された思いが強く、彼らを投票所に引き釣り出したのがTrumpだった。
じゃあ、彼がこうした人々の願いをかなえられるか?といえば、非常に難しいとしかいえない。彼の公約はまず果たされないし、果たされたしても、Rust Beltに住む人たちに恩恵は回らない。
経済発展は「創造的破壊=新たな効率的な方法が生み出されれば、それと同時に古い非効率的な方法は駆逐されていく」という新陳代謝が必要で、Rust Beltに住む人たちを今すぐ豊かにする方法はない。
今回の選挙結果は猛烈な勢いで進行する「富の偏在化」への非難であり、かつてほんの少し既得権をもっていた人々の最後の反抗という気がする。歴史は後に戻せないから。