映画のブログなので、あまりストーリーを話すとこれから見る人が興ざめしちゃうので、言いませんが、良くも悪くも映画のザッカーバーグはコンピューティングのギークとして、好きな女の子とのデートでもまともに『人間の言葉』で語り合うことができず、人とのソーシャルが全然できない人間として描かれています。ほとんど表情を見せない顔の中で「真っ赤なルージュ」を塗ったような唇から出てくる言葉は、まるでマシーンがしゃべるような速さで相手の感情を無視して、独特の論理と整合性でしゃべり続けます。その速さは私のようなネイティブスピーカーではない人間には、おっつかない速さで、字幕が必要なくらいです。
ただし、映画はこの世界最年少のお金持ちが、どのようにしてこのビジネスアイディアを思いつき、それをビジネス化するためにハーバード内の友人たちとどのようにやりあい、その後ドットコムブーム時を思い出させるシリコンバレーの世界に落ちてくる過程を見事に描ききっています。私のような西海岸に住んでいる人間がうっかり忘れてしまう東海岸のハーバードのエスタブリッシュされたクラスの独特な文化、エンジェルインベスターやVCがお金の意味も分からない子供たちを手玉に取る手練手管、私もドットコムバブル期にそうした人たちと大いに関わりあったので十分リアリティを感じました。また、終始中心テーマとなる『裏切り』は人間関係でモットも憎まれる行動ですが、これを踏み台にしてfacebookが誕生していくのが、何ともアイロニカルで、私は思わずにやりと笑ってしまいました。
今では当たり前になった「ソーシャル=人と人との関係づくり」を、平気でパブリッシュしちゃう、ソーシャルネットワーキングは、言ってみれば、大学のドームで生まれた21世紀のフランケンシュタインみたいなものです。それが意図するしないに限らず、すでに人々のコミュニケーションのインフラとして機能している以上、その社会的責任は大学生の遊びではすみません。まあ、そんな現実のfacebookのことは横に置いといて、映画の中の役者たちはいい演技をしていて、カメラワークや音声も含めて、面白い映画に仕上がっています。
シリコンバレーのfacebookの本社では映画館を借り切って、社員200名と一緒に映画を見たようですが、本物のザッカーバーグも決して映画の主人公を嫌わないのではと思います。少なくとも、映画を見終わった私は、彼をちょっと好きになりました。この映画は賞を取ることを予感される、面白い映画、それが今日の結論です。