その中で、思わず目についたのが 「ソニー神話」の落日、という小見出しです。気になって一気に、ソニーの新経営戦略に関する関連記事をずーと読み込んで、思わず「ホー」と深いため息をついてしまいました。
あの「It's a SONY」は、とうとう日本でも「It was a SONY」になってしまったのか?
25年前、私は広告代理店の新入社員で、あの「It's a SONY」というコピーを見た時、心底これは凄いと仰天し、「なんてすごいTag Lineだ! こんなことを世界に向かって言える会社は、100年に一社ぐらいしか現れない!」と、興奮してしゃべった記憶があります。
日経の記事によると「企業ブランド知覚指数(PQ)」調査で、ソニーは2年連続総合1位を確保していましたが、今年はいきなり4位に落ちて、代わりにマイクロソフト、トヨタ、キャノンが1、2、3位を占めたということです。
こうしたソニー関連の記事やコラムを読んでいて、つくづく感じたのは、ソニーは大変なBrand Asset(ブランド資産)を持っているという実感です。その証拠として、書き手の語調に「感情的な期待や失望感」が大きく反映されており、日本で「ブラ ンド神話」をもつ数少ないブランドとして、ソニーの「復活」は可能だと思いました。
最近のアメリカのマーケティング業界では、「Brandingから、Bonding(絆を結ぶ)へ」と言われるぐらい、消費者とブランドは感情的にきつく 結びつかないと、ブランドとしてのAsset(資産)を築くことが出来ないと言われています。それぐらいに各企業間の優位差は薄れており、日々賢くなる消 費者は絶対的な選択者として、ブランド(企業)を選ぶ優先権を持っています。そんな彼らのブランドロイヤリティを構築するには、「感情をベースにした絆 (Bonding)」が不可欠です。
ソニーには、この「Bondingの再生」への道は残っています。
以下は、私の尊敬するP. F. Drucker教授の著書「Next Society」の第1部第7章に出てくる文章の引用です(上田惇生訳、ダイヤモンド社発行)。このDrucker教授の言う「チェンジ・エージェントへの変身」を、ソニーができれば、あの「It's a SONY」の復活は、可能です。
チェンジ・エージェントたれ
組織が生き残りかつ成功するためには、自らがチェンジ・エージェント、すなわち変革機関とならなければならない。変化をマネジメントする最善の方法は、自 ら変化をつくりだすことである。経験の教えるところによれば、既存の組織にイノベーションを移植することは出来ない。組織自らが、全体としてチェンジ・ エージェントへと変身しなければならない。
そのためには、
第1に、成功していないものはすべて組織的に廃棄しなければならない。
第2に、あらゆる製品、サービス、プロセスを組織的かつ継続的に改善していかなければならい。すなわち日本でいうカイゼンを行わなければならない。
第3に、あらゆる成功、特に予期せぬ成功、計画外の成功を追求していかなければならない。
第4に、体系的にイノベーションを行っていかなければならない。
チェンジ・エージェントたるための要点は、組織全体の思考態度を変えることである。全員が、変化を脅威ではなくチャンスとして捉えるようになることである。
この第1も第2も第3も第4も、非常に重要な至言です。かつてInnovator(革新者)として燦然と輝いていたソニーは、もう一度自分の Identityに戻り、「全員が、変化を脅威ではなくチャンスとして捉えるようになる」思考態度で、モノ作りのOut Lawになる、それができればソニーは復活します。
「がんばれSONY!」
PS: しかし、Drucker教授の本は、本当に奥が深く、何回読んでも、はっと思うところがあります。