そんな気分の私が、先週日本でいつもように歴史小説を探しているときに手に取ったのが、白石一郎さんの「海のサムライたち」 という文庫本でした。彼が描く、かつて日本に存在していた「海洋民」としての日本人たちの思考および行動の独創性が、いつも太平洋の上空を往復する私の気 持ちと重なり、思わず「熱く」なってしまいました。白石さんは、本の終わりに「日本にとって鎖国精度がもたらしたものといえば、極論すれば、徳川幕府が 270年間も崩壊を免れたということに過ぎないのではないか。四面環海という立地条件に恵まれながら、日本は海を防壁としか考えない国家となった。日本人 は、揃って海に背中を向け、狭い国内だけをみつめて過ごす習性を身につけた。そのためものの考え方も陸地中心に限定され、遙かに広い海を忘れてしまっ た。」と書いています。
そうです、日本人は海洋民族としてのDNAを持ち、鎖国前は何10万の人たちが、死を賭して東シナ海や南洋の海に飛び出し、「倭寇」、「傭兵」(サムライ は当時世界最強の兵士でした)として周囲を震え上がらせ、はては「国王」として(山田長政はシャムのリゴールの国王になっています)アジアに君臨するまで の活躍をしています。
白石さんの「海狼民」、「海王民」 のシリーズを、全日空の飛行機の中で一睡もせずに読み終わり、気分は完全にOcean Islanderになっています。私自身は東京生まれの東京育ちですが、母は伊豆大島出身で、私はオムツをしている時から、母に海に「放られて(大島 弁)」、泳ぎを覚えました。白石さんが「日本人は、遙かに広い海を忘れてしまった。」と書かれていますが、私は幼い時から海を忘れたことはありません。こ の「熱い」想いをあと2日間キープして、セールボートに乗り込みます。母なるオーシャンの話は、このアドベンチャーの後に、たっぷり話します。