ただし、ひとつだけアタマにきたことが、相手が謝らないという点です。一言「I'm sorry」という言葉を聞けば、「OK. I'm fine. Don't worry about it」と言って素直に立ち去れるのですが、相手は車は大丈夫か?と聞いただけで、「ごめんなさい」とは言いませんでした。サンフランシスコでの打ち合わせ の帰りで、ちょうど駐車場の出口をブロックするカタチで、相手と話す羽目になっていたので、それ以上、周囲に迷惑をかけることもできず、ムカっとした気持 ちのまま、その場を立ち去りました。
日本もそうですが、車の事故で最初に自分の非を認めることは、後で保険の支払いにおいて不利益になるので、誰も認めません。まず最初は、相手が悪いことを 立証するために、先にわめき始めるのが、常です。今回の場合は、さすがに完全に彼が悪いため、後ろめたい表情で黙って、私の顔を覗き込んでいましたが、結 局「I'm sorry」の言葉は、最後まで彼の口から出てきませんでした。
一言、謝れば、どれだけ訴訟が少なくなるか?また、どれだけ社会全体の風通しが良くなるか?訴訟社会ア メリカの不具合は、自分の非を、先に認めない、メンタリティが作り出しています。私の場合も、ここのところ自宅のインターネットの不具合で、しょっちゅ う、ケーブル会社Comcastのテックサポートと電話で話していますが、どんなに私がComcastの非を証明しても、絶対に自分の非を認めて誤る言葉 は出てきません。
顧客の怒りを静める呪文のように、「We understand(理解しています)」という言葉を、彼らはよく唱えますが、「I'm sorry」とは言いません。弁護士によってチェックされている、カスタマーサービスのマニュアルには、絶対に発言してはいけない言葉として、「I'm sorry」は載っているはずです。しかし、この一言で、一気にカスタマーの怒りはとけて、クレームの時間も短縮し、会社への評価も高くなると思います。
製品や価格に質の差がなくなっている現在で、ビジネスとして成功するための不可欠な要素が、このカスタマとのコンタクトポイントにおける、感情的なコネク ションです。私もそうですが、この最前線のコンタクトパーソンの一言で、ブランドロイヤリティが生まれます。これをBuild upできない企業は、どんなに製品や価格で勝負しようとしても、カスタマの信頼やロイヤリティを確保することはできません。インタラクティブな相互の 「Sympathy(共感)」が、企業とカスタマをBonding(結びつける)するポイントです。企業の最前線でカスタマと接する人たちこそが、ブラン ドや製品を代表しており、CEOや社長が企業の代表者ではありません。
そんなことを書いていたら、AOLのCo-FounderのSteve Caseが、AOLとTime Warnerとの合併において、「自分が必要とされる、強いリーダーシップを発揮できなかったことを認める」発言のニュースが飛び込んできました。これは米国の大企業のCEOたちの間では、非常に珍しい発言です。
2000年に1,120億ドル(=12兆3,200億円)という巨大な金額で合併吸収したAOLとTime Warnerは、その合併の結果を出せないことで、経営者の入れ替えをいろいろやってシャッフルしていますが、いまだに成功にいたっていません。ライバル のGoogleやMSNなどは、しきりとAOL買収に動いている最中ですが、ここにきて、Case自身が自からの非を認めて、Time Warnerは以下の4つの企業に分割されるべきだと発言しています。
・Time Warner Cable
・Time Warner Entertainment (HBO, Warner Brothers)
・Time Inc. (magazine publishing)
・AOL
彼は2億5,000万ドル(=275億円)分のTime Warnerのストックを持っており、株主として、どうやってTime Warner全体の企業価値を上げるかにフォーカスした発言です。なるほど、最終的に自分にとってAdvantageになるならば、自分の非を認めること もできる、まあ、これはこのような巨額の金銭的なBenefitがある以上、当然のことなのかもしれません。
しかし、HPとCompaqの合併の時もそう思いましたが、Golden Parachute(ゴー ルデン・パラシュート:会社の離れる場合のさまざまな金銭的な保証)を持つ大企業のCEOたちは、企業合併の不成功の責任を取らないで、簡単に企業を離れ ることができます。この手の話は、私のようなSmall Businessの経営者にとっては、想像外の話です。「ゴールデン」とは言いませんが、買収を打診され、パラシュートの話ができるように、JaM Japan Marketing LLCを、魅力的な企業にせねばと、思います(がんばるぞ!)。